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第五話 思い出を抱いて
【八】突然のありえない報せ
しおりを挟む遼哉はコラボ作品のことを考えていた。
「遼哉、すごくいい話だよね。うまくいくといいね」
「そうだな」
小海の笑みに頬が緩む。
「親父、ありがとう」
「お礼なんていい。これがうまくいけば、うちの出版社も万々歳だからな。おまえのためじゃないさ」
まったく素直じゃない。まあ、確かにこの企画がうまくいけば、この出版社も一気に盛り上がるだろう。自分が知らないだけで、ぷくぷくの話は人気があるみたいだから。
さてと、そろそろ帰るとするか。きっと樹実渡とグレンが腹を空かせて待っているだろうし。いや、ハルのところで食い過ぎているだろうか。
遼哉はそんな想像をして頬を緩ませていた。
スマホの着信音が鳴って取り出すが着信はなかった。小海のほうか。
「どうしたの、朋美」
朋美からか。そういえば伴治と流瀧はどうしているだろうか。
「えっ、嘘。そんなこと……」
どうしたのだろう。小海の顔が青ざめている。何かあったのか。
「どうかしたのか」
小海が涙目になっている。これはただ事ではない。
「朋美、すぐそっちに行く」
小海は通話を切るなり声を震わせて抱きついてきた。
「お祖母ちゃんが、お祖母ちゃんが」
「おい、小海。何があったんだよ。ハルさんがどうしたっていうんだ」
見上げてきた瞳からぽろりと涙が零れ落ち「亡くなったって」と呟いた。
「亡くなった」
小海の声が遠くで聞こえてくるようだ。聞き間違いではないのか。
そんな突然に亡くなることがあるのか。元気なはずだ。おかしいじゃないか。
問題はそれだけではなかった。続けた言葉に激震が走った。
「樹実渡と火乃花も亡くなったって」
何かの冗談か。あいつらが亡くなる。付喪神だろう。そう簡単に亡くなるものか。
グレンも瀕死の重症だって。
何が起きた。
頭が真っ白だ。わけがわからない。足の力が抜けて崩れ落ちそうだ。
これは何かの冗談だ。違うのか。
すぐ向こうで笑っていた父も母も兄も呆然と立ち尽くしている。
どう考えてもありえない。朝、グレンの背に揺られた樹実渡が思い出された。
嘘だ、嘘だ、全部嘘だ。
誰かの仕掛けたドッキリに違いない。いや、そんなことをする者はいない。
ダメだ。こんなのダメだ。現実だとどうしても受け止められない。
小海の目に涙を見た瞬間、頭がクラッとして急に景色が遠のいていく。暗闇が近づいてきた。
「遼哉、私どうしたらいいの」
小海の声にハッとして我に返る。
「とにかく、帰ろう。きっと何かの間違えだ。そうだよ、ハルさんは元気だったじゃないか。樹実渡だって火乃花だってグレンだって」
小海は涙を拭い頷いた。
そうさ、きっと『騙されたな』なんて樹実渡が笑いかけてくれるはずだ。
亡くなっただなんて信じられるわけがないじゃないか。
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