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第一話 謎の鍵が示す先
【二十八】買い出し帰り
しおりを挟む遼哉は両手に下げたスーパーの袋を見遣り、ちょっと買い過ぎたかなと後悔した。
ついつい衝動買いしてしまう。美味そうなものばかりあるからいけなんだ。
袋から少し顔を出した四個入りの肉まんに目を留めてニヤついた。帰ったら、すぐに蒸して食べよう。
アツアツ、肉汁たっぷりの肉まんを頬張っている自分を思い描き、頬が緩む。よだれが出そうになってすぐに口を拭った。
他にもカップラーメンに惣菜売り場で目にしたたこ焼き、チキンカツ、コロッケ、ポテトサラダ。まだまだ、いろいろ買ってきてしまった。三袋分もある。
一人で食べるには多いだろうか。明日の朝に取っておいてもいいかもしれない。晩飯に全部食べられるだろうけど節約していかないと、きっとあとになって金欠病になる。
両親の出版社に勤めているとは言え、給料が安い。
贅沢出来る金なんてない。貯金もほぼない。家賃がかからないことだけはラッキーか。
遼哉は買ってきた袋を眺めて嘆息を漏らす。
やっぱり買い過ぎたか。いやいや、そんなことはない。
一応、米は買った。三袋のうちの一袋は五キロの米だ。袋の持ち手が喰い込んで正直痛い。重さもあるが寒いから余計にそう感じるのだろう。
袋を一旦下ろして立ち止まる。
二キロとかにしたほうがよかっただろうか。そんなことはない。米は大事だ。少ないよりはいいだろう。
朝はパンという人もいるだろうけど、自分はやっぱりご飯じゃないと食べた気がしない。味噌汁もなきゃいけない。インスタントだけど。問題はおかずか。
やっぱり、何か明日にまわそう。
コロッケがいいだろうか。
せっかく揚げたてなのに勿体ないか。チキンカツを少しだけ残して明日にまわそうか。また朝からカツか。豚肉と鶏肉の違いがあるじゃないか。大丈夫だ。
本当にそうか。どうしたものか。
あっそうだ、卵の十個パックがあるか。朝は目玉焼きがいいだろう。それにソーセージも買ったじゃないか。ちらほら見えるお菓子類が余計だった気もする。
気にすることはない。次から節約すればいい。
そういえば、野菜がない。
野菜も食べなきゃダメだろう。もやしがあるか。それだけじゃダメだろう。バラ肉もあったほうがよかったかも。キャベツとか白菜とかキノコ類も買っとけばなにかには使えるのに。
小海がいたら、『もうちょっと考えて買わなきゃダメでしょ』とでも言われるだろうか。絶対に言うなとひとり頷く。
本当に考えがなさ過ぎる。無駄遣いだこれじゃ。買い過ぎたせいで、袋代も余計にかかっているし。
お菓子類を返して、野菜を買ってくるか。
それはやめとくか。絶対にお菓子は食べたくなる。
野菜か。いや、今はいい。
なんだか野菜炒めが食べたくなってきた。まったく、自分はどうしようもないな。
また小海が頭に浮かび、『偏った食事はいけないわよ』なんて言葉が飛んできた。
妄想が酷い。
まあいいじゃないか。
突然の凍てつく風が首筋に入り込んできて、身体を震わす。おかげで妄想から抜け出せた。
『ありがとう、風』
そうじゃないだろう。
ううっ、このままじゃ風邪引きそうだ。きっとグレンも待っているだろうし、早く帰らなきゃ。右と左の袋を持ち替えて少し足を速めた。
痛い。持ち替えたところで変わりはないか。
んっ、今なにか音が。足音だったろうか。
おかしい。振り返っても誰もいない。気のせいか。
「腹減った」って声もしたと思ったのに。空耳だろうか。どこかの家の子供が騒いでいただけだろうか。
どうやら、だいぶ疲れが溜まっているようだ。早く帰ろう。
んっ、なんだ。
今、黄色いものが横切らなかったか。しかも、小さな人だったような。ああ、ダメだ幻覚まで見えてきた。何かが風に飛ばされただけだ。きっと、そうだ。
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