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第四話 消えた挿絵
【十六】改めて作戦会議
しおりを挟むなるほど、そういうことか。
遼哉は胡坐をかいて腕組みし、低く唸った。
源じぃから聞いたあの世での話は突拍子もないものだ。
天上界の料理人か。
なんだか物凄く地位の高い料理人って感じがする。正直、惹かれるところはある。チラッと小海の顔を見てやっぱり行くわけにはいかない。
小海を悲しませるわけにはいかない。
死か。
なぜだろう。不思議と、死ぬことが怖く感じない。
幽霊の源じぃがいるせいだろうか。
それとも、目の前にあの世に行ってあっけらかんとしている本の御魂三人衆がいるせいだろうか。
本の御魂三人衆は気が向けばあの世とこの世を行き来できるらしい。なんだか羨ましく思えてくる。
「やっぱり、おいらのレシピは最高だってことだよな。神様だって美味しいって言うくらいだもんな」
「あら、それって樹実渡がすごいのかな。遼哉の料理の腕がいいってことじゃないの」
「そ、それは……そうかも。けどよ。おいらのレシピがなきゃ、あの特製おにぎりは存在しないんだぞ」
「そうなの。でもね、あのトキシラズが美味しかっただけってことはないのかな。違う」
「な、なんだよ。今度は素材を褒めるのか。おいらのことだって褒めてくれたっていいじゃないか」
「まあ、まあ、それくらいにしてください。今は、凛子さんの生まれ変わりの作戦会議の最中なんですよ」
「そうだった。でもさ、流瀧。おいらと遼哉があの世に行けば即解決出来るんだろう」
樹実渡はチラッとこっちに目を向けて「そういうわけにはいかないか」と嘆息を漏らした。
「小海、俺が……。いや、なんでもない」
「なによ、言いたいことがあるなら最後までいいなさいよね。あ、やっぱり言わなくていい」
小海はきっと何を言おうとしたのかわかったはずだ。
遼哉は肩を落として、床をみつめた。
天上界の料理人か。
そこまでの才能はないとは思う。火乃花の言う通り、あのおにぎりはトキシラズの美味さに神様が感動しただけなのかもしれない。自分の料理の腕がよかったわけじゃない。神様がそこを見抜けないはずがない。
そうだとしたら、どういうことだ。
もしかして、特例を与える口実がほしかったとか。みんなが会ってきた女神様とやらは慈悲深い方なのかもしれない。
遼哉は首を傾げた。真実はどこにあるのだろうか。
「なあ、源じぃ。凛子さんのこともそうだけどグレンは大丈夫なのかな」
「そうだな。捕まってしまったからな。もう帰って来られないかもしれないな。あいつ、看守に尿スプレーを吹きかけてしまったらしいからな」
「そうそう、あの看守ときたら臭かったな。おいら、鼻がひん曲がるかと思ったぞ。あのときは何も言わなかったけど」
「もう、樹実渡ったら。そんなこと言ったらダメよ」
そう言いつつも火乃花はにやけた顔をしていた。思い出していたのかもしれない。
「ふたりともいい加減にしなさい。凛子さんやグレンのこと、もっと真剣に考えないといけませんよ」
「ごめん」
重なり合う樹実渡と火乃花の謝罪に流瀧は大きく頷いた。
二人とも意外と素直に謝るものだ。それだけ心配しているってことだろう。さっきまでは、わざと明るく振舞っていただけってこともある。
「あの、ひとつ提案があるのですが」
凛子が話に割り込んできた。凛子もいたんだった。もちろん、幽霊だ。
源じぃも幽霊としているのだから、一人幽霊が増えたところで大したことはない。凛子の脇には風狸も寄り添うようにしている。いまのところ風狸が話に割り込んでくる気配はない。
きっと反省しているのだろう。決まってもいないのに、大きなことを口にしてしまったんだから。
「提案ですか」
「はい、私が天上界の料理人になるってのはどうでしょうかねぇ」
一同の「えーーーーー」との声が飛び交った。
「それはいけない。そんなことをしたら、生まれ変われなくなるではないか」
「そうですよ。源じぃの言う通りです」
「源蔵さん、遼哉さん。私は思うんですよ。今、こうしているよりも天上界の料理人になったほうが、もしかしたら少しは早く生まれ変われるように取り計らってくれるのではないかと」
どうだろう。遼哉は天井を見上げて考え込んだ。
ないとは言い切れないのかもしれない。凛子の料理の腕がどの程度かにもよるのだろうか。
うまくいったとして、はたしてどれくらい早く生まれ変われるのか。
百年後が一年後に縮まるはずがない。出来ることなら、数か月後とかが一番いいのだけど。今のままじゃ無理だろう。
他に手立てはないのか。
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