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ーsideレアーノ
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奈落の底に落ちるまでに、そう時間は掛からなかった。
アリシアを追い出してから約三ヶ月。こんな短期間に、モルア家は様々な困難に見舞われた。それが解決する見込みもない。
そしてその原因は全て私にあると、罵倒される日々を過ごしている。
ことの発端は、参加したパーティーでのこと。
私は絶対に極上のアルファを捕まえて、婚約まで漕ぎ着けたいと意気込んでいた。
それなのに、誰一人と話しかけてもくれない。
私が太っているから? 顔立ちが地味だから?
でも、私よりも太い女性だって、誰かしらから声をかけられている。
あの人よりは私のほうがまだ綺麗じゃない。
向こうにいる人だって、それほど綺麗な顔ってわけでもない。
ドレスだって地味だわ……。
私は次第にイライラしてきた。
どんなに会場を歩き回っても、目を逸されている気さえする。
どういうことなのか全く分からない!!
「君、パーティーに来てその顔はないんじゃない?」
突然、一人の男性に声をかけられた。
パッと見上げると、とっても凛々しい方だった。
一目惚れしてしまいそうだけど、突然話しかけて来て、その人はいきなり説教をし始めたのだ。
「みんなが楽しんでいる場で、そんなふうにしかめっ面をしていたら、他の人が困ってしまうよ」
「そんな!! あなたこそ、いきなり話しかけてきて失礼じゃありません? そんなに言うなら、私を楽しませて下さればいいだけの話ですわ」
「あなたと言う女性は……自分が楽しめないのが他人の所為だとおっしゃるのですか?」
男性は呆れた表情を浮かべている。
当たり前じゃないか。パーティー会場で女性が一人でいるのに、声をかけないほうが失礼だ。
そう告げると、さらに男性は呆然とした。
「なら、あなたが声を掛けたくなるように振る舞うべきだ。誰も君と喋りたいなんて思わない」
「ではなぜ、あなたは私に声を掛けたのです?」
「話を聞いてみて、帰っていただくかどうかを判断しようと思ってね」
「なんですって!?」
私の見た目がそんなに気に入らないというの?
アリシアなら? そんなことを言った?
結局、みんな見た目で判断しているとい証ね。それをこの男性が証明したようなものだわ。
そんなふうに伝えたのは、半ば意地みたいなものだった。
いきなり説教されて、女性だからって、見た目が綺麗じゃないからって、オメガでもないのにバカにされている気分だった。
だからちょっと言い返しただけなのに……。
「ここにいる男性が、見た目だけで女性を判断しているとでも言いたいのかい?」
「そうに決まっていますわ。だから私を避けているのでしょう? 他にどんな理由があるのですか?」
「あなたに誰も声を掛けないのは、心が顔に出ているからですよ」
「どういう……ことですの?」
「眉根に皺を寄せて、しかめっ面で男性を品定めし、他の女性と自身を比べているのが、全て顔に出ていると言っているんです。違っていますか?」
そこまでハッキリと言い当てられ、ハッとした。
確かに、私はそんなふうに周りを見ていた。
でも私の目的は婚約者を探すこと。そのくらい真剣に見るのが、そんなにいけないことかしら。
男性は続けて言った。
「見た目で判断しているのは、あなただと言っているんです。ここは交流を楽しむ場です。それを邪魔するなら出て行ってくれ。あなたには呆れてこれ以上話すこともない。さぁ!! 帰ってくれたまえ」
「はぁ? なんの権限であなたが私を追い出すのです? ちょっと! やめてください!!」
近くにいたスタッフに両脇を抱えられ、会場から放り出された。
その後、『レアーノ・モルア。今後一切のパーティー参加を禁止する』とまで通達されてしまった。
それを見たお父様は大激怒、当日の話をすると、あの男性がどうやら主催者である公爵家嫡男だったようなのだ。しかもお父様と仕事で繋がりがあったらしく、それで私を特別に招待してくれていたそうだ。
その後、お父様は仕事の契約を切られてしまった。
そして怒りを露わにして私を怒鳴りつけた。
「お前というやつは!! 公爵家に楯突くなど、世間知らずにも程がある!!」
私はただ、素敵な男性を捕まえてお父様を喜ばせたかっただけなのに。
アリシアよりも有能だと証明したかった。
アルファの私がモルア家に相応しいと。
「アリシアよりも、お前を追放するべきだった!!」
「そんな!! あまりにも酷すぎるお言葉です。お父様!!」
「五月蝿い!! もう、顔も見せるな!!」
そう言い捨てると、部屋を出て行ってしまった。
アリシアがいなくなってから、家の中は凍りついている。
こんなの、あいつがモルア家の女神だったみたいじゃない。
オメガの女神? そんなの、存在する訳ない。
お父様だって、アリシアがいるときは腫れ物のように扱っていた。
それなのに、今さらそんなこと言うなんて酷すぎる。
ストレス発散に、私は家中の食べ物を漁って食べた。
どんなに食べても食べても怒りが治まらない。
その姿を目の当たりにしたお父様が、呆れ返ってついに私をモルア家から追い出したのだった……。
アリシアを追い出してから約三ヶ月。こんな短期間に、モルア家は様々な困難に見舞われた。それが解決する見込みもない。
そしてその原因は全て私にあると、罵倒される日々を過ごしている。
ことの発端は、参加したパーティーでのこと。
私は絶対に極上のアルファを捕まえて、婚約まで漕ぎ着けたいと意気込んでいた。
それなのに、誰一人と話しかけてもくれない。
私が太っているから? 顔立ちが地味だから?
