本の御魂が舞い降りる

景綱

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第四話 消えた挿絵

【九】偲ぶ会

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 凛子の遺影を眺め、遼哉は小さく息を吐く。
 どうせ来るなら、退院祝いで来たかった。

「みんな、みんな。また会えたね」

 葵だけははしゃいでいる。御魂三人衆と会えて余程嬉しいのだろう。凛子の葬儀ではあるが、暗く湿ったものになるよりいいだろう。きっと、凛子も微笑んでいるはず。

「ねぇ、ねぇ、猫ちゃんは。グレンちゃんは。今日はいないの」
「グレンは、お仕事してるんだ」
「えっ、猫ちゃんもお仕事するの」
「うん、そうなんだ。本屋さんでお客さんを相手に頑張っているんだよ」
「そっか。偉いんだね」

 葵は本当に愛らしい。きっと、葵は凛子の葬儀だと理解していないのだろう。それはそれでいい。あえて話す必要はない。
 隣で小海も口元を緩ませていた。


***


 葬儀はしめやかに執り行われて会食の席に着く。
 遼哉は食事をしながら、佐久間に風狸の挿絵のことをそれとなく訊いてみた。

「それが、空白のままなんですよね」
「まだですか。それは変ですね」

 戻ると約束したはずなのに、どうしたのだろう。
 そんな話をしていたら、葵が袖を引っ張ってきた。

「ふうちゃん、あそこにいるよ」

 あそこって。葵は凛子の遺影を指差している。
 本当だ。いた。

 風狸は確かに遺影に寄り添うようにして寝ていた。どういうことだ。あれ、目の錯覚だろうか。凛子の遺影が微笑んでいる。
 目を擦り再び見遣ると、今度ははっきりと凛子の姿が浮き上がって見えた。

「おばあちゃんもこっちでお話しようよ」

 葵は手招きをしている。やっぱり葵は凛子がまだ生きていると思っているのだろう。気づかなかったが、葬儀のときもどこかにいたのだろうか。

「わざわざ来てくれてすみませんねぇ」

 凛子はニコリとしてお辞儀をしている。

「いえいえ、そんな気にしないでください」

 あまりにも自然な振舞いに、遼哉は普通に返答してしまった。
 幽霊だとわかっているが、それほど驚くことはない。幽霊には免疫がある。怨霊だったら卒倒するかもしれないが凛子はそうじゃない。

 これも、源じぃのおかげだろう。変な話だけど。
 もしかしてと思いあたりを見回してみたが、どこにも気配はない。いないか、源じぃは。

「うまい、うまい。やっぱり特上は格別だ」

 樹実渡のやつ、そんなに頬張らなくてもいいのに。火乃花までがっついて。仕方がないやつらだ。
 流瀧は凛子の登場にお辞儀をして話に耳を傾けていた。場をわきまえているのは流瀧だけか。

「おばあちゃん、元気になってよかったね」

 葵の言葉に凛子は苦笑いを浮かべて「葵、そうじゃないんだよ」と諭すように話し出した。

「えっ、ちがうの。そうなの」

 葵は凛子の話を聞き、頷いている。理解しているのだろうか。

「おばあちゃん、天国に行っちゃうの」
「そうだよ」
「もう会えないの」
「そうなるねぇ」

 葵は凛子に抱きつこうとしたのに、通り抜けてしまった。
 葵はやっといつもと違うことに気がついたようだ。振り返り呆然と凛子をみつめている。

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