27 / 60
ついでで色々聞いてみる。
しおりを挟む
「ほかは……うーん…いっぱい、おはなしして、……ねむく、なっちゃった…よ……」
うつらうつらとそう答えた後、未は眠ってしまった。
「彼女にしては結構しゃべった方じゃないですか?」
戌は眠ってしまった未を持ち上げ、近くのベッドに運ぶ。
「多分、頼ってもらえたことが嬉しかったんだろうね」
しみじみと、亥は頷いた。
「ねぇ、さっきあなたは妖精の事を『バケモノの逆みたい』と言っていたけれど、それはどういうこと?」
卯は戌に問う。 未に薄い毛布を掛けながら、戌は、んーと思考を巡らせるように小さく息を吐き出し卯達の方へ戻って来る。
「正しくはバケモノの反対は精霊で、妖精の反対なんてのは無いんですけどねー」
よっこらせ、と卯に近い席に座り、戌は卯の手を握ってにたりと笑った。
「ついでに魔法少女や怪物のお話しも致しましょう」
「ある程度はご存知かもしれませんが、おさらいですよ」との戌の言葉に、何故手を握ったのか意味が分からない卯は少し困惑しつつも頷いた。 ――多分、本当に意味は無い。
×
「まず、バケモノについてなんですけどね」
こほん、と咳払いをして戌は語り出す。
「ワタクシの他には酉殿と申殿しか此処の組織には居ませんね。 他の組織でも今のところ、見かけたことないです。 しかし、外には野良のバケモノが結構います」
「ワタクシ達のように知能が高いモノは滅多に生まれません。 大抵は共食いを繰り返して混ざって雑多になるか、魔法少女や妖精に消されますからね」
「実はワタクシ達は殆ど自身と同種の穢れやバケモノしか喰ってないので、純粋なんですよね。 純度が高いと知能も高いのです。 ふふふ」
「で、バケモノというのは『核を持った穢れの塊』なのですよ。 因みに穢れは『負の魔力と感情が混ざったもの』です」
「バケモノは穢れと核で構成されていますが、妖精は正の魔力と核のみで構成されているそうなので、少し違うのです」
「因みに、負の魔力単体では結束力がないので、負の魔力は塊にすらなりませんよ。 強いて言うなら淀みや瘴気みたいな、ぼんやりした塊りとか、まあそんな感じですかねー」
「そういうのは『やな感じ』って言われる場所にはよくあります。 気持ち悪いだけで特に何もしないんですよ、負の魔力は」
「ワタクシが言うのもなんですが、穢れはよろしくないですね。 感情のままに周囲を壊しますし、勝手に動いちゃうんで」
「穢れの対になるもの、つまり『正の魔力と感情が混ざったもの』、というものには決まった名称はありませんが、『プシュケ』とか呼ばれていたことがあるらしいです。 プシュケが核と共に纏まると、大抵は精霊の類になります」
「プシュケは場所によっては魂とかアニマとかそういう命に関係するような呼び名になるそうですねー」
「それはともかく、プシュケを人間が纏うと、魔法少女になるのです。 男の子だったら魔法少年、性別関係無く両方まとめて魔装者とか呼ぶ場合もありますけどねー」
「そして、逆に穢れを人間、或いは感情を生み出す依り代が纏うと、怪物になるんです。 ワタクシ達が生み出している奴らの事ですねー」
「ああ、忘れてました。 魔法少女の落とす粉についてなんですが」
「あれは魔力でも、穢れでもプシュケでもない良質なエネルギーです」
「魔法少女達は、周囲の正負の魔力や感情、穢れやプシュケを取り込んで、良質なエネルギー物質の粉を落とすんですよー」
どちらかと言えば性質的には正方向ですけどね、と戌は亥が淹れてくれたお茶を飲み干し、て勢いよく飲みすぎたのか咳き込み始めたので、卯はその背をさすった。
×
「ありがとうございます、いやあ亥殿の入れてくださったお茶で死ぬのもまあ良い気はしますが、もうちょっと色々見てみたかったので助かりました」
少し長めな感謝の意を表した戌は、再び卯の手を握って今度はぶんぶんと激しく縦に振った(ただの握手)。
「アンタは呼吸が出来なくても生きて行けるだろうが」
亥は呆れたように少し溜息まじりに呟く。
「いえいえ、ワタクシは呼吸で、正しくは呼吸の模倣みたいなものですが、それで穢れを取り込んでおりますので、必須なのですよ」
「ワタクシを造る穢れは、消費されやすいんですけど周囲によく散っていますからねー」そう戌は答えた。
「ああ、因みに延々長々とワタクシが語った内容の殆どは酉殿が収集した調査結果の資料なので、感謝の意ならば酉殿に伝えた方がよろしいかと。 ワタクシは資料の内容を『報告』したまでです」
「ふーん」
詳しく教えてくれた戌に感謝を述べようとしたところで、戌は、にまっと笑って卯に言った。
