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本編

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「俺? そ、そうだよ。βに決まってるじゃん。ここの従業員はみんなβでしょ?」

「そうだよ。たまにね、嘘をついてΩの人もいるから。前に大変だったことがあるんだ。パーティー客のαに発情してしまって、すごい騒ぎになった」

 お茶を飲みながらジェイクが耳打ちで教えてくれた。

「そう、なんだ……。今日は大丈夫なんじゃない?」

 そう言いながらも背中に冷や汗をかいていた。バース性を聞いたジェイクの瞳がギラついているように感じた。

(気のせいだ。ジェイクはいい奴だ)

 なんとか話を逸らさないと、問い詰められれば俺も長く嘘を突き通すのは苦手なのだ。

「ねぇ、従業員が全員βなのに、発情したΩのフェロモンなんてどうやって感じるの?」

 質問したのは単純な気持ちからだ。αがフェロモンに当てられる前に退場させないと、それこそ大変な事態になる。

 しかも今日はそのリアム様って人が来るんだ。

 俺はΩとはいえ、転生してからは発情をしたことがない。

 周りにαがいないからなのか……?

 それに、この世界で発情したΩを目の当たりにしたこともなかった。

「マヒロ、君はなかなか良いところに気がつくね」

 突然褒められてもよく分からない。なぜ? と尋ねてみると、実は……とまた耳打ちで教えてくれた。

「実はホールの従業員の中に数名のαが紛れている。そのαの指示でβの従業員が動くんだ」

「なるほど!」

 なかなかいいアイデアだと、逆に俺からも褒め返しておく。するとジェイクが一言付け加えた。

「俺も、そのαの一人なんだ」

 やっぱり! という気持ちの方が大きかったが、単純に驚いたとだけ言ったおいた。

 目がバッチリと合い、謎に頷き合う。

「じゃあ、ジェイクが合図を送ったらその女性を連れ出せばいいんだね」

「そうだ、頼んだよ」

 そろそろ行こう。と促され、ジェイクと共に会場へと戻る。

 料理を運び込みながら、ジェイクを横目で見ていた。

(やっぱ、見た目からしてαだもんな。でも、俺はなんでαがずっと隣にいても発情しないんだろう。転生して、バース性も変わったのかもしれないな。本当にβになってたりして)

 ぼんやりと考えながら、着々とパーティーの準備は進んでいく。

 忙しいのには慣れているので、即戦力と呼んでもらえるくらいには動けていると自負している。

 会場に一組目の騎士団員が到着し、会場に入ってきた。

 すかさずドリンクを届ける。

「お、気が効くね」

 なんて褒められれば俺も悪い気はしない。

「っていうか、かわいい顔してるじゃないか。仕事の後、食事でもいかが?」

 一人の騎士団員にいきなり口説かれた。

 童顔な顔立ちの上、セミロングの髪を一つに結っている。

 まあ、自分で言うのもなんだけど、女に見えなくもない。

「は? ……あっ……。申し訳、ございません? わたくしは……えっと……男で、ございます?」

「あははっ!! 面白い敬語を使う子だ!!」

「なぜ全て質問形式なのだ」

 騎士団員の人たちに大笑いをされてしまった。

 褒められた次の瞬間、墓穴を掘った。敬語など使ったことない。

 厨房でいる時なんて「はい」という返事しか発しない。

 今夜はなるべく喋らないに徹しようと、顔を真っ赤に染めて騎士団員の元を離れた。



⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


過去作にもオメガバース作品があります。

『転生したら淫紋が刻まれていたΩの俺~運命の番は闇堕ち王子~』

『家族に虐げられた高雅な銀狼Ωと慈愛に満ちた優美なαが出会い愛を知る』

こちらも是非お楽しみ下さい。
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