仮の面はどう足掻いても。

月乃宮 夜見

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教えて! 妖精ちゃん★

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「えぇっとねぇ~」

 酉に話の水を向けられた未は、困ったように亥の方を見る。 それは、突然聞かれて困惑した、というよりはどう話すべきか、何を話すべきか、それを少々悩んでるような印象だった。

「どうせ、それも調査してるんだろ」

 未を隠すように前に進み出た申は、酉を睨みつけた。 同僚を責めるような言い方が、あまり気に入らなかったらしい。

「そんなに睨まないでよ。 オレだって、万能じゃあないんだから」

 酉は首を傾け、申を見る。 相変わらず笑ったままで疲れないんだろうか、と少しどうでもいい事が卯の頭を過った。

「で。 何か、知ってる事を話してくれるかな」

 妖精の国のことなのに、酉は何故それを未と亥に訊くのだろうか。 そう、卯が思ったとき

「未と亥はね、妖精なんだよん」

丑と寅を挟んだ先に居る子は、卯の方を見て言った。 周囲を見ても、大して驚きもないようなので、他の幹部達は知っていたのだろう。

 知らなかった。 妖精がこの組織に居たなんて。 言われても気が付かないほど、この世界外の世界に馴染んでいる。

「……『リミッター解除』」

亥は口を開いた。

「『攻撃性が上がっているのに、落とす魔法少女の粉キラキラの量が少ない』、これは魔法少女のリミッターを外した時にだけ起こる状態だ」

 幹部達みんなの視線が亥に集まったのを感じた。

「あの方法は、魔法少女を駄目にしてしまう、禁止された方法なんだ」


×


 魔法少女にはリミッターが掛けられている。 それは文字通り、『魔法少女の出力を抑えるもの』だ。

 本来、魔法少女達は夢や前向きな気持ちをエネルギーとして活動する。

 『若い女の子のフレッシュな夢と希望、感情をエネルギーにしている』なんて、些か変態セクハラじみている設定だが、まあそう言うことになっている。

 別に、『女の子じゃなきゃいけない』などと厳密に決められている訳ではないので、実は男の子が変身をしている場合もある。 その際は差し詰め、『魔法少年』であろう。

 とにかく、魔法少女の粉浄化エネルギーを生み出す魔法少女達は夢や前向きな気持ちで動いているため、魔法少女自身の強さは大抵、感情に左右される。

 テストで酷い点をとって落ち込めばパワーは下がるし、恋をして気持ちが浮かび上がれば、パワーは上がる。

 特に、強い意志や気持ちを溢れさせれば、それをエネルギーに新たな力が生まれ、魔法少女達はパワーアップ衣装チェンジする。

 強い感情で生まれた変身アイテム強化アイテムで変身した魔法少女は、通常の魔法少女達よりも多くの魔法少女の粉キラキラを落とす。 そうすることでさらに周囲の浄化を進めて、『穢れ』の侵食を止める。

 そうして、魔法少女達は世界を守っていく。

 リミッターを外すと魔法少女達は普段の力の上から、抑えられていた分の出力が加算されるため、確かに強くなる。

 しかし、それは体に無理をさせて出す力なので、魔法少女達は疲弊していく。 先ずはその疲弊を自身の生み出すキラキラで修復する。 ただし、魔法少女達は別に感情でパワーアップしているわけではない為、粉の量が増える訳ではない。

 粉での修復が追いつかなくなると、次は彼女らのパワーの源である夢や感情を削って、そこから補充していく。

 その為、魔法少女達のリミッターを外すことは、魔法少女達を廃人にさせていく行為と同等である。


×


「ふうん、やっぱり、そんな感じかぁ」

 酉はおもしろくないなぁ、と呟いた。

「やっぱり調べてたんじゃねえか」

申が詰め寄ろうとしていたのを、未が「申くん、どうどう」と諫める。

「確証の持てない事を憶測で発表するなんてできる訳ないだろう?」

それをまったく意に介していない様子の酉は、溜息混じりにのたまった。

「それでは、魔法少女達は……じゃなくて、妖精達は、自分達で魔法少女達を潰すような、自ら首を絞める事をしてるんですか?」

少し考え、戌は聞く。
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