でも、私よりも太い女性だって、誰かしらから声をかけられている。
あの人よりは私のほうがまだ綺麗じゃない。
向こうにいる人だって、それほど綺麗な顔ってわけでもない。
ドレスだって地味だわ……。
私は次第にイライラしてきた。
どんなに会場を歩き回っても、目を逸されている気さえする。
どういうことなのか全く分からない!!
「君、パーティーに来てその顔はないんじゃない?」
突然、一人の男性に声をかけられた。
パッと見上げると、とっても凛々しい方だった。
一目惚れしてしまいそうだけど、突然話しかけて来て、その人はいきなり説教をし始めたのだ。
「みんなが楽しんでいる場で、そんなふうにしかめっ面をしていたら、他の人が困ってしまうよ」
「そんな!! あなたこそ、いきなり話しかけてきて失礼じゃありません? そんなに言うなら、私を楽しませて下さればいいだけの話ですわ」
「あなたと言う女性は……自分が楽しめないのが他人の所為だとおっしゃるのですか?」
男性は呆れた表情を浮かべている。
当たり前じゃないか。パーティー会場で女性が一人でいるのに、声をかけないほうが失礼だ。
そう告げると、さらに男性は呆然とした。
「なら、あなたが声を掛けたくなるように振る舞うべきだ。誰も君と喋りたいなんて思わない」
「ではなぜ、あなたは私に声を掛けたのです?」
「話を聞いてみて、帰っていただくかどうかを判断しようと思ってね」
「なんですって!?」
私の見た目がそんなに気に入らないというの?
アリシアなら? そんなことを言った?
結局、みんな見た目で判断しているとい証ね。それをこの男性が証明したようなものだわ。
そんなふうに伝えたのは、半ば意地みたいなものだった。
いきなり説教されて、女性だからって、見た目が綺麗じゃないからって、オメガでもないのにバカにされている気分だった。
だからちょっと言い返しただけなのに……。
「ここにいる男性が、見た目だけで女性を判断しているとでも言いたいのかい?」
「そうに決まっていますわ。だから私を避けているのでしょう? 他にどんな理由があるのですか?」
「あなたに誰も声を掛けないのは、心が顔に出ているからですよ」
「どういう……ことですの?」
「眉根に皺を寄せて、しかめっ面で男性を品定めし、他の女性と自身を比べているのが、全て顔に出ていると言っているんです。違っていますか?」
そこまでハッキリと言い当てられ、ハッとした。
確かに、私はそんなふうに周りを見ていた。
でも私の目的は婚約者を探すこと。そのくらい真剣に見るのが、そんなにいけないことかしら。
男性は続けて言った。
「見た目で判断しているのは、あなただと言っているんです。ここは交流を楽しむ場です。それを邪魔するなら出て行ってくれ。あなたには呆れてこれ以上話すこともない。さぁ!! 帰ってくれたまえ」
「はぁ? なんの権限であなたが私を追い出すのです? ちょっと! やめてください!!」
近くにいたスタッフに両脇を抱えられ、会場から放り出された。
その後、『レアーノ・モルア。今後一切のパーティー参加を禁止する』とまで通達されてしまった。
それを見たお父様は大激怒、当日の話をすると、あの男性がどうやら主催者である公爵家嫡男だったようなのだ。しかもお父様と仕事で繋がりがあったらしく、それで私を特別に招待してくれていたそうだ。
その後、お父様は仕事の契約を切られてしまった。
そして怒りを露わにして私を怒鳴りつけた。
「お前というやつは!! 公爵家に楯突くなど、世間知らずにも程がある!!」
私はただ、素敵な男性を捕まえてお父様を喜ばせたかっただけなのに。
アリシアよりも有能だと証明したかった。
アルファの私がモルア家に相応しいと。
「アリシアよりも、お前を追放するべきだった!!」
「そんな!! あまりにも酷すぎるお言葉です。お父様!!」
「五月蝿い!! もう、顔も見せるな!!」
そう言い捨てると、部屋を出て行ってしまった。
アリシアがいなくなってから、家の中は凍りついている。
こんなの、あいつがモルア家の女神だったみたいじゃない。
オメガの女神? そんなの、存在する訳ない。
お父様だって、アリシアがいるときは腫れ物のように扱っていた。
それなのに、今さらそんなこと言うなんて酷すぎる。
ストレス発散に、私は家中の食べ物を漁って食べた。
どんなに食べても食べても怒りが治まらない。
その姿を目の当たりにしたお父様が、呆れ返ってついに私をモルア家から追い出したのだった……。
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