4 / 15
3
しおりを挟む
社会人になってから一人暮らしを始めた慎太郎さんは、我が家にやってくることはほとんどなくなった。
それでも、月に何度かは一緒に食事をする。俺から誘うときもあるし、慎太郎さんが誘ってくれるときもある。忙しい仕事の合間を縫って時間を作ってくれるのはとても嬉しい。
「またシンと夕飯か?」
俺が母さんに明日の夕飯はいらないと告げると、龍之介がニヤニヤと俺を見た。電車で十分の会社に就職した龍之介はまだ実家暮らしだ。
ちなみに俺は電車で一時間近く掛けて会社に通っているが、オメガの一人暮らしは危ないので推奨されない。
「そうだよ。慎之介さんとご飯」
「本当に付き合ってないの?」
「付き合ってないってば!」
本当に付き合っていたらどんなにいいか。友達以上恋人未満のような関係がもう何年も続いている。
俺は小さいころから「慎太郎さんが好き」「大きくなったら慎太郎さんと結婚する」「俺と慎太郎さんは運命に違いない」などと騒いでいたから今更告白するのも変な話だし、付き合いたいというようなことをほのめかしても曖昧に躱されてしまう。
以前龍之介が慎太郎さんに「瞬のことをどう思っているのか」と尋ねているところを盗み聞きしてしまったが、「弟みたいな存在」と言われてしまった。
両親も龍之介も応援してくれているのだが、慎太郎さんにその気が無いのならどうしようもない。
思わずため息をつく俺に龍之介が慌てたようにフォローを入れる。
「シンはキープとかするタイプじゃないから大丈夫だよ。それに俺には瞬のこと好きなように見えるけどな。きっと関係を進める勇気が無いだけで。アイツ意外とヘタレだからさ」
「ヘタレ......?」
そんな風には見えない。慎太郎さんはいつも優しくて強い。龍之介にだけ弱みを見せているのだとしたら、なんだか悔しい。
「ま、アイツは色々グダグダ考えるタイプだからさ。気長に待ってやりなよ。お前から押しても全然なんだろ?」
「全然言うな。事実だけど」
「もしアイツがお前を泣かせたりしたら、お兄ちゃんが成敗してやるから」
調子のいい感じで龍之介が笑う。ジトっと睨むと「押してダメなら引いてみろ、とも言うけどな」と付け足した。
押してダメなら引いてみろ。
ずっと以前から言われている恋愛のテクニックだが、俺はそういうのは苦手だ。何度かやってみたことはあるけど、いつも失敗に終わる。
でも正面から行っても全然上手くいかないし、何か良い手は無いものか。
部屋に積み重なったオメガ向けの恋愛指南書を思い出して再び溜息をついた。
それでも、月に何度かは一緒に食事をする。俺から誘うときもあるし、慎太郎さんが誘ってくれるときもある。忙しい仕事の合間を縫って時間を作ってくれるのはとても嬉しい。
「またシンと夕飯か?」
俺が母さんに明日の夕飯はいらないと告げると、龍之介がニヤニヤと俺を見た。電車で十分の会社に就職した龍之介はまだ実家暮らしだ。
ちなみに俺は電車で一時間近く掛けて会社に通っているが、オメガの一人暮らしは危ないので推奨されない。
「そうだよ。慎之介さんとご飯」
「本当に付き合ってないの?」
「付き合ってないってば!」
本当に付き合っていたらどんなにいいか。友達以上恋人未満のような関係がもう何年も続いている。
俺は小さいころから「慎太郎さんが好き」「大きくなったら慎太郎さんと結婚する」「俺と慎太郎さんは運命に違いない」などと騒いでいたから今更告白するのも変な話だし、付き合いたいというようなことをほのめかしても曖昧に躱されてしまう。
以前龍之介が慎太郎さんに「瞬のことをどう思っているのか」と尋ねているところを盗み聞きしてしまったが、「弟みたいな存在」と言われてしまった。
両親も龍之介も応援してくれているのだが、慎太郎さんにその気が無いのならどうしようもない。
思わずため息をつく俺に龍之介が慌てたようにフォローを入れる。
「シンはキープとかするタイプじゃないから大丈夫だよ。それに俺には瞬のこと好きなように見えるけどな。きっと関係を進める勇気が無いだけで。アイツ意外とヘタレだからさ」
「ヘタレ......?」
そんな風には見えない。慎太郎さんはいつも優しくて強い。龍之介にだけ弱みを見せているのだとしたら、なんだか悔しい。
「ま、アイツは色々グダグダ考えるタイプだからさ。気長に待ってやりなよ。お前から押しても全然なんだろ?」
「全然言うな。事実だけど」
「もしアイツがお前を泣かせたりしたら、お兄ちゃんが成敗してやるから」
調子のいい感じで龍之介が笑う。ジトっと睨むと「押してダメなら引いてみろ、とも言うけどな」と付け足した。
押してダメなら引いてみろ。
ずっと以前から言われている恋愛のテクニックだが、俺はそういうのは苦手だ。何度かやってみたことはあるけど、いつも失敗に終わる。
でも正面から行っても全然上手くいかないし、何か良い手は無いものか。
部屋に積み重なったオメガ向けの恋愛指南書を思い出して再び溜息をついた。
4
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
ずっと、貴方が欲しかったんだ
一ノ瀬麻紀
BL
高校時代の事故をきっかけに、地元を離れていた悠生。
10年ぶりに戻った街で、結婚を控えた彼の前に現れたのは、かつての幼馴染の弟だった。
✤
後天性オメガバース作品です。
ビッチング描写はありません。
ツイノベで書いたものを改稿しました。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年。
かつて自分を救った玲に再会した静は玲に対して同じ苦しみを味合わせようとする。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる