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反省会。
しおりを挟む「ま、そこそこに面白い初出撃だったんじゃないか?」
むくれる卯に、申は半分笑いながら評価した。
卯は出撃前とあまり変わらず、大した怪我もなく退散することが出来た。 幹部になる以前から怪物を生み出す事や魔法少女達と対峙した時の対処、上手く退散する事はやってのけたので、そこに大きな失敗や反省はない。 卯がむくれているのは他に理由がある。
「面白かったな、『あなたは仮の面に居て良い存在じゃない』って」
腹を抱えて申は笑う。 笑い過ぎて乗っている屋根から落ちればいいのに、と少し思いながら卯はふん、と鼻を鳴らした。
卯は魔法少女達によって、仲間に引き込まれ掛けたのだ。 卯の体型は小柄で、魔法少女達とそう変わらないような身長をしている。 もしかすると、ちょろい奴に見られたのかもしれない。
「最悪」
そのことを思うと、卯は忌々しげに吐き捨てた。 卯にも、ちゃんと理由が有ってこの場所に居るのだというのに。
――理由はただ単に衣食住が(殆ど)無料で貰えて、給料を程良く得られるから、というものだが。
「もう少し、『幹部たる威厳』ってものでも身に付けるといいかもな」
申は笑い過ぎで出たらしい涙を拭い
「じゃあ魔法少女共も居なくなったし、魔法少女の粉回収するか」
立ち上がった。
「……そうね」
長いマントを踏まずにすっと綺麗に立ち上がった申を見て、卯は少しつまらなく思った。
×
卯達は怪物と魔法少女達が暴れ回った箇所に降り立つ。
「魔法少女の粉を光らせて魔力を通してから、瓶に入れるんだぞ」
「……知ってる」
申は大きめの蜂蜜瓶のような物を取り出し、卯に差し出す。 瓶を受け取り一歩進み出ると、右手を浄化されたその箇所に向け、少し魔力を込める。
すると、魔法少女達の力によって修復されたその箇所から、キラキラと光を放って輝く粉が浮かび上がった。 光らせた魔法少女の粉達を魔力で絡め取ると、持っていた瓶の中に詰め込む。 粉の量は、瓶の高さの4分の1程だった。
「へぇ、意外と集まったなあ」
卯の抱える瓶を覗き込みながら、申は感心した様子だった。
「……何か問題でもあるの」
覗き込む申を避けながら、卯は少し不満そうに訊く。
「いや、そんなもんじゃねえよ。 結構良い感じだぜ」
そう言うと申は周囲を注意深く見回す。
「取り残しもなさそうだし、帰るか」
×
魔法少女の世界から帰還した卯と申は、魔法少女の粉を集めた瓶を持って子の研究所に来ていた。 相変わらず子は白衣にゴーグルの姿だ。
「待ってたよん」
子の研究所まで行くとそこの入り口に子が居り、手を振って迎えてくれた。
「うーん、結構集まったみたいだねん」
卯から瓶を受け取り、子は評価を下す。
「それなりに質もいいみたいだし」
子が瓶を室内灯の光に瓶を翳すと、瓶の中身は銀色に煌めいた。
「『初出撃の幹部』としても、それなりにいい量だよな」
そう言う申を、子は珍しそうに見遣る。
「ふーん、キミが褒めるなんてねん」
受け取った瓶を子は奥の棚に仕舞いに行く。 それは特殊な鍵のかけられた大きな棚で、中には魔法少女の粉が入った瓶がずらりと並んでいた。
「コレ、他言無用だからねん」
後ろを振り返り、子は2人に言う。
「知ってるっつの」
「そもそも言う相手居ねえし」と申は手を頭の後ろで組んで面倒そうに返す。
どちらかといえば、卯はそういう約束事はきちんと守る方であったし、あまり喋る方でもないので大丈夫だと自身で思った。 しかし。
「(じゃあなんで私達に見せたんだろう)」
と思ったのだった。
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