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第四話 消えた挿絵
【二十九】騒がしい猫田彦とネズノ(二)
しおりを挟む「ああ、ダメダメ。やめて」
小海の叫び声に猫田彦とネズノは攻撃をやめてキョトンとしている。
他の皆はそんな様子を静観していた。なんとなく、関わらない方がいいと思っているのかもしれない。
「もう、あなたたちは力ある神様なのでしょう。違うの」
「いや、どうだろう。神といえばそうかもしれないが」
「猫田彦はそうだが、俺様は狛鼠だ。神ではない」
「そうなのね。それはそうと遼哉に何か言うことがあるでしょう」
小海の言葉に猫田彦とネズノが顔を見合わせて「すまない」と同時に口にした。
「小海、いいって」
「よくない。こんな乱暴するなんてダメ。遼哉、そうでしょ」
確かにそうだ。
「この女は気が強いな」
小声で猫田彦がネズノに話すのを耳にして、チラッと小海を見遣る。大丈夫だ、聞えていないみたいだ。
「小海、少し落ち着こう」
「そうだ、そうだ。落ち着こう」
「あなたたちのせいでしょ」
遼哉は小海を宥めて猫田彦たちから引き離す。
そこにグレンが猫田彦の頭を再びパシッと叩く。
「こら、グレン」
「おのれ、やるのか」
遼哉は嘆息を漏らして「いい加減に終わりにしてください」と懇願した。
猫田彦も聞き入れてグレンを睨むのをやめた。
「そうだ、そういえばおまえたちは何をしに来たのだ」
そうだった。
「実は、凛子さんのことでお願いがあるんです」
遼哉は今までのことを掻い摘んで話すと、猫田彦は頷き腕組みをした。
「よし、わかった。ネズノ、徳兵衛と先代猫田彦に会いに行くぞ。いや、待て。その前に腹ごしらえしてからだ。あご出汁のラーメンでもあればいいのだが」
「あご出汁のラーメンって言ったか。いいな、それ。遼哉、今すぐ作ってくれ」
樹実渡が意気込んで足元で騒ぎ立てる。食に関することだとすぐに食いつくんだから。こんなところでラーメンなんか作れるわけがない。
「おまえ、作れるのか。なら、こっちへ来い」
猫田彦は目を輝かせて、祠へと促す。まさか、祠に来いってことか。あんな小さな祠に入れるわけがない。そう思っていたのだが、祠の入り口に手が触れた瞬間、急に景色が歪み出した。
まさか、祠に吸い込まれているのか。そんなことってあるのか。
うっ、眩暈が。気持ち悪い。
後頭部が疼く。なんだ、何が起きている。
頭を左右に振ったそのとき、心地よい風とともに眩暈も気持ち悪さも頭の疼きもきれいさっぱり消え去っていた。
気づけば、目の前にダイニングキッチンがあった。ここって祠の中なのか。もしかして、身体が縮んでしまったとか。遼哉は首を傾げてあたりを見回した。
「ほら、食材は準備したぞ。早速ラーメンを作ってくれ」
「猫田彦、本当にこいつに作れるのか。信用していいのか。まずいラーメン食わされたらかなわないぞ」
「そこの鼠、だまりなさいよ。遼哉の料理は頬が落ちるほど美味しいんだからね。そんなことを言うなら食べなくていいわよ」
火乃花の怒鳴り声に、毒舌なネズノも口を閉ざした。恐るべし、火乃花。
遼哉は苦笑いを浮かべて、あご出汁ラーメンを作り始めた。
なんだかんだ言って、力になってくれそうだ。
騒がしくて変わった神様だが、力のある神様だと信じることにしよう。
いつの間にか、テーブルに佐久間、翔子、葵、本の御魂三人衆、グレンが座って談笑していた。もちろん、グレンは話したりはしないが話に耳を傾けていた。その中心に猫田彦とネズノもいる。あれ、小海はと思ったらすぐ隣から「手伝おうか」と声をかけてきた。
「あの、もしよろしければ僕もお手伝いいたしますよ」
突然の声に流し台を見遣れば、鼠が一匹いた。ネズノなのかと一瞬思ったのだが、ネズノはテーブルのほうにいた。
こいつは誰だ。
困惑を感じ取ったのか、鼠が頭を下げてニコリと話し出す。
「僕はコズノです。狛鼠は対でいますからね」
なるほど、そういうことか。
ネズノと違いずいぶん丁寧な言葉遣いだ。対になる者は正反対の性格になるものなのかもしれない。
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