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第二話 悲しき本の声
【十八】怒りの炎
しおりを挟む「火乃花、待ちなさい」
流瀧の言葉も火乃花には届かない。どうしちゃったの。
ああもう、追いつけない。なんて速さなの。小海は全速力で追いかける。それなのに、距離が詰まるどころか離れていってしまう。
ダメだ。
火乃花はすでに体育館裏へと姿を消してしまった。
「急いでください。火乃花を止めなくてはいけません」
「わかっているわよ。けど、なんであんなに火乃花は足が速いのよ」
「それは怒りモードだからですね。だからこそ、危険なのです。火乃花は名前にもあるように『火』の属性を持ち合わせていますからね」
火の属性と聞き、空へと燃え上がる炎が頭に浮かぶ。
嫌な予感がしてきた。
朋美、美里。お願いだから、無事でいて。
あの曲がり角を曲がれば体育館裏に出る。小海は祈りながら駆けて行く。
見えた。朋美と美里がいる。
無事だ。だが二人の前に炎がメラメラと燃え上がっていた。火元は間違いなく火乃花だ。
小さな身体から炎が立ち昇っている。まるで炎の龍がそこにいるみたい。
あんな小さい身体なのに、あんな力があるなんて。
感心している場合じゃない。早く火乃花を落ち着かせなくては。
「やめて、お願い。熱い、熱いわよ。助けて」
美里が後退りしていた。
そこへ朋美が庇うようにして前に出た。どうして。いじめられているんじゃないの。
「鬼だ。鬼退治だ。鬼は殲滅しなくては」
「ダメ、火乃花。あなたは優しい子でしょ。よく見て、美里は鬼なんかじゃない。それに朋美もいるのよ」
小海の声は火乃花には届かない。炎の龍を纏った火乃花が朋美と美里へ近づいていく。
美里は身体を震わせながら、朋美の腕を引っ張っていた。
「ダメ、朋美。あんた死んじゃうよ」
いじめていたことは本心からじゃない。やっぱり何かわけがある。そう感じた。
早く火乃花を止めなくちゃ。
ああ、もう。熱くて近寄れない。どうしたらいいの。あっち側から回り込めば二人を助けられるかも。
「待ってください」
流瀧の凛とした声に小海は足を止めた。
振り返ると流瀧の身体が発光していた。
「僕が火乃花を鎮めます。大丈夫です」
何、何が起きているの。透明な膜みたいなものが見える。次の瞬間、流瀧は流れるような滑らかな動きで火乃花の背後へと近づき羽交い締めをした。
うわっ、白い煙が。
大丈夫なの。流瀧は熱くないの。
あれ、どういうこと。流瀧の周りに水の玉が漂っている。そうか、流瀧を包み込んでいるものは水だ。水の膜だ。水音も微かにしている。白い煙は水蒸気なのか。
水の玉に光が反射して七色に煌めきはじめた。小さな虹も流瀧の頭上に浮かんでいる。
えっ、あれは。
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