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25号室 極楽おんぼろ屋敷(2)
しおりを挟む漸く落ち着いて墓参りが出来る。そう思いつつも、頭の中におっさんの影が付き纏う。またおっさんが現れるのではと振り返り、どこにも姿がないことを確認すると胸を撫で下ろす。
甲斐家の墓が視界に入ったとき、花が供えられていることに気がついた。誰が花を供えたのだろうか。親戚はいないはずなのに。まあいいか。
樹季は、供えられている花と一緒に持ってきた花を供えて線香に火をつける。
もう一度、姿を現せてくれたらいいのにと思いながら手を合わせた。
「父さん、母さん。俺、元気だからな」
なんとなく傍で話を聞いてくれている気がした。いるなら、姿を見せてくれてもいいのに。そう思うと目頭が熱くなる。
ふと視線を感じて目を擦り、左側へと顔を向けた。まただ、あのおっさんはストーカーか。用事があるなら走り去らなきゃいいのに。
気にしない、気にしない。いや、そうじゃない。聞きたいことがあった。樹季は立ち上がり、おっさんの方に向き直る。
「ちょっと、おっさん。さっきの話だけど」
大声を張り上げた。そのとき、おっさんが忽然と消え失せた。足元にいた黒猫コゲとともに。
嘘だろう。やっぱり、あのおっさんは只者じゃない。
樹季は、おっさんが消えた場所へと足早に向かう。すると、消えたはずのおっさんがそこにいた。なんてことはない段差があって向こう側に倒れ込んだだけだった。なにをしているのやら。おっちょこちょいなのかも。
「おい、手を貸してくれ。腰を打ってしまった。痛くて立ち上がれぬ。ほれ、早く」
はい、はい。
樹季は呆れ顔でおっさんに手を貸して立ち上がらせた。その脇で、黒猫コゲがクックックとの声をあげた。笑っているのか。いやいや、そう聞こえるだけだ。猫が笑うはずがない。
「で、おっさん。さっき解決してやろうかって言っていたよな」
「そうだったかな」
惚けるつもりか。
「言った。はっきり言ったぞ」
「まあ、慌てるでない。わしなら真実を教えられる。がしかし、いろいろと面倒があるのでな。話す前に、お主は異世界を信じるか」
「異世界?」
何を唐突にそんな話を持ち出しやがって。
「そうだ。まあ、話しはまたの機会にしようではないか。話そうと思ったが、今日は腰が痛くてたまらない。医者にでも行かなきゃならん。お主が急に大声出すからだぞ。びっくりして落ちてしまったではないか。あっ、そうそう、落ちたといえばお主の両親の事故だが、あれは単なる事故ではないとだけ話しておこう。それに両親はお主とともにいるぞ」
そう話すと黒猫コゲとともにゆっくりした足取りで歩み去っていった。
単なる事故ではないってどういうことだ。話すなら全部話していけばいいのに。それはそうと父と母が傍にいるのか。ならなぜ見えないのだろう。幽霊を見ることができるはずなのに。
***
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