本の御魂が舞い降りる

景綱

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第一話 謎の鍵が示す先

【十七】幼い頃の記憶の欠片

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 あれ、ここはどこだろう。源じぃの家、だよな。
 あそにいるのは自分か。幼稚園児だけど似ている。隣にいるのは源じぃか。すごく若い。いったいこれはなんだ。自分は何を見ている。

 もしや夢か。そうだ、きっと。タイムスリップとかありえないし。
 よし、夢を楽しもう。
 いったい何を話しているのだろうか。耳を傾けてみたのだが、いつの間にか幼稚園児の姿になって源じぃと向かい合っていた。

 流石、夢だ。幼稚園児とは面白い。なりきってやる。
 そう思った瞬間、夢の中に意識が溶け込んでいった。

「遼哉は、本が好きか」
「うん」
「そうか、そうか。なら、祖父ちゃんが遼哉のために物語を書いてあげよう」
「本当に」

 しわくちゃになって笑う源じぃに遼哉は抱きついた。

「おいおい、急になんだ。びっくりするじゃないか」
「ごめん」
「本当におまえは可愛いな」

 頭を撫でてくる源じぃになんだか照れてしまう。

「あっ、そうだ。源じぃちゃん、こんなのみつけたんだけど、これなんだろう」

 源じぃは目を見開き黙ってしまった。

「源じぃちゃん、どうしたの?」
「んっ、いや、なんでもないよ。それは、その鍵だな」
「鍵? どこの」
「そう、鍵だ。えっとだな。封印していたんだがな。行くこともないと思っていたが、これも何かの啓示けいじなのかもしれないな」
「えっ、なに? どういうこと? ケイジって誰のこと?」

 小首を傾げて考え込んだ。

「あはは、名前じゃないよ。よし、今日は特別に秘密の部屋に連れて行ってあげよう」
「秘密の部屋? そんなところがあるの」
「そうだ。魔法の鍵で開けば、そこは夢の国だぞ」
「すごい。源じぃちゃん、早く行こうよ」
「あはは、そんなに急かすんじゃない。今、連れて行ってやるからな」

 秘密の部屋の夢の国か。ワクワクする。どんなところだろう。
 源じぃのあとを弾むようにして追いかける。

「夢の国、夢の国。魔法の鍵で夢の国」
「おっ、面白い歌だな」
「うん、今作ったの」
「そうか。ほら、その鍵をお祖父ちゃんに渡してくれるかな」
「うん。ここから夢の国に行けるの」

 源じぃが頷き、なにやら押入れから荷物を引っ張り出していく。こんなところに入り口があるのか。後ろから覗き込んでいると、人がひとり通れるくらいの小さな扉が顔を出す。

「この先に夢の国に繋がる扉があるからな」

 この先って。階段だ。なんだか暗い。本当に夢の国があるのかな。ちょっと寒いし、何かが出てきそう。

「源じぃちゃん。怖いよ。行くのやめる」
「んっ、そうか。楽しいことが待っているんだぞ。一緒に行くんだから、怖いことなんてないさ。大丈夫。おいで」

 本当に大丈夫かな。お化けとかいないかな。
 源じぃは微笑んで大きな手を差し出していた。

「ほら、おいで」

 源じぃの手を見て、顔へと目を向ける。源じぃは嘘なんて言わない。大丈夫。怖いことなんてない。お化けも出てこない。
 遼哉は差し出された手を握り、源じぃに引っ張られながら薄暗い階段を下りていく。
 うわっ。
 突然、源じぃが立ち止まってぶつかってしまった。

「ごめん、ごめん。大丈夫か」
「う、うん」

 源じぃは微笑み、扉に向き直り鍵穴に鍵を差し込んでいく。
 カチンとの音がしたかと思ったら、ギギギィーきしみながら扉が開かれていく。夢の国が待っているはずだと心を躍らせた。それなのに、開いた扉の先は真っ暗だった。なんだかカビ臭い。
 ここが夢の国。なんか思っていたのと違う。

「源じぃちゃん、本当にここでいいの。真っ暗だよ。夢の国じゃなかったの」
「あはは、大丈夫だよ。ついておいで」

 大丈夫なの。この先にあるの。夢の国。
 ワクワクな気持ちと残念な気持ちがごちゃ混ぜになりながらついていくと、パッと明かりがついた。

 あっ、小人だ。小人がいる。
 赤、黄、青の変な服を着た小人が笑っている。

「どうだ、ここが夢の国だ」
「うん、源じぃちゃん、すごい、すごい」

 小人の後ろにはたくさんの本も並んでいた。

「本もたくさんある。僕、本が大、大、大好き」

 その言葉に反応したのか小人たちが踊りはじめた。
 すごい、すごい。あっ、猫も踊っている。本当にすごい。

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