本の御魂が舞い降りる

景綱

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第四話 消えた挿絵

【二十八】騒がしい猫田彦とネズノ(一)

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「おっ、来たか。で、しあわせを求めているのは誰だ」
「おいら、美味いもの食えればしあわせだぞ」
「そ、そうか。同感だ」
「なら何か作ってくれるのか」
「いや、それは」
「ねぇねぇ、それじゃ私に良い人紹介して。しあわせにしてくれるんでしょ」

 やっと追いついたと思ったら、何を話しているんだ。仕方がないな、二人とも。

「樹実渡も火乃花もそんなこと願いに来たんじゃないだろう」
「んっ、そうだった」

 樹実渡は頭を掻いて苦笑いを浮かべている。
 火乃花は違った。

「いいじゃない。しあわせにしてくれるって言うんだから遼哉もお願いしたら」

 三毛猫に詰め寄って手を合わせている。

「変なのが来たな」

 鼠の呟きに遼哉は目を向けた。やっぱり神様なのだろうか。人の言葉を話す時点でただの猫と鼠じゃない。小海も聞こえているようだし。
 グレンはというと鼠に近づき伏せをしてみつめている。

「うっ、なんだ。まさか食おうとか思っていないだろうな。あっちへ行け。それとも尻尾ムチを一発お見舞いしてやろうか」
「よせ、よせ、そこの猫。ネズノは硬くて食えないぞ。歯がボロボロになっちまう。食えたとしても不味いだろうけど」
「猫田彦、一言余計だ。黙れ」

 樹実渡と火乃花が二人して鼠の身体をペチペチと叩くように触れて出した。

「本当だ、硬いぞ」
「それにひんやりする。石を触っているみたい」
「火乃花、冷たくて気持ちいな」

 樹実渡も火乃花も鼠に寄り添って目を閉じて笑みを浮かべている。何をしているんだか。

「おい、この黄色と赤色の阿呆をどうにかしろ」

 鼠はブルッと身体を震わせて樹実渡と火乃花を押し退けた。

「申し訳ありません」と流瀧が頭を下げつつ、樹実渡と火乃花を引っ張り後ろへ連れて行った。

 グレンは大きな欠伸をひとつして鼠から視線を外すと、今度は三毛猫のほうへと向いた。

「おお、なんだ。やるつもりか。おいらは強いぞ」
「猫田彦、やめとけ。一応、こいつらは客だ」
「なんだ、さっきは一発お見舞いしてやろうかなんて言っていたくせに」
「うるさい」

 ペシペシペシッ。

「いて、いて、いてぇ。なぜ、叩く」
「そこに叩きやすい頭があるからだ」

 遼哉は思わず吹き出してしまった。
 このコンビは漫才師か。隣で小海もクスクス笑っている。佐久間も翔子も葵も笑っている。そう思ったら、グレンが三毛猫の頭をパシッと叩いた。

「おお、やっぱりやるつもりか」

 ペシペシペシッ。

「いて、いて、いてぇ。なんだよ、ネズノまで。どいつもこいつも腹立つな」
「なあ、おいらも叩いていいのか。それでしあわせになれるのか」
「違う、そこの黄色いの」

 流瀧が再び樹実渡を後ろへ連れて行く。樹実渡が加わるとややこしくなる。今は、おとなしくしていてくれ。
 そんなことより、まずは名乗らなくては。

「なんだかあいつらが失礼なことしてすみません。俺は高宮遼哉といいます。こっちが小海。佐久間さんに翔子さんに葵。で、黄色いのが樹実渡で赤いのが火乃花、そして青いのが流瀧です」
「ふむふむ。そうか。おいらは猫田彦だ。で、この毒舌生意気鼠が狛鼠こまねずみのネズノだ」
「なんだ、その紹介は阿呆で唐変木なおまえに言われたくないな。あっ、お調子者で、すっとこどっこいと言ったほうがいいか」

 そう話しながらも尻尾をぶんぶん震わせて今にも叩こうとしている。ネズノとか言ったか。三毛猫が猫田彦か。なんだか猿田彦大神に似た名前だけど、親戚か何かか。けど、神様に親戚はいるのか。よくわからない。
 神様の世界もなんだか面白い。

「うるさい、ネズノ。おいらの必殺技を喰らわせるぞ」
「ふーんだ、そんなのあっさりかわしてやる。やってみろ」
「ちょっとちょっと、そこは仲良くしましょうよ」

 このままじゃ話が進まないと遼哉は間に割り込んだ。そのとたん、猫田彦の猫パンチとネズノの尻尾ムチを同時に喰らってしまった。

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