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第三話 噂と悪意と糯田真人の怒り
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翌日。
教室に入った瞬間、妙な空気を感じた。
ざわ……ざわ……。
クラスの連中が、俺をちらちら見ながら
ヒソヒソ声を交わしている。
「マジであの煮雪璃羅と……?」
「昨日、放課後に一緒に歩いてるの見た奴いるんだって」
「しかも、手、繋いでたらしいぞ」
「いや、抱き合ってたって話もあるし……」
……くだらねぇ。
俺は無視して席に座ったが、
隣の席の友人が心配そうに小声で話しかけてきた。
「おい真人、なんか変な噂立ってるぞ。
お前、璃羅ちゃんと付き合ってんのか?」
「……あ? 誰がそんなこと言ってんだ?」
心当たりはある。
昨日の帰り道、遠くからスマホを
構えてた奴がいた気がする。
芸能科の連中か……それとも単なる野次馬か。
昼休みになると、噂はさらに大きくなっていた。
「璃羅が真人に抱かれた」なんて、とんでもない尾ひれまでついて。
「最低だよな、不良のくせにアイドルに手出すとか」
「璃羅ちゃんも見る目ないわー」
「いや、糯田に脅されてんじゃね?」
耳障りな声が次々に飛び込んでくる。
机を拳で叩きそうになるのを、必死にこらえた。
俺は悪くねぇ。
璃羅も悪くねぇ。
だが、璃羅の大事な居場所──
アイドルとしての立場が、
こんな根も葉もねぇ噂で
崩されるなんて絶対許せねぇ。
放課後。
ついに俺の堪忍袋の緒が切れた。
廊下でニヤつきながら俺を指さす芸能科の三人組に、
俺はずかずかと歩み寄る。
『朝からくだらない噂を流してるのはお前らか!!
俺のことは好き勝手噂すればいいが
てめぇらのくだらなちっぽけな嫉妬心で
璃羅の生活を汚してんじゃねぇよ!!』
俺の怒鳴り声に、廊下の空気が一瞬で凍りついた。
「お前らこそこそ歩いてたの、見た奴いるんだぜ?」
「アイドルに手ぇ出すとか、
どう考えてもおかしいだろ」
芸能科の三人組は顔を引きつらせながらも、
強がったように笑う顔にムカついて
俺は胸ぐらを掴み、ぐっと壁に押しつけた。
ごつん、と乾いた音が響き、
周囲の視線がさらに集まる。
『……おかしいのはテメェらの頭だろ。
見たって証拠あんのか? 抱き合った?
手繋いだ?
それ、全部テメェらの妄想じゃねぇか。』
言葉の刃を突きつけると、奴らの顔が青ざめる。
だが一人が負けじと口を開いた。
「お、俺たちだけじゃねぇ! 俺たちは
少し便乗しただけで、噂広めたのは──」
そこまで言った瞬間、残りの二人が慌てて口を塞いだ。
「バカッ! 余計なこと言うな!」
「……っ、ち、ちげぇよ。
とにかく俺らだけのせいじゃねぇ!」
だが、もう遅ぇ。
一瞬漏れた言葉で十分だ。
背後でざわめく生徒たち。
俺は胸ぐらを放り捨て、奴らを睨みつける。
『……便乗? じゃあ最初に流した奴は
別にいるってわけだな』
三人組は答えない。
ただ目を逸らし、汗を浮かべている。
──黒幕がいる。
しかもこいつらがビビるほどの存在。
芸能科の権力者か、それとも……。
一人だけ顔がよぎった。
璃羅の母親であり、マネージャー。
“アイドルの煮雪璃羅”以外を許さない女。
……まさか、とは思う。
けど、あり得ない話じゃねぇ。
娘のイメージを守るために、
俺を悪役に仕立てるのは手っ取り早い方法だ。
歯を食いしばり、こみ上げる苛立ちを押さえ込む。
『信じてやるよ。だが、今度、くだらねぇ噂に
便乗したらぶっ飛ばすからな、
それから、昨日のことだが、
璃羅を家の途中まで送って行っただけで
抱き合うどころか手も繋いでねぇよ』
三人組は押し黙ったまま、
唇を噛んで視線を逸らした。
逃げるようにその場を離れていく背中に、
周囲の野次馬たちもざわめきながら道を開ける。
「……マジかよ、本当に送っただけ……?」
「でも、あいつらの顔……
嘘ついてるようには見えなかったな」
ひそひそ声が流れる。
さっきまでの好奇と悪意に満ちた視線が、
少しだけ色を変えていくのを感じた。
俺は深く息を吐き、
拳を握りしめたまま言葉を吐き捨てる。
『くだらねぇ。噂なんざ信じたい奴だけ勝手に信じてろ。
……だが、璃羅を傷つける言葉は絶対に許さねぇ』
静まり返った廊下に、俺の声だけが響いた。
その時、背後から小さな足音。
振り返ると、キャップを目深にかぶった
璃羅が立っていた。
『……真人くん……』
震える声。
けれど、その目は真っ直ぐ俺を見ていた。
『ありがとう。……私のこと、守ってくれて』
小さな声だったが、周囲にいた生徒たちの耳にははっきり届いた。
彼女の言葉に、さらにざわめきが広がる。
俺は璃羅を見て、ほんの少しだけ笑った。
『当たり前だろ。……俺は、お前の味方だからな』
璃羅の肩がかすかに震え、ほっとしたように息をついた。
だがその奥には、まだ拭えぬ影がある。
黒幕の存在。
この噂は、ただの生徒の悪ふざけなんかじゃねぇ。
──必ず突き止めてやる。
俺は強く心に誓った。
そしてこの瞬間、
「糯田真人は煮雪璃羅のために怒った」
