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本編
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お茶会が始まってもエリア様は帰ってきていない。
婚約発表はエリア様が到着してからということにして、集まった人たちで和やかな時間を共有する。
リアム様の隣で微笑ましそうにしているアンジュさん。
二人は何事もなく幸せなのかと思っていた。それなのに、アンジュさんはベイリーから陰で嫌がらせを受けている。
もしこのまま結婚すればどんな仕打ちをするつもりなのだろう。
アンジュさんがいなければ、自分が選ばれるとでも思っているのか、あの女。
取り巻きたちと恨めしそうに離れた場所からアンジュさんを睨んでいる。
もしかして、まだ何か企んでいるのかもしれない。
(その時は、俺が止めなきゃ……)
「マヒロさん、そんな怖い顔してどうかした?」
「リアム様! いえ、なんでもありません……。まだ挨拶へ回ってるのでしょう? 俺に構わず、行ってくだされ」
挨拶をして回っている二人が俺にも声を掛けてくれたが、タイミングが悪かった。
お祝いの席なのについベイリーを睨みつけてしまっていた。
エリア様が帰ってくるまでは、大人しくしておかなくちゃ。
俺は一人で会場から離れ、またガゼボに戻った。
ここからならベイリーたちの行動も監視できる。
とはいえ、リアム様が一緒にいる間はあいつらも近寄れないよな。
持ってきたオレンジジュースを飲みながら、ガーデンの花を眺めていた。
エリア様の言っていた、イランイランの花はここのガーデンにもあるのだろうか……。自分では匂えないフェロモンがどんな感じなのか、確かめてみたい。
ジュースを飲み終わると、いろんな花の香りを嗅いで回った。
どの花もいい香りがする。
「これなんかは少し甘い香り気がするなぁ」
白い花に手を伸ばす。
「こんなところで何をやっているのかしら?」
突然、背後から声を掛けられた。
急いで振り返る。
「ベイリー……さん……?」
なぜかベイリーが一人でガーデンまで来ていた。取り巻きはいない。
そして名前を呼んだ途端、猛烈に怒鳴り始めた。
「ベイリーって……! 何故あんたみたいなガキに馴れ馴れしく呼ばれなくちゃいけないのよ!! 馬鹿にしているの?」
「は? 別に呼び方なんてどうだっていいだろ。それに、俺はタチバナマヒロって名前があるんだ。マヒロって呼んでいいぜ」
怒りを抑えようと、敢えて明るく振る舞った。
しかし、それがベイリーをさらに怒らせてしまったらしい。
顔を真っ赤にして『さあ、今から怒鳴るぞ!!』という姿勢になっていく。
両手で拳を作り、全身がわなわなと震えている。
「私を誰だと思っているの!! 私は侯爵家の人間よ? あんたみたいな下民が気安く名前を呼べる立場じゃないのよ!!」
耳がキーーンと痛くなって、耳を塞いだ。
なんだってんだ、いきなり話しかけてきたのはそっちだろうと言いたくなる。
でもさっきのアンジュさんを思い出し、なんとか怒鳴り返すのを耐えた。
「あの、俺に用があって来たんじゃないの?」
こんな女に敬語を使う義理もない。どうせなにを言っても怒鳴るんだ。
俺がラフに喋るのが気に入らないベイリーはそのことで一息怒っていたが、気が済んだのか、諦めたのか、ようやく本題に入った。
「あなた、このラミレス邸に住んでらっしゃるの?」
「まあ、そうだけど……」
「見ない顔ですが、いつこちらへ?」
「つい最近だけど……。何か問題でも?」
俺が喋るたびに眉をピクリと動かす。そのうちまた怒鳴るかもしれない。
でもそうではなかった。ベイリーは悪巧みをしていたのだ。
「私とエリア様が婚約できるように、手を貸してくれないかしら?」
ベイリーが不敵な笑みを浮かべた。
婚約発表はエリア様が到着してからということにして、集まった人たちで和やかな時間を共有する。
リアム様の隣で微笑ましそうにしているアンジュさん。
二人は何事もなく幸せなのかと思っていた。それなのに、アンジュさんはベイリーから陰で嫌がらせを受けている。
もしこのまま結婚すればどんな仕打ちをするつもりなのだろう。
アンジュさんがいなければ、自分が選ばれるとでも思っているのか、あの女。
取り巻きたちと恨めしそうに離れた場所からアンジュさんを睨んでいる。
もしかして、まだ何か企んでいるのかもしれない。
(その時は、俺が止めなきゃ……)
「マヒロさん、そんな怖い顔してどうかした?」
「リアム様! いえ、なんでもありません……。まだ挨拶へ回ってるのでしょう? 俺に構わず、行ってくだされ」
挨拶をして回っている二人が俺にも声を掛けてくれたが、タイミングが悪かった。
お祝いの席なのについベイリーを睨みつけてしまっていた。
エリア様が帰ってくるまでは、大人しくしておかなくちゃ。
俺は一人で会場から離れ、またガゼボに戻った。
ここからならベイリーたちの行動も監視できる。
とはいえ、リアム様が一緒にいる間はあいつらも近寄れないよな。
持ってきたオレンジジュースを飲みながら、ガーデンの花を眺めていた。
エリア様の言っていた、イランイランの花はここのガーデンにもあるのだろうか……。自分では匂えないフェロモンがどんな感じなのか、確かめてみたい。
ジュースを飲み終わると、いろんな花の香りを嗅いで回った。
どの花もいい香りがする。
「これなんかは少し甘い香り気がするなぁ」
白い花に手を伸ばす。
「こんなところで何をやっているのかしら?」
突然、背後から声を掛けられた。
急いで振り返る。
「ベイリー……さん……?」
なぜかベイリーが一人でガーデンまで来ていた。取り巻きはいない。
そして名前を呼んだ途端、猛烈に怒鳴り始めた。
「ベイリーって……! 何故あんたみたいなガキに馴れ馴れしく呼ばれなくちゃいけないのよ!! 馬鹿にしているの?」
「は? 別に呼び方なんてどうだっていいだろ。それに、俺はタチバナマヒロって名前があるんだ。マヒロって呼んでいいぜ」
怒りを抑えようと、敢えて明るく振る舞った。
しかし、それがベイリーをさらに怒らせてしまったらしい。
顔を真っ赤にして『さあ、今から怒鳴るぞ!!』という姿勢になっていく。
両手で拳を作り、全身がわなわなと震えている。
「私を誰だと思っているの!! 私は侯爵家の人間よ? あんたみたいな下民が気安く名前を呼べる立場じゃないのよ!!」
耳がキーーンと痛くなって、耳を塞いだ。
なんだってんだ、いきなり話しかけてきたのはそっちだろうと言いたくなる。
でもさっきのアンジュさんを思い出し、なんとか怒鳴り返すのを耐えた。
「あの、俺に用があって来たんじゃないの?」
こんな女に敬語を使う義理もない。どうせなにを言っても怒鳴るんだ。
俺がラフに喋るのが気に入らないベイリーはそのことで一息怒っていたが、気が済んだのか、諦めたのか、ようやく本題に入った。
「あなた、このラミレス邸に住んでらっしゃるの?」
「まあ、そうだけど……」
「見ない顔ですが、いつこちらへ?」
「つい最近だけど……。何か問題でも?」
俺が喋るたびに眉をピクリと動かす。そのうちまた怒鳴るかもしれない。
でもそうではなかった。ベイリーは悪巧みをしていたのだ。
「私とエリア様が婚約できるように、手を貸してくれないかしら?」
ベイリーが不敵な笑みを浮かべた。
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