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本編
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お茶会当日はあっという間にやってきた。
朝から召使いたちが慌ただしく動き回っている。天気がいいからガーデンでお茶会を行うとのことで屋敷とガーデンを走り回っている。
本来なら、俺もあの人たちと共に準備をする側の人間なのにな。
こんなに優雅に過ごしているのも、そのうち慣れるのだろうか……。
困ったことに、俺の仕立ててもらっている服がまだ仕上がっていない。
全て手作業な上、刺繍やフリルなどの細かい装飾にまで拘ってオーダーしていた。それが時間がかかっている要因だった。
特に心待ちにしていたブラウスがある。
柔らかいシャンパンゴールドの生地に、スタンドカラーの部分には同色のレースがあしらわれている。ふんわりとしたシルエットは俺の華奢すぎる体型をカバーしてくれそうだ。
そして、幅広くとられた袖口の三つボタンはゆったりとした袖をキュっと手首で引き締め、作業の邪魔にならない仕様だ。
一番こだわったのは背中の刺繍。丁度、肩甲骨を跨ぐように『愛死天流』と、同じシャンパンゴールドの糸で入れてもらうのだ。
これには仕立て屋も興味津々であった。「こんな刺繍は初めて見ました」と、俺が書いた図案に見入っていた。
前世から刺繍の入った服に憧れがあった。でも目立つのは恥ずかしいから、生地と同色の糸でさりげなさを演出してもらうことにした。
エリア様も、俺のデザインしたブラウスを楽しみにしてくれていたし、本当は今日着てお披露目したかった。
仕方なく、一番シンプルなオフホワイトのシャツに、黒の細身のパンツ、皮の編み上げのコルセットをウエストに装着するという衣装でお茶会に参加することになったのだ。
前世なら七五三と言われかねない出立ちではあるが仕方ない。
エリア様は、俺が何を着ていても褒めてくれる。もうそれだけで満足だ。
どうしても仕事でお茶会に遅れると言って、エリア様は朝早くからいなかった。俺はアンジュさんとガーデンのガゼボで待ち合わせをしている。
孫にも衣装な服装で、ガーデンへと向かった。
「アンジュさん! ステキなドレスだね!」
「本当に? ありがとう! リアム様が今日のために誂えてくださったのよ」
嬉しそうに立ち上がると、ふんわりと足首まである淡いクリーム色のシフォンのドレスでくるりと回って見せてくれた。
上半身のレースもシンプルながらにもスリムなアンジュさんのスタイルを強調させるようにピッタリとしたシルエットになっている。
リアム様はアンジュさんの見せ方を熟知している。本当に素敵な関係だと思った。
「リアム様は、まだ来てないの?」
「そうなの。ラミレス公爵と話があるって言っていたわ」
さりげなく俺の分のお茶を淹れてくれながら話した。
お茶会が始まるまでは、二人でここでお喋りをして過ごそうということになり、会場を眺めながらのんびりと過ごしていた。
「まあ! なんて地味な方かしら……と思えばアンジュ様でしたのね!」
突然目の前にド派手なドレスを着た女が現れた。大袈裟なほど大きな声が耳障りで、嫌でもそちらに視線を移さなければならない。
『いかにも金持ちです』と視覚的にアピールしているその女は、背後に三人の子分のような奴を引き連れていた。
今日の主役はアンジュさんなのに、主役よりも目立つような原色の真っ青ドレスを、着ている。しかもラメ入りだ。
俺はこの人が、エリア様たちが嫌がっているベイリー・キャンベル侯爵令嬢だと、直ぐに察した。
朝から召使いたちが慌ただしく動き回っている。天気がいいからガーデンでお茶会を行うとのことで屋敷とガーデンを走り回っている。
本来なら、俺もあの人たちと共に準備をする側の人間なのにな。
こんなに優雅に過ごしているのも、そのうち慣れるのだろうか……。
困ったことに、俺の仕立ててもらっている服がまだ仕上がっていない。
全て手作業な上、刺繍やフリルなどの細かい装飾にまで拘ってオーダーしていた。それが時間がかかっている要因だった。
特に心待ちにしていたブラウスがある。
柔らかいシャンパンゴールドの生地に、スタンドカラーの部分には同色のレースがあしらわれている。ふんわりとしたシルエットは俺の華奢すぎる体型をカバーしてくれそうだ。
そして、幅広くとられた袖口の三つボタンはゆったりとした袖をキュっと手首で引き締め、作業の邪魔にならない仕様だ。
一番こだわったのは背中の刺繍。丁度、肩甲骨を跨ぐように『愛死天流』と、同じシャンパンゴールドの糸で入れてもらうのだ。
これには仕立て屋も興味津々であった。「こんな刺繍は初めて見ました」と、俺が書いた図案に見入っていた。
前世から刺繍の入った服に憧れがあった。でも目立つのは恥ずかしいから、生地と同色の糸でさりげなさを演出してもらうことにした。
エリア様も、俺のデザインしたブラウスを楽しみにしてくれていたし、本当は今日着てお披露目したかった。
仕方なく、一番シンプルなオフホワイトのシャツに、黒の細身のパンツ、皮の編み上げのコルセットをウエストに装着するという衣装でお茶会に参加することになったのだ。
前世なら七五三と言われかねない出立ちではあるが仕方ない。
エリア様は、俺が何を着ていても褒めてくれる。もうそれだけで満足だ。
どうしても仕事でお茶会に遅れると言って、エリア様は朝早くからいなかった。俺はアンジュさんとガーデンのガゼボで待ち合わせをしている。
孫にも衣装な服装で、ガーデンへと向かった。
「アンジュさん! ステキなドレスだね!」
「本当に? ありがとう! リアム様が今日のために誂えてくださったのよ」
嬉しそうに立ち上がると、ふんわりと足首まである淡いクリーム色のシフォンのドレスでくるりと回って見せてくれた。
上半身のレースもシンプルながらにもスリムなアンジュさんのスタイルを強調させるようにピッタリとしたシルエットになっている。
リアム様はアンジュさんの見せ方を熟知している。本当に素敵な関係だと思った。
「リアム様は、まだ来てないの?」
「そうなの。ラミレス公爵と話があるって言っていたわ」
さりげなく俺の分のお茶を淹れてくれながら話した。
お茶会が始まるまでは、二人でここでお喋りをして過ごそうということになり、会場を眺めながらのんびりと過ごしていた。
「まあ! なんて地味な方かしら……と思えばアンジュ様でしたのね!」
突然目の前にド派手なドレスを着た女が現れた。大袈裟なほど大きな声が耳障りで、嫌でもそちらに視線を移さなければならない。
『いかにも金持ちです』と視覚的にアピールしているその女は、背後に三人の子分のような奴を引き連れていた。
今日の主役はアンジュさんなのに、主役よりも目立つような原色の真っ青ドレスを、着ている。しかもラメ入りだ。
俺はこの人が、エリア様たちが嫌がっているベイリー・キャンベル侯爵令嬢だと、直ぐに察した。
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