という事実が、新しい“噂”として学校中に
広まっていくことになるのだった。
教室に入った瞬間、妙な空気を感じた。
ざわ……ざわ……。
クラスの連中が、俺をちらちら見ながら
ヒソヒソ声を交わしている。
「マジであの煮雪璃羅と……?」
「昨日、放課後に一緒に歩いてるの見た奴いるんだって」
「しかも、手、繋いでたらしいぞ」
「いや、抱き合ってたって話もあるし……」
……くだらねぇ。
俺は無視して席に座ったが、
隣の席の友人が心配そうに小声で話しかけてきた。
「おい真人、なんか変な噂立ってるぞ。
お前、璃羅ちゃんと付き合ってんのか?」
「……あ? 誰がそんなこと言ってんだ?」
心当たりはある。
昨日の帰り道、遠くからスマホを
構えてた奴がいた気がする。
芸能科の連中か……それとも単なる野次馬か。
昼休みになると、噂はさらに大きくなっていた。
「璃羅が真人に抱かれた」なんて、とんでもない尾ひれまでついて。
「最低だよな、不良のくせにアイドルに手出すとか」
「璃羅ちゃんも見る目ないわー」
「いや、糯田に脅されてんじゃね?」
耳障りな声が次々に飛び込んでくる。
机を拳で叩きそうになるのを、必死にこらえた。
俺は悪くねぇ。
璃羅も悪くねぇ。
だが、璃羅の大事な居場所──
アイドルとしての立場が、
こんな根も葉もねぇ噂で
崩されるなんて絶対許せねぇ。
放課後。
ついに俺の堪忍袋の緒が切れた。
廊下でニヤつきながら俺を指さす芸能科の三人組に、
俺はずかずかと歩み寄る。
『朝からくだらない噂を流してるのはお前らか!!
俺のことは好き勝手噂すればいいが
てめぇらのくだらなちっぽけな嫉妬心で
璃羅の生活を汚してんじゃねぇよ!!』
俺の怒鳴り声に、廊下の空気が一瞬で凍りついた。
「お前らこそこそ歩いてたの、見た奴いるんだぜ?」
「アイドルに手ぇ出すとか、
どう考えてもおかしいだろ」
芸能科の三人組は顔を引きつらせながらも、
強がったように笑う顔にムカついて
俺は胸ぐらを掴み、ぐっと壁に押しつけた。
ごつん、と乾いた音が響き、
周囲の視線がさらに集まる。
『……おかしいのはテメェらの頭だろ。
見たって証拠あんのか? 抱き合った?
手繋いだ?
それ、全部テメェらの妄想じゃねぇか。』
言葉の刃を突きつけると、奴らの顔が青ざめる。
だが一人が負けじと口を開いた。
「お、俺たちだけじゃねぇ! 俺たちは
少し便乗しただけで、噂広めたのは──」
そこまで言った瞬間、残りの二人が慌てて口を塞いだ。
「バカッ! 余計なこと言うな!」
「……っ、ち、ちげぇよ。
とにかく俺らだけのせいじゃねぇ!」
だが、もう遅ぇ。
一瞬漏れた言葉で十分だ。
背後でざわめく生徒たち。
俺は胸ぐらを放り捨て、奴らを睨みつける。
『……便乗? じゃあ最初に流した奴は
別にいるってわけだな』
三人組は答えない。
ただ目を逸らし、汗を浮かべている。
──黒幕がいる。
しかもこいつらがビビるほどの存在。
芸能科の権力者か、それとも……。
一人だけ顔がよぎった。
璃羅の母親であり、マネージャー。
“アイドルの煮雪璃羅”以外を許さない女。
……まさか、とは思う。
けど、あり得ない話じゃねぇ。
娘のイメージを守るために、
俺を悪役に仕立てるのは手っ取り早い方法だ。
歯を食いしばり、こみ上げる苛立ちを押さえ込む。
『信じてやるよ。だが、今度、くだらねぇ噂に
便乗したらぶっ飛ばすからな、
それから、昨日のことだが、
璃羅を家の途中まで送って行っただけで
抱き合うどころか手も繋いでねぇよ』
三人組は押し黙ったまま、
唇を噛んで視線を逸らした。
逃げるようにその場を離れていく背中に、
周囲の野次馬たちもざわめきながら道を開ける。
「……マジかよ、本当に送っただけ……?」
「でも、あいつらの顔……
嘘ついてるようには見えなかったな」
ひそひそ声が流れる。
さっきまでの好奇と悪意に満ちた視線が、
少しだけ色を変えていくのを感じた。
俺は深く息を吐き、
拳を握りしめたまま言葉を吐き捨てる。
『くだらねぇ。噂なんざ信じたい奴だけ勝手に信じてろ。
……だが、璃羅を傷つける言葉は絶対に許さねぇ』
静まり返った廊下に、俺の声だけが響いた。
その時、背後から小さな足音。
振り返ると、キャップを目深にかぶった
璃羅が立っていた。
『……真人くん……』
震える声。
けれど、その目は真っ直ぐ俺を見ていた。
『ありがとう。……私のこと、守ってくれて』
小さな声だったが、周囲にいた生徒たちの耳にははっきり届いた。
彼女の言葉に、さらにざわめきが広がる。
俺は璃羅を見て、ほんの少しだけ笑った。
『当たり前だろ。……俺は、お前の味方だからな』
璃羅の肩がかすかに震え、ほっとしたように息をついた。
だがその奥には、まだ拭えぬ影がある。
黒幕の存在。
この噂は、ただの生徒の悪ふざけなんかじゃねぇ。
──必ず突き止めてやる。
俺は強く心に誓った。
そしてこの瞬間、
「糯田真人は煮雪璃羅のために怒った」
という事実が、新しい“噂”として学校中に
広まっていくことになるのだった。
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