この恋が運命じゃなくても

星川過世

文字の大きさ
5 / 15

4

しおりを挟む
 「こんばんは、慎太郎さん」
 仕事終わり。慎太郎さんが会社の入り口まで迎えに来てくれた。同僚が冷やかすような声を上げてから去って行く。
 今日行くのは和食屋さんだ。リーズナブルで美味しく、俺と慎太郎さんのお気に入りの店。

 俺は和風ハンバーグ、慎太郎さんはさばの味噌煮を食べながら談笑する。この時間が、たまらなく好きだ。
 仕事の疲れがみるみる癒えていく。
 でもただ楽しんでるだけじゃ駄目だ。
 「慎太郎さん、結婚とかはまだ考えていないんですか?」
 「え、ああ......。親からせっつかれてはいるんだけど、ね」
 一気に表情が暗くなる。不味い、やらかした。
 「お見合いとかも言われてるんだけど......」
 「お見合い!?」
 思わず大きな声を出した俺に店中の視線が集まる。慌てて居住まいを正した。
 「受けるんですか?」
 「いや、正直......結婚も恋愛もできることなら先延ばしにしたくて」
 お見合いはとりあえず受けなさそうなのでひとまず安心だが、恋愛をする気が無いというのは俺にとって嬉しくない情報だった。
 「瞬は?」
 「え、俺?」
 ここは何か気を引けそうな返しがしたいところだ。
 「龍之介はかなり結婚を急かされているので......次は俺かな」
 が、嘘を吐いたり芝居を打ってもどうせ下手すぎてすぐばれるので、結局正直に答える。
 「そうか。将来的に見合いとか受ける気はあるのか? それとも恋愛結婚がいい?」
 「どうでしょう。そのときになってみないと。......慎太郎さんが結婚してくれれば一番いいんですけど」
 冗談めかして言うと、笑って流された。本当は真剣に言うべきなんだろうけど、好きでもない相手からしつこく言い寄られたら誰だって嫌だろう。
 龍之介はああ言ってたけど、やっぱり慎太郎さんが俺を恋愛対象にしてくれている気はしない。多少言い寄っても邪険にしないでくれるのは、気があるからというより本気にしていないからな気がする。

 「ごちそうさまでした」
 「ごちそうさま。......薬、ちゃんと飲めよ」
 「忘れませんよ。何年飲んでると思ってるんですか」
 ヒートの抑制剤は毎日飲まなくてはいけない。ちょっと面倒だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

ずっと、貴方が欲しかったんだ

一ノ瀬麻紀
BL
高校時代の事故をきっかけに、地元を離れていた悠生。 10年ぶりに戻った街で、結婚を控えた彼の前に現れたのは、かつての幼馴染の弟だった。 ✤ 後天性オメガバース作品です。 ビッチング描写はありません。 ツイノベで書いたものを改稿しました。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年。 かつて自分を救った玲に再会した静は玲に対して同じ苦しみを味合わせようとする。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

処理中です...