66 / 161
幕間二
本の御魂三人衆・ふたたび
しおりを挟む第二話「悲しき本の声」も終わっちゃった。
美里はうまくいっているようだし、めでたし、めでたしよね。私たちの活躍を楽しんでくれた。もちろん楽しんだはずよね。
誰、火乃花はやり過ぎだって言った人。失礼しちゃう。
まあいいわ。今回だけ勘弁してあげる。次そんなこと言ったら、真っ黒こげにしてあげるんだから。
さとて、第二話が終わったってことはあのコーナーね。私の出番よ、何か話さなきゃ。
むむむ。うーん。うーーーん。
「火乃花、何しているんだ。腹でも痛いのか」
「違うわよ。私に話せることが何かないかなって考えているんじゃない。変なこと言わないでよね。燃やすわよ」
「おお、怖い。そんなことよりもこのコーナーはおいらに任せておけよ」
「ダメ、樹実渡。今回は黙っていて。前回、私はなんにもしていないんだからね。今回は私の番よ」
「そうか、ならどうぞ」
あっさり引き下がるなんて。嬉しいけど、まったく思いつかない。どうしよう。あっ、指先に炎が。樹実渡があっさり引き下がったのはこのせいか。
メラメラ、ボワッ。
「その炎は早くひっこめてください」
「そうね」
「よろしい。それで火乃花。話すことならたくさんあるはずですよ。御伽草子の御魂でしょう。浦島太郎の続きの話があったって話は面白いと思いますよ」
「ああ、それね。流瀧、ありがとう」
火乃花は深呼吸をして、浦島太郎の話を頭に浮かべた。
あのね、浦島太郎の話はもちろん知っているわよね。
亀を助けた浦島太郎が竜宮城で楽しんで、乙姫様から玉手箱を貰って帰って開けてはいけないという玉手箱を開けちゃうのよね。そして、お爺さんになっちゃって。
簡単に言うとそんな話。簡単に話し過ぎたかな。
みんなが知っているのはそこまでよね。知っているよなんて人もいるかもしれないけど、そういう人は黙っていてちょうだい。
メラメラ、ボワッ。
「それはやめなさい」
「えへへ、ごめん」
流瀧に怒られちゃった。
話を戻すとね。浦島太郎の話に続きがあったのよ。
「おい、そのドヤ顔はなんだ」
「何よ、樹実渡は邪魔しないで」
「はい、はい。ちなみにおいらも続きは知っているぞ」
「あ、ダメよ。私が話すんだから」
「じゃ、どうぞ」
もう、樹実渡ったら任せるっていったのに邪魔するんだから。
えっと、続きの話よね。
お爺さんになった浦島太郎は、鶴になっちゃうのよ。あれって急にお爺さんになったというか本当は、何百年も時が経過してしまったってことなのよね。
お爺さんになっちゃって、知っている人もいないし何もかも嫌になっちゃったのよね。浦島太郎は。でも、なんで鶴って思うわよね。
そう思った人、もうちょっと待ってね。
鶴になった浦島太郎は蓬莱山という想像上の山に辿り着き、乙姫様と再会出来るの。そこで末永く二人で暮らすんだから。
なんてロマンチックなの。
「ああ、私も運命の人に出会いたい」
「おい、話を続けろ」
「もう、樹実渡はロマンの欠片もないんだから」
「なんだと、おいらだってあるぞ。ほら、マロン」
「はい、はい」
あっ、話が逸れちゃった。
えっと、そうそう乙姫様は亀の化身なのよ。
つまり、鶴と亀。
鶴と亀が縁起物になっているのは、この話が由来なのかもね。
けど、なんで続きの話がなくなっちゃったのかな。
謎と言えば、開けてはいけない玉手箱をなんであげたのか。
なぜ、乙姫様が山にいるのとも思っちゃうけどね。海じゃなかったのって言いたいわよね。その変もよくわからないけど。ああ、もうわからないことだらけじゃない。
そうそう、なぜ浦島太郎が鶴なのかよね。ごめん、よくわからない。
アハハ。
文句言わないでよね。燃やすわよ。ウソ、ウソ。冗談。
誰かわかるように説明して。
「流瀧、知っている?」
「それは、僕もわからないです」
「おいらもわからない」
胸のあたりがモヤモヤするけど、まあ、いいか。ああ、なんだか恋がしたくなってきた。乙姫様と浦島太郎みたいに愛し合いたいわ。
流瀧と樹実渡とは、うーん。なんか違う。恋愛対象じゃない。じゃ遼哉。いや、ダメダメ。小海に恨まれちゃう。
良い人いないかな。
「終わったか、火乃花」
「何よ、樹実渡、なんか文句でもあるの」
「ないよ。でさ、第三話ってあるのかな」
「えっ、どうかな。そんなの私にわかるわけないじゃない」
「流瀧はどう思う」
「わからないですよ。けど、頼んでみてはいかがですか」
「うん、そうしよう。おいらの特製焼うどん作ってやるって言えばきっと書いてくれるだろう」
まったく、樹実渡は単純なんだから。けど、美味しそうね。
ということで、第三話もお願いします。
「おい、火乃花。なにやっているんだ。気持ち悪いぞ」
「な、なんですって。私のウィンクが気持ち悪いですって。失礼しちゃう」
樹実渡には女の色気がわからないのね。最悪。
「ごほん、とにかく続きを書いてくれるよう僕からお願いします」
流石、流瀧。
お願いするっていうのは真面目にしないとね。見倣わなくちゃ。
あっ、そうだ。今度ハルと伴治に鶴と亀の贈り物でもしようかな。長生きしてもらいたいし。けど置物じゃダメよね。何がいいかな。ハルには櫛かな。伴治は何がいいだろうか。
むむむ。うーん。うーーーん。
「火乃花、やっぱり腹が痛いんだろう」
「だから、違うって」
「ああ、火乃花やめろ。熱い、熱いじゃないか。おいら木の属性だぞ。灰になっちまうよ。流瀧、おまえからもやめるように言ってくれ」
「こらー、逃げるな。私が炎で浄めてあげるって言っているでしょ」
「まったく騒がしくてすみません。それにこれは自業自得ですね。まあ、燃えそうになったら鎮火してあげますから安心してください、樹実渡」
「流瀧のバカ、阿呆。それじゃ遅い。燃える前に止めてくれぇー。天ぷらでもウナギでも寿司でもご馳走してやるからさぁ」
ご馳走。じゃ、やめてあげようかしら。
「樹実渡、早くご馳走して」
「えっ、火乃花をか。おいら流瀧に言ったんだぞ」
「なんですって。やっぱり燃やしてあげる。あっ、樹実渡、待てぇー」
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる