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第三話 溜め息を漏らす本たち
【十】宝文堂を閉店にするな(三)
しおりを挟む盛り上がっていた雰囲気が一気に萎んでいく。
ダメなのか。閉店しか道がないのか。達哉の顔は暗いまま。
遼哉は肩で息をした。
「そうか、無理か。それならそれでいい。応援してくれるだけでいい。達哉は心配しなくていい。おまえはおまえの仕事を頑張ればいい。みんなが手伝ってくれると言うんだ。やってダメだったらそのとき考えればいいことだ」
幹夫はひとり頷き、達哉の目をしっかり見返していた。
んっ、ダメじゃないのか。幹夫はヤル気なのか。
「そうか、そこまで言うなら仕方がないな。わかったよ。俺は本当に手伝えないからな」
渋々だが達哉も了解してくれたようだ。
うまくいく。そう思う。いや、うまくいかせる。町の本屋の底力をみせるときだ。同時に源じぃの本も売りまくってしまおう。
売り込むチャンスでもある。
ただ本の御魂三人衆が表に出て動き回ってもいいものだろうか。良からぬ輩が出て来る恐れもあるかもしれない。人形が動いて話すのだから、金になると思う者もいるだろう。
本の御魂三人衆のことは慎重にことを進めなくてはいけない。
からくり人形だと誤魔化せないだろうか。それにはそう見せる仕種だけをしてもらわなくてはいけない。流瀧は問題なさそうだが、樹実渡と火乃花はどうだろう。特に火乃花は無理な気がする。
とにかくやるとなったのだから、そこはしっかりと段取りをしていかなくてはいけない。
流瀧とまず話をしよう。
そうだ、ブックカバーも用意しておかなくてはいけない。
これから忙しくなりそうだ。
「ああ、腹減った。遼哉、帰ったら美味いもの作ってくれ。物凄く腹が空いているから大盛りの焼きそばがいい」
「焼きそば、いいわね。私も食べたい」
「なんだよ、小海まで。二人ともわかったよ。作ってやるよ」
やっと食いしん坊の樹実渡が復活した。
保立親子もそんな様子に笑みを浮かべている。不思議な樹実渡のことを受け入れてくれたのだろうか。
病院からの帰り道、ポケットに入れた樹実渡が「遼哉も小海もありがとうな」と呟いた。
「俺は何もしていないよ。樹実渡の熱意が伝わったんだよ」
「そうよ」
「そうか、そうだよな。おいらは凄いってことだよな。よし、それなら焼きそばをやめて
特上うな重でも食べに行くか」
「いや、それは勘弁してくれ。焼きそばにしてくれ」
「冗談だ。おいらは遼哉の手作り焼きそばが、今は食べたい。うな重は宝文堂のことがうまくいってからのお楽しみだな」
いやいや、うな重は勘弁してほしい。あまり金の余裕はない。
もっと稼げるようになってからだったらいいかな。
「ねぇ、うな重はお祖母ちゃんにお願いしようよ。うまくいったらね。特上になるかはわからないけど」
自分の気持ちを察してくれたのか、小海は微笑みながらそう話した。
「おお、それはいい。ハルならいい店を知っていそうだからな」
遼哉は小海に小声で「ありがとう」と呟いた。
小海はただ微笑んでいるだけだった。
「焼きそば、焼きそば、ソースもあれば塩もある。かた焼きそばだってあるんだぞ。今日はソース焼きそばの気分だな。オイスターソースをちょちょいと入れればコクがでる」
樹実渡の歌は面白い。ただ面白いだけじゃない。
えっと、なになに。オイスターソースでコクがでるのか。試してみよう。
それにしてもなんだか嬉しそうだ。
やっぱり樹実渡はこうでなくちゃ。
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