本の御魂が舞い降りる

景綱

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幕間二

本の御魂三人衆・ふたたび

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 第二話「悲しき本の声」も終わっちゃった。
 美里はうまくいっているようだし、めでたし、めでたしよね。私たちの活躍を楽しんでくれた。もちろん楽しんだはずよね。

 誰、火乃花はやり過ぎだって言った人。失礼しちゃう。
 まあいいわ。今回だけ勘弁してあげる。次そんなこと言ったら、真っ黒こげにしてあげるんだから。
 さとて、第二話が終わったってことはあのコーナーね。私の出番よ、何か話さなきゃ。

 むむむ。うーん。うーーーん。

「火乃花、何しているんだ。腹でも痛いのか」
「違うわよ。私に話せることが何かないかなって考えているんじゃない。変なこと言わないでよね。燃やすわよ」
「おお、怖い。そんなことよりもこのコーナーはおいらに任せておけよ」
「ダメ、樹実渡。今回は黙っていて。前回、私はなんにもしていないんだからね。今回は私の番よ」
「そうか、ならどうぞ」

 あっさり引き下がるなんて。嬉しいけど、まったく思いつかない。どうしよう。あっ、指先に炎が。樹実渡があっさり引き下がったのはこのせいか。

 メラメラ、ボワッ。

「その炎は早くひっこめてください」
「そうね」
「よろしい。それで火乃花。話すことならたくさんあるはずですよ。御伽草子の御魂でしょう。浦島太郎の続きの話があったって話は面白いと思いますよ」
「ああ、それね。流瀧、ありがとう」

 火乃花は深呼吸をして、浦島太郎の話を頭に浮かべた。
 あのね、浦島太郎の話はもちろん知っているわよね。

 亀を助けた浦島太郎が竜宮城で楽しんで、乙姫様から玉手箱を貰って帰って開けてはいけないという玉手箱を開けちゃうのよね。そして、お爺さんになっちゃって。

 簡単に言うとそんな話。簡単に話し過ぎたかな。
 みんなが知っているのはそこまでよね。知っているよなんて人もいるかもしれないけど、そういう人は黙っていてちょうだい。

 メラメラ、ボワッ。

「それはやめなさい」
「えへへ、ごめん」

 流瀧に怒られちゃった。
 話を戻すとね。浦島太郎の話に続きがあったのよ。

「おい、そのドヤ顔はなんだ」
「何よ、樹実渡は邪魔しないで」
「はい、はい。ちなみにおいらも続きは知っているぞ」
「あ、ダメよ。私が話すんだから」
「じゃ、どうぞ」

 もう、樹実渡ったら任せるっていったのに邪魔するんだから。
 えっと、続きの話よね。

 お爺さんになった浦島太郎は、鶴になっちゃうのよ。あれって急にお爺さんになったというか本当は、何百年も時が経過してしまったってことなのよね。

 お爺さんになっちゃって、知っている人もいないし何もかも嫌になっちゃったのよね。浦島太郎は。でも、なんで鶴って思うわよね。

 そう思った人、もうちょっと待ってね。
 鶴になった浦島太郎は蓬莱山ほうらいさんという想像上の山に辿り着き、乙姫様と再会出来るの。そこで末永く二人で暮らすんだから。

 なんてロマンチックなの。

「ああ、私も運命の人に出会いたい」
「おい、話を続けろ」
「もう、樹実渡はロマンの欠片もないんだから」
「なんだと、おいらだってあるぞ。ほら、マロン」
「はい、はい」

 あっ、話が逸れちゃった。
 えっと、そうそう乙姫様は亀の化身なのよ。

 つまり、鶴と亀。

 鶴と亀が縁起物になっているのは、この話が由来なのかもね。
 けど、なんで続きの話がなくなっちゃったのかな。
 謎と言えば、開けてはいけない玉手箱をなんであげたのか。

 なぜ、乙姫様が山にいるのとも思っちゃうけどね。海じゃなかったのって言いたいわよね。その変もよくわからないけど。ああ、もうわからないことだらけじゃない。

 そうそう、なぜ浦島太郎が鶴なのかよね。ごめん、よくわからない。
 アハハ。
 文句言わないでよね。燃やすわよ。ウソ、ウソ。冗談。

 誰かわかるように説明して。

「流瀧、知っている?」
「それは、僕もわからないです」
「おいらもわからない」

 胸のあたりがモヤモヤするけど、まあ、いいか。ああ、なんだか恋がしたくなってきた。乙姫様と浦島太郎みたいに愛し合いたいわ。

 流瀧と樹実渡とは、うーん。なんか違う。恋愛対象じゃない。じゃ遼哉。いや、ダメダメ。小海に恨まれちゃう。
 良い人いないかな。

「終わったか、火乃花」
「何よ、樹実渡、なんか文句でもあるの」
「ないよ。でさ、第三話ってあるのかな」
「えっ、どうかな。そんなの私にわかるわけないじゃない」
「流瀧はどう思う」
「わからないですよ。けど、頼んでみてはいかがですか」
「うん、そうしよう。おいらの特製焼うどん作ってやるって言えばきっと書いてくれるだろう」

 まったく、樹実渡は単純なんだから。けど、美味しそうね。
 ということで、第三話もお願いします。

「おい、火乃花。なにやっているんだ。気持ち悪いぞ」
「な、なんですって。私のウィンクが気持ち悪いですって。失礼しちゃう」

 樹実渡には女の色気がわからないのね。最悪。

「ごほん、とにかく続きを書いてくれるよう僕からお願いします」

 流石、流瀧。
 お願いするっていうのは真面目にしないとね。見倣みならわなくちゃ。

 あっ、そうだ。今度ハルと伴治に鶴と亀の贈り物でもしようかな。長生きしてもらいたいし。けど置物じゃダメよね。何がいいかな。ハルにはくしかな。伴治は何がいいだろうか。
 むむむ。うーん。うーーーん。

「火乃花、やっぱり腹が痛いんだろう」
「だから、違うって」
「ああ、火乃花やめろ。熱い、熱いじゃないか。おいら木の属性だぞ。灰になっちまうよ。流瀧、おまえからもやめるように言ってくれ」
「こらー、逃げるな。私が炎で浄めてあげるって言っているでしょ」
「まったく騒がしくてすみません。それにこれは自業自得ですね。まあ、燃えそうになったら鎮火してあげますから安心してください、樹実渡」
「流瀧のバカ、阿呆。それじゃ遅い。燃える前に止めてくれぇー。天ぷらでもウナギでも寿司でもご馳走してやるからさぁ」

 ご馳走。じゃ、やめてあげようかしら。

「樹実渡、早くご馳走して」
「えっ、火乃花をか。おいら流瀧に言ったんだぞ」
「なんですって。やっぱり燃やしてあげる。あっ、樹実渡、待てぇー」

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