ある日、AV男優になった元大学生

華愁

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第二十一話 あの頃の景色

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『「“あの日”俺がされたこと②」。

俺から見た校内の様子と
大学中退までを書いてみたんだ』

冒頭

――俺の日常と旧校舎の
演劇部の部室だけが狂ってる。

半月ごとに部室で先輩たちに
“まわされる”中で校内は平穏だ。

生徒たちの声、教師の声、
音楽室から聞こえるピアノの音色。

旧校舎の演劇部の部室だけが異彩を放っている。

教師たちは気付かない。

演劇部は廃部寸前で名前だけの
顧問はいるが彼は美術部と兼任していて
演劇部の実態を知らない。

いや、放置していると言った方が正しいだろう。

中略

――一年後、久地先輩達が卒業して解放され、
大学進学を決めたが
入学式で貧血を起こしてしまった――

クライマックス

――母親の借金が膨れ上がり、
大学二年生の夏休みに入ったタイミングで
中退を決め、バイトを始めた―― 


蒼原そうげん学園。

俺や久地先輩たちの母校の名前だよ。

漢字で書くと爽やかだけど、
実情は不良や問題児が多いし、
教師たちは我関せずってことが多かったんだよ』

黎都の母校の名前に反応したのは
ADの南澤だった。

蒼原そうげん学園!?

私の甥っ子が蒼原そうげん学園に
通ってるんだけど……」

南澤の声は、思わず漏れた
驚きのように高かった。

黎都は一瞬、眉をひそめる。

「……甥っ子?」

「うん、高二……」

南澤は口ごもり、視線を泳がせた。

『南澤さん、甥っ子くんとは
頻繁に連絡取ってる?

あの場所は、声を上げないやつから
順に飲み込まれる。

俺もそうだった……

“男”が“性被害”に遭ってるなんて
言えなかったし、教師たちは
信じないと思ったから言わなかった。

だけど、あの頃にきちんと
声を上げていればと今は思ってるんだ』

――南澤は唇を噛んだまま、
小さく首を横に振った。

「……たまに話すくらい。

でも、学校でのことはあんまり言わない子で……」

黎都は深く息を吐き、視線を落とした。

『……だったら、ちゃんと聞いてやってくれ。

何もないって言ってても、
裏じゃ何が起きてるかわからない』

南澤は顔を上げたが、
黎都の眼差しの強さに言葉を飲み込む。

『……私、甥っ子にそんなこと
聞いたら嫌がられないかな』

『もちろん、嫌がられるかもしれない。

でも、“大丈夫”って言葉は、
時にいちばん危ないサインなんだよ』

黎都は、旧校舎の湿った匂いと、
鍵のかかるはずのない扉が
重く閉じられたあの音を思い出していた。

少し間を置き、南澤がぽつりと聞いた。

「……黎都くんは、どうして今、
それを言えるようになったの?」

『……遅すぎたから。俺は、大学をやめてから
ずっと後悔してる。

あの時、自分も、後から入ってきたやつも……
誰一人守れなかった』

南澤の表情が揺れた。

「……わかった。今日帰ったら、
甥っ子とちゃんと話す」

黎都はほんのわずかに頷いた。

『……それで何もなければ、
それが一番いい。

けど――もし何かあったら、
絶対に一人にしないであげて。

俺はあの頃、学校にも家にも居場所がなかった。

大学に進学したものの、
人間不信だったから特定の友人は作れなかった。

だけど、甥っ子くんは南澤さんやご両親がいる。

年頃の男の子だから嫌な顔されるかもしれないけど、学校でのこと、聞いてあげてほしいんだ』

南澤は真剣な目で「うん」と答えた。

その短い返事に、黎都は過去の自分とは
違う選択が、今ひとつ生まれたような気がした。

‥‥‥‥‥

【南澤視点】

黎都の話を聞いて南澤は帰宅後、
甥の煌太こうたに電話をした。

「煌太《こうた》、久しぶり。

最近、学校どう?」

「普通だよ。」

電話の向こうで、甥の煌太の声がいつもより
弱く、どこか覇気がないことに気づいた。

「煌太、元気ないんじゃない?

 学校、何かあったの?」

「ううん、別に……ただ、ちょっと疲れてるだけ」

そう言いながらも、声に力が戻らない。

南澤は胸がざわついた。

「もし何かあったら、
いつでも話していいんだよ」

煌太はしばらく黙っていたが、
やがて小さな声で言った。

「ありがとう……可南子叔母さん」

翌日、南澤は黎都に相談することにした。

「黎都くん、今大丈夫?」

撮影の休憩に入っていた黎都に南澤が声をかけた。

『南澤さん。うん、大丈夫だよ』

「昨日、甥っ子の煌太《こうた》に
電話したんだけど、声に覇気がなくて、
多分、何か隠してる……」

黎都は眉間にシワを寄せた。

『甥っ子くん、
煌太《こうた》くんっていうんだね。

一回、俺に会わせてくれない?』

「わかった。

煌太《こうた》も
身内には話にくいことも
OBの黎都くんになら話すかもしれないし。

今日、家に帰ったらまた、
煌太《こうた》に電話してみる」
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