本の御魂が舞い降りる

景綱

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第四話 消えた挿絵

【二十六】猫神様現る

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「あの、その、言葉を話せるのですか」

 思わず、敬語で話しかけてしまった。

「ふむ、まあそうだな。吾輩も一応猫神様と言われているからな。言葉はわかる。いつもは話しかけたりはしないが、おまえたちは神様が見えるようだからいいかと思ったまでだ」

 猫の神様か。ならば、凛子のことを頼んでみようか。凛子のこと知っているみたいだし。

「あの、凛子さんのことなんですが」
「言わなくても聞こえた。吾輩も力になってやる」

 話が早い。

「ちょっと、ちょっとネム兄ちゃん、安請け合いしちゃっていいの。ここは本を買ったら引き受けるとかのほうが」
「ミコ、吾輩の本は百万部突破している。そんなこと言わなくても問題ないぞ」
「そうだけど。まあ、いいか。なら、私お腹空いたから、なんかおごって」
「ミコ、違うだろう」
「でもさ……」

 なんだ、この女の子は。いきなり奢ってはないだろう。この猫神様と知り合いなのか。ネム兄ちゃんって言っているから兄妹なのか。この女の子も猫ってことなのか。それに、百万部突破した本っていうのがちょっと気になる。
 遼哉はミコをみつめていた。

「ちょっと、ちょっといくら私が可愛いからってそんなにみつめるもんじゃないわよ。もしかして、惚れちゃった。ああ、私の美貌びぼうは罪ね」
「ミコ、今はそんな話をしている時ではないぞ」
「ごめんなさい。凛子さんのことでしょ。私も手伝ってあげる」

 なんだかよくわからないが、力になってくれるのはありがたい。

「ミコ、またたび横丁に戻ってこのことを伝えてくれ」
「はーい。ネム兄ちゃん」

 ミコは神社の裏手に駆けていってしまった。

「吾輩も行くとしよう。あっ、そうそう、出来るのであれば美味いもの用意してくれたらありがたい。マグロとかマグロとかマグロとかな」

 ネムはそう話すと姿を消した。
 遼哉は思わず吹き出してしまった。そんなにマグロが好きなのか。神様と言っても基本は猫なんだな。ただ気安く近づけない圧倒される凄い気をはらんでいた。
 猫の神様か。思わぬ人と、じゃなくて猫と出会えるものだな。

「おいら、びっくりした。猫の神様なんてはじめ会った。けど、食いしん坊なのかも」

 樹実渡は頬を緩ませていた。

「私もびっくりした。けど、あの女の子は面白い子ね。私と話が合うかも」
「そうか。火乃花とは合わないんじゃないか」
「そんなことないわよ。樹実渡にはわからないの」
「ふたりともやめなさい。まだまだ他の神社を回らなきゃいけないんですからね」

 樹実渡と火乃花は流瀧の言葉に頷き「次、どうする」とこっちに目を向けてきた。

 遼哉は翔子に目を向けて「他に凛子さんが行っていた神社は知りませんか」と問うた。
 翔子は首を横に振っていた。もう知らないようだ。

「そうそう、言い忘れていたことがあるんだけど。神頼みしているんだったら、この先の海岸近くにある松林行ってみたら。小さい祠だけど、力になってくれるはずよ。猫と鼠が出迎えてくれるよ。それと、マグロを忘れずに」

 びっくりした。
 さっき猫神様といた女の子か。あれ、もういない。
 本当に面白い子だ。けど、いい話を聞けた。

「よーし、次、行ってみよう。マグロだ、レッツゴー」
「違うだろう。樹実渡」
「えっ、そうか」

 樹実渡は腹を抱えて大笑いすると、グレンに跨り走って行ってしまった。

「樹実渡、ずるい。私も乗せてよ」と火乃花が追いかけて行く。
「おい、待て。おまえたち場所知らないだろう」

 そういえば、百万部突破の本のこと訊くの忘れた。

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