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第三話 溜め息を漏らす本たち
【十四】ガンバレ、流瀧に火乃花
しおりを挟む樹実渡はうまくやっているだろうか。
ここは信じよう。
それにしても、なかなかいい方法を考えたものだ。流瀧は茶トラ猫の背に揺られながら、ほんの少し口角を上げた。
「流瀧、どうしたの」
「んっ、なんでもないです。火乃花」
「そうなの。珍しく笑っていたように思えたけど」
「なんです。僕だって笑いますよ」
「まあいいけど。それはそうと、樹実渡にはやられた。暴走するのは私の専売特許なのに。なんか悔しい」
専売特許か。いいんだか、悪いんだか。
とにかく、この作戦を成功させなくてはいけない。
「火乃花、ここは別行動をしたほうがいいです。樹実渡がどこへ向かったかはわかりませんがなるべく多くの人に宣伝しなくてはいけませんからね」
「そうね。なら、私は駅前商店街から神社のほうへ行こうかしら。確か縁結びの神様とかで若い女性がたくさん来ているって聞いたことあるから」
「ふむ、それは名案ですね。火乃花はそれでお願いしますよ。僕はそうですね。ちょっと遠いですけど、ふれあい広場のフラワーガーデンを目指します」
「わかったわ」
「きっとうまくいくはずです。火乃花は樹実渡よりも目立つでしょうからね」
「えっ、それって私が綺麗だっていうこと。もう流瀧ったら」
火乃花は頬を染めて照れていた。
「いや、その。まあ火乃花は確かに綺麗ですけど。そういうことではなくてですね。火乃花の緋色の衣と真っ白な白猫との色合いがめでたい感じで目立つのではないかと思ったのですよ」
「なーんだ。そういうことか。けど、私のこと綺麗って認めてくれたから嬉しい」
流瀧はどう返事をしていいのかわからなくなり口を閉ざす。
火乃花の思考は本当に前向きで羨ましい。自分は考え過ぎてしまう。それがいけないことなのかわからない。マイナス思考ではないとは思うが、どうなのだろう。
「流瀧、私あっちよね」
丁字路に突き当たり、頷いた。
「火乃花は右ですね。僕は左を行きます。それじゃ、お互い頑張りましょう」
流瀧は語気を強めて話すと、火乃花に向かって握り拳を掲げた。
「それじゃね」
「ええ、それでは」
流瀧は茶トラ猫の背に揺られながら振り返り、遠ざかっていく火乃花を見遣り再び前に向き直る。
火乃花は大丈夫だろうか。じっとしていられるだろうか。少しばかり不安ではあるが信じることにしよう。
ふと流瀧は茶トラ猫に目を向けた。この猫にも頑張ってもらわなくてはいけない。
「茶トラ猫よ、ちょっと遠いが頼みましたよ。任務が終わったら、美味しいものを遼哉に頼んで用意してもらいますからね」
「ニャン」
「そうか、頑張ってくれますか」
フラワーガーデンにたくさんの人がいてくれることを祈ろう。
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