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第四話 消えた挿絵
【十七】凛子の気持ち
しおりを挟む神様が特例を出せるほどの何かをみつけなくてはいけない。
その前にグレンの尿スプレー問題もある。おそらく神様の耳にも入っているはずだ。グレンのおかげで神様と話すことが出来たのは良いことだったかもしれないが、正直特例を遠ざけてしまったとも言える。
なぜ、尿スプレーなんか。縄張りだと示す行為だろう。あれは。
ああ、頭が痛い。
「遼哉、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
小海は自分が天上界の料理人になると言い出すのではないかと気が気ではないのだろう。そんな顔をしている。
「あの、なんで料理人なんて話が出たのかな。何か他のことで神様に特例もらえないのか」
「なんでだろうな。けど、他のことって小海に何か考えがあるのか」
「ううん、ない。ごめん」
「謝らなくてもいいよ」
遼哉は小海に微笑んだ。
「知っているぞ。今いる天上界の料理人の生まれ変わる順番が来たらしい。で、代わりの料理人を探していたところらしい」
なるほど。
風狸の情報網は凄い。それならなぜ、うまく生まれ変われるように段取り出来なかったのだろう。それだけ難しいってことなのだろうか。
「そうなんだ。けど、代わりなんていくらでもいそうだけどな」
「代わりはいても、好みの料理を作る者がまだみつからないらしいぞ」
神様にも好みの料理があるのか。これはいいこと聞いた。
「あの、やはり、私が料理人になったほうがいいんじゃないかい」
凛子が再びそう話す。なぜか、凛子の目が煌めいている。
「よし、ならおいらのレシピを教えるから作ってみるか」
「ええ、そうね。作ってみましょうかねぇ。私、料理作るの大好きなの。けど、何がいいんでしょうねぇ。神様の好みってなんでしょう」
そうか、凛子は料理人になりたいのか。
なんていい笑顔をしているのだろう。
これでいいのだろうか。間違いなく生まれ変わりは遠のくだろう。凛子はそれでもいいと思っているのかもしれない。どうするべきか。悩ましい。
風狸を見遣ると、一回だけ瞬きをして何も口にはしなかった。
「おいらは和食がいいと思うぞ。おにぎりを美味しいと言うくらいだから、好みは和食だろう」
「確かにそうかもしれないねぇ」
「それでいいのかい凛子。他に策がないかもっと考えてみたほうがいいのではないか」
「源蔵さん、いいの。私は決めましたから。翔子と葵にもそう伝えてください」
源蔵は深い息を吐き「そうか」と一言呟いた。
凛子は樹実渡にレシピを聞きながら肉じゃが、ほうれん草のお浸し、稲荷寿司、筍の土佐煮、筑前煮といろいろと作っていった。
味見をしたが、どれも絶品で言うことなしだ。
みんな「美味い、美味い」と口にしている。
「これで、グレンちゃんも許してもらえるかもしれませんね」
凛子の言葉にハッとした。凛子はそこまで考えていたのか。自分を犠牲にして、グレンを助けようと思っていたのか。なんて心優しい人だ。
「凛子、その心が神の心を動かすかもしれぬぞ」
風狸がニヤリとして言葉を吐いた。
神の心を動かすか。
確かに、その可能性はあるのか。
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