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本編

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 ジェイクは準備を進めながら、一通りの業務を教えてくれた。

 説明は分かりやすく、これならなんとか俺でもこなせるんじゃないかと思ってしまう。まあ、パーティーが始まってしまえばジェイクにも頼れないから不安は拭えないけど。

「分からないことがあれば、いつでも声をかけてくれ」

 ニッと笑うジェイクの白い歯が爽やかを強調させていた。

 パーティー前、従業員は一斉に食事を摂る。

「マヒロ、パーティーが始まれば水分補給もまともにできないと心得ていたほうがいい。食事は無理矢理でも胃にねじ込めるだけ、ねじ込んでおくように」

「え? そんなに?」

 ジェイクは冗談で言っているのかと思ったが、周りを見渡すと誰もが必死な顔をして、殆ど雑談もせず食べることに集中していた。

 パーティー会場はどんな忙しさなんだろう。

 確かに厨房も毎日すっっっごく忙しい。皿は洗っても洗っても減らない。パニックになった料理人が皿を割るのも日常茶飯事だ。その掃除だって俺ともう一人の下っ端で片付けている。

 厨房に比べれば、ホールなんて……と、気楽に構えていた。忙しいと言っても、料理を運んで下げて……。そのくらいなら、誰でもできるんじゃないか……なんて少し思ってしまった。


 俺は元々少食で、転生してからも食は細いほうだ。周りの人たちががっついて食べているのを見ただけで腹がいっぱいになって
しまう。

 ジェイクに横から促されて、なんとか盛られた分だけは食べきった。

「今日は特に大変だ、リアム騎士団長が参加されると言っていただろう?」

「ああ確かになんか言ってたな。それって誰? 有名人?」

「君、リアム騎士団長を知らないの?」

 ジェイクが目をまん丸にして驚いて見せた。そんな有名な人なんだ……くらいの反応しか返せないけど。

「いい? 街中の女性がリアム騎士団長と結婚したがっていると言っても過言ではない。しかもリアム様は滅多にパーティーには参加されない。そんな人が来ると情報が流れた瞬間から、受付に女性が溢れかえったんだぞ?」

「そんなに?? どんな人かすごく気になるね、それは」

「女性の間ではスーパーα様なんて呼ばれてる。そうだ、気をつけて欲しいんだけど、リアム様がお越しになると、ワザと発情してくる女性がいるんだ。その人を見極めて退場させなければいけない。これはホール係の最も重要な仕事なんだよ」

「わざわざΩの女性が発情してくるの!?」

 ビックリしすぎて、声を荒げてしまった。周りから一斉に視線を集めてしまい、ごめん……と小声で謝った。

「どんな手段を使っても、リアム様に抱いてもらおうって女性は珍しくなくいるよ。特にΩってフェロモン出せるでしょ? そのためにわざわざ誘発剤を打ってくるんだ」

「……考えられない」

 俺もΩだが、そこまでして誰かに抱かれたいなんて気持ちは理解し難い。

「まあ、聞いても無駄だとは思うけど、マヒロはβだよね?」

 念のため……なんて言いながらジェイクが尋ねた。
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