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第4章 花ホタルの花言葉
(4-7)
しおりを挟むショッピングモールに来たのって、いつのことだろう。花屋で働く前は、よく来ていたのに。休みの日も、花屋『たんぽぽ』に遊びに行っていたからな。
あそこは、居心地がいい。良過ぎるくらいだ。
たまには、ひとりで楽しむのもありだろう。
そうだ、映画でも観ようか。レストラン街の食べ放題の店で爆食いしようか。それとも、ちょっとお高めの服でも買ってしまおうか。
いや、節約しなきゃダメだ。
給料はまだだった。給料日、勘違いするなんて。
給料日まであと一週間。それまでは辛抱しなきゃ。いくら貰えるだろうか。
時給一〇〇〇円。休みは、水曜日だけ。えっと、一日何時間働いたっけ。
結構貰えるんじゃない。そうなったら、お小遣いがたくさん増える。あれ、待って。税金取られたら、そんなに貰えないのかも。
そう考えたら、しっかり計画立てて使わなきゃ。どうせオシャレしても、デートする相手もいないし意味はない。
意味はないか。
もうダメ。どうしても、あの人のことを思い出してしまう。胸が苦しい。
『小宮山さん』
ああ、もう。忘れるって決めたでしょ。
やけ食いしてやるって決めたでしょ。
違う、違う。やけ食いはダメ。わかっているでしょ。そんなにお金使えないの。今はね。フードコートで食べよう。
なんだか、情けなくなってきた。涙が出そう。
それでも、空腹には勝てなかった。
梨花は、結局一番安いかけうどんを食べた。もうこういうときくらい思いっきり食べさせてよと、思いつつ財布を睨みつけて溜め息を漏らす。
文句を言う相手もいないなんて。
溜め息を漏らして、項垂れる。あと一週間ぐらいは暮らせるか。
こんなんだったら、節子のところでご馳走になればよかったのかも。小宮山のことを相談してもよかったかも。けど、なんだか言いづらい。
小百合がいたらどうだったろう。そうだ、お墓参りにでも行こうか。そこで小宮山とのこと話せば、少しはスッキリするかもしれない。
そんな話をしに小百合の墓へ行ったら、文句言われるかもしれない。
『なんだよ、墓参りにかこつけて不満のはけ口かい。失恋話なんか聞きたくないよ。楽しい話がないなら、サッサと帰りな』
そんな言葉が浮かんだ。
懐かしい毒舌の声を聞いた気分になって、少しだけ笑みが浮かんだ。けど、すぐに現実が舞い戻る。
梨花は再び溜め息を漏らして、食べ終わった器を返却台へと持っていく。
さてと、どうしよう。
やっぱり、帰って読書でもしようか。そんな気分じゃないか。
ペットショップで癒しをもらおう。それがいい。そう思ったのだが、ペットショップの前まで来て回れ右をして引き返す。
嘘でしょ。もうなんで。ああ、嫌だ。
ペットショップの店員としてそこにいたのは、小宮山の車の助手席に乗っていた女性だった。最悪だ。見間違いじゃない。もうここにはいたくない。帰ろう。
それともどんな人か観察していこうか。きっと向こうは自分のことを知らないはず。もう何を考えているのだろう。馬鹿なこと考えないの。そんなことしたって、何の得にもならない。ショックが増すだけだ。
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