うつらうつらとそう答えた後、未は眠ってしまった。
「彼女にしては結構しゃべった方じゃないですか?」
戌は眠ってしまった未を持ち上げ、近くのベッドに運ぶ。
「多分、頼ってもらえたことが嬉しかったんだろうね」
しみじみと、亥は頷いた。
「ねぇ、さっきあなたは妖精の事を『バケモノの逆みたい』と言っていたけれど、それはどういうこと?」
卯は戌に問う。 未に薄い毛布を掛けながら、戌は、んーと思考を巡らせるように小さく息を吐き出し卯達の方へ戻って来る。
「正しくはバケモノの反対は精霊で、妖精の反対なんてのは無いんですけどねー」
よっこらせ、と卯に近い席に座り、戌は卯の手を握ってにたりと笑った。
「ついでに魔法少女や怪物のお話しも致しましょう」
「ある程度はご存知かもしれませんが、おさらいですよ」との戌の言葉に、何故手を握ったのか意味が分からない卯は少し困惑しつつも頷いた。 ――多分、本当に意味は無い。
×
「まず、バケモノについてなんですけどね」
こほん、と咳払いをして戌は語り出す。
「ワタクシの他には酉殿と申殿しか此処の組織には居ませんね。 他の組織でも今のところ、見かけたことないです。 しかし、外には野良のバケモノが結構います」
「ワタクシ達のように知能が高いモノは滅多に生まれません。 大抵は共食いを繰り返して混ざって雑多になるか、魔法少女や妖精に消されますからね」
「実はワタクシ達は殆ど自身と同種の穢れやバケモノしか喰ってないので、純粋なんですよね。 純度が高いと知能も高いのです。 ふふふ」
「で、バケモノというのは『核を持った穢れの塊』なのですよ。 因みに穢れは『負の魔力と感情が混ざったもの』です」
「バケモノは穢れと核で構成されていますが、妖精は正の魔力と核のみで構成されているそうなので、少し違うのです」
「因みに、負の魔力単体では結束力がないので、負の魔力は塊にすらなりませんよ。 強いて言うなら淀みや瘴気みたいな、ぼんやりした塊りとか、まあそんな感じですかねー」
「そういうのは『やな感じ』って言われる場所にはよくあります。 気持ち悪いだけで特に何もしないんですよ、負の魔力は」
「ワタクシが言うのもなんですが、穢れはよろしくないですね。 感情のままに周囲を壊しますし、勝手に動いちゃうんで」
「穢れの対になるもの、つまり『正の魔力と感情が混ざったもの』、というものには決まった名称はありませんが、『プシュケ』とか呼ばれていたことがあるらしいです。 プシュケが核と共に纏まると、大抵は精霊の類になります」
「プシュケは場所によっては魂とかアニマとかそういう命に関係するような呼び名になるそうですねー」
「それはともかく、プシュケを人間が纏うと、魔法少女になるのです。 男の子だったら魔法少年、性別関係無く両方まとめて魔装者とか呼ぶ場合もありますけどねー」
「そして、逆に穢れを人間、或いは感情を生み出す依り代が纏うと、怪物になるんです。 ワタクシ達が生み出している奴らの事ですねー」
「ああ、忘れてました。 魔法少女の落とす粉についてなんですが」
「あれは魔力でも、穢れでもプシュケでもない良質なエネルギーです」
「魔法少女達は、周囲の正負の魔力や感情、穢れやプシュケを取り込んで、良質なエネルギー物質の粉を落とすんですよー」
どちらかと言えば性質的には正方向ですけどね、と戌は亥が淹れてくれたお茶を飲み干し、て勢いよく飲みすぎたのか咳き込み始めたので、卯はその背をさすった。
×
「ありがとうございます、いやあ亥殿の入れてくださったお茶で死ぬのもまあ良い気はしますが、もうちょっと色々見てみたかったので助かりました」
少し長めな感謝の意を表した戌は、再び卯の手を握って今度はぶんぶんと激しく縦に振った(ただの握手)。
「アンタは呼吸が出来なくても生きて行けるだろうが」
亥は呆れたように少し溜息まじりに呟く。
「いえいえ、ワタクシは呼吸で、正しくは呼吸の模倣みたいなものですが、それで穢れを取り込んでおりますので、必須なのですよ」
「ワタクシを造る穢れは、消費されやすいんですけど周囲によく散っていますからねー」そう戌は答えた。
「ああ、因みに延々長々とワタクシが語った内容の殆どは酉殿が収集した調査結果の資料なので、感謝の意ならば酉殿に伝えた方がよろしいかと。 ワタクシは資料の内容を『報告』したまでです」
「ふーん」
詳しく教えてくれた戌に感謝を述べようとしたところで、戌は、にまっと笑って卯に言った。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる