ある日、AV男優になった元大学生

華愁

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第二十三話 「蒼原学園、旧校舎の闇」

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黎都は鷺沼と華山に連絡を取り、恋人兼監督の阿久津と
現在の被害の煌太こうた、そして、煌太こうた
叔母の南沢の四人で風見ヶ丘公園で待ち合わせをした。

現在も蒼原学園の旧校舎で
あの頃と同じことが起きていると伝えた。

「加害者側だった俺がいうのもどうかとは
思うがそういうことなら協力する。

林田は相変わらずなんだな」

少し遠い目をした鷺沼が小さくため息を吐いた。

「少しでも黎都への罪滅ぼしになるなら協力する」 

華山も小さくため息を吐いた。

『ありがとうございます。華山先輩、鷺沼先輩』

黎都は深く頭を下げた。

その横で、煌太が不安げに二人の男を見上げている。

鷺沼はその視線に気づき、しゃがみ込んで煌太と目線を合わせた。

「……怖い思いをしたな。

俺も、昔は加害者の側にいた。

だけど今は違う。お前を守るために動く」

煌太はわずかに驚いた表情を見せたが、
やがて小さくうなずいた。

華山が腕を組み、黎都に視線を戻す。

「証拠はあるのか?」

『証言は煌太くんのほかにも集めるつもりです。

録音、映像、何でも使いますよ』

「だったら、あの部屋の現状を押さえる必要があるな。

旧校舎の鍵、まだルートはある」

黎都は目を細めた。

『……華山先輩、危険を伴います』

「構わない。俺も“あの頃”を終わらせたい」

阿久津が全員を見回し、短く言った。 

『まずは計画を立てる。

撮影の段取り、侵入経路、証拠保全……

全部一発で決める。二度目はない』

南沢が不安そうに口を開いた。

「そんなこと……本当にやっていいんですか?」

『正攻法じゃ隠されるだけだ。公になる前に潰される』

阿久津の声は冷たくも確信に満ちていた。

黎都はノートを取り出し、皆の視線を集める。

『これは俺たちの物語じゃない。

今、旧校舎で泣いている誰かのための“告発”だ』

風見ヶ丘公園のベンチに、決意の空気が満ちた。

四年前と同じ場所で繰り返されてきた悪夢を、
今度こそ終わらせるために――。

「黎都は楠原宋太って覚えてるか?

あいつは今、蒼原学園の新米教師だ」

『楠原先輩が?』

――黎都の手がノートの上で止まった。

『……教師、ですか?』

華山が短くうなずく。

「元々教育学部に進んでたんだ。

就職したのが蒼原学園だって聞いた。

旧校舎の件にも、何かしら関わってる可能性がある」

鷺沼が眉をひそめる。

「楠原は“あの頃”直接の加害者じゃなかった。

けど、見て見ぬふりをしてた……。

教師になった今、どう出るかだな」

黎都は楠原の顔を思い浮かべた。あの時の、曖昧な笑み。

『……利用できるかもしれないですね。

内部に味方がいるなら、鍵や情報も手に入りやすいですし』

「俺たちのせいもあるんだろうが強くなったな……

とりあえず、楠原に接触してみるから黎都は
脚本の方を進めておいてくれ」

南沢が小さく首を傾げる。

「……その楠原先生って、信用できるんですか?」

「分からない」と華山が即答した。

「ただ、何もしなかった罪悪感を抱えてるなら、
動かせる余地はある」

鷺沼も続ける。

「俺らの顔を見た瞬間、逃げるか、立ち向かうか……それで分かる」

一番年上の阿久津が全員の顔を順に見た。

「楠原への接触は鷺沼と華山。

黎都は証拠集めの下準備、南沢さんは煌太くんのケアだ」

『分かりました』

その時、煌太が小さな声で呟いた。

「……その先生、本当に助けてくれるの?」

黎都は迷わず答えた。

『助けさせるんだ。逃げられないように』

沈黙の中、ベンチの上でペン先が走る。

計画表のページには、侵入経路、必要な道具、
録音機材の手配リストが次々と記されていった。

――数日後、楠原宋太への接触は、
旧校舎の外でひっそり行われることになる。

黎都たちはその瞬間を、物語の分岐点として
迎える覚悟を固めていた。

‥‥‥

数日後、午後四時、蒼原学園の授業が終わり、
生徒たちの声が校門から離れていく。

雲は薄く、秋の夕暮れが赤みを帯びて旧校舎の
外壁を照らしていた。

人気のない裏手に、鷺沼と華山が立っている。

遠くから、ジャケット姿の若い教師が歩いてくるのが見えた。
楠原宋太。

「……楠原」

華山が声をかけると、楠原の足が止まった。

「……華山……? 鷺沼も……」

一瞬、楠原の瞳がわずかに揺れる。

その表情は、驚きと警戒、
そして過去を思い出した影が混じっていた。

「少し話せるか」

鷺沼が低く言うと、楠原は旧校舎のほうに視線を向けた。

遠くから、窓越しに中をのぞく数人の生徒の姿が見える。

「……ここじゃ目立つ。裏の倉庫まで来い」

楠原はためらいながらも歩き出した。

倉庫の中は埃の匂いが漂い、夕陽がわずかに差し込んでいる。

扉が閉まると、外のざわめきが遠ざかった。

「何の用だ」

楠原の声は硬い。

「旧校舎で今も起きてること、知ってるだろ」

華山が切り込むと、楠原の肩がわずかに動いた。

「……知らない」

即答――しかし、目は逸らされた。

鷺沼が一歩踏み込む。

「嘘だな。見て見ぬふりをしてたのは昔だけで十分だ。

この間、黎都に謝罪してきた。」

華山が黎都の名前を出すと楠原は動揺を見せた。

「浅水黎都か……」

「そう、浅水黎都。俺たちの被害者だ。

だが、黎都は今、“俳優”兼“脚本家”として
活躍中だ。」

――華山は言葉を区切り、
楠原の反応を探るように視線をぶつけた。

「そして、今また、あの頃と同じことが起きている」

楠原の唇がわずかに動く。

「……本当に、まだ続いてるのか」

声は小さく、しかし怯えではなく、重く沈んだ後悔の色があった。

鷺沼が低く告げる。

「お前が教師なら、止められる立場だ。

俺たちはもう外からしか動けない。だから内部の人間が必要だ」

「……内部の人間?」

楠原は眉を寄せ、二人の顔を順に見た。

「黎都は、証拠を集めて告発するつもりだ」

華山の声は静かだが、逃げ道を与えない鋭さがあった。

「そのために、旧校舎の現状、鍵、そして職員会議での動き――

全部お前から欲しい」

「……俺に、間者になれってことか」

「違う」鷺沼が即座に否定した。

「お前自身が、“あの頃の見て見ぬふり”を終わらせろってことだ」

倉庫に沈黙が落ちる。

埃の匂いが濃く、外の光が少しずつ赤から紫に変わっていく。

やがて、楠原は深く息を吐いた。

「……鍵は用意できる。

ただし、校長や教頭に知られたら俺は終わる」

「だからこそ、一発で決める」

華山の言葉に、楠原はわずかに口角を上げた。

それはかつての曖昧な笑みではなく、腹をくくった顔だった。

「黎都には……俺からも話をさせてくれ」

鷺沼と華山がうなずき、三人は倉庫を後にした。

――この瞬間、旧校舎の闇に踏み込むための“
内部の扉”が、静かに開かれた。
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