仮の面はどう足掻いても。

月乃宮 夜見

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図星だと怒るってばーちゃん言ってた。

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「なあ、敵であるこのオレが言う事じゃあないが」

 出撃した寅は困惑していた。 《》の異様な姿に。

「……大丈夫なのか?」

「何のことだ?」

 《》は、自身に起こっている異常に気が付いていないようだった。 目は淀み覇気がなく『魂が抜けた』ような、正の魔力の塊の筈なのに今にも負の魔力を生み出してしまいそうな、その状態に。

 魔法少女達は今のところ、リミッター解除の影響はあまり出ていないのか、そこまで変化は見受けられない (出力は大幅に上がっていたが) 。

「『リミッター解除』とやらをしたんだろう」

寅の言葉に、《》は動揺する。

「何故、それを知っている!」

 やっぱり、やったのか、と亥の予想が的中した事に少し安心したのと同時に、残念に思ってしまった。 魔法少女の妖精好敵手側が禁忌に手を出すなんて、と。

 寅は自分大好きな自信家ナルシストであるが、正々堂々とした戦い方を好む。 その為、陰湿な戦い方は自らは(生命の危機を感じない限りは)しないし、相手にもそれを求める。

「それは禁忌だと聞いたんだが」

 寅は綺麗にセットした髪が崩れるのも構わずに、頭をガシガシと雑に掻いた。 何故、こんなに妖精がおかしくなってしまったのだろうか。 ――まあ、元から妖精は思い込みが激しく、会話が通じない事はよくあるのだが。

魔法少女の敵お前達には関係ない」

《》は言う。

悪の組織悪い奴に一体何がわかる」

 そういう相手を拒絶するような台詞は魔法少女の敵達オレ等みたいなのが発するもんだろう、と内心思いながら寅は言い返す。

「別に『仮の面』オレ達はただ無意味に悪事を働いているだけの組織じゃねぇよ」

表立って公表はしてないが。 そもそも、『妖精の国と組んでる』なんて、公表できるわけもないか。

「嘘だ!」

「嘘じゃねぇよ」

なんだか立場が逆転してるな、と少し思考がずれた。 感情的に喚く相手を、理性的に諭す。 それは魔法少女側に移る奴光堕ち枠や、最終局面でよく見るやつだ。


×


「亥の予想は当たっていたか」

 嫌な予感がしていたので、予め応援を呼んでおいた。

 駆けつけたのは丑で、寅に話しかけた後にその周囲を見、感情の読み取り辛い銀灰の目を見開いた。

「卑怯だぞ、仲間を呼んでいるなんて!」

《》は叫ぶ。

魔法少女側大所帯がそれを言うな! と内心叫びたくなったのを我慢し(稀に1人の魔法少女もいるため)、丑の方を向いた。

「殆ど話が通じねぇ」

丑はそれに少し頷いて、

「『多分、何かに洗脳されてるんだと思う』と、酉が言っていた」

淡々と告げる。 

「調査早ぇな。 どんな方法を使っているか知らんが」

「一体、何の話をしてるんだ?」

感心する寅に、無視するな! と、苛ついた《》が声を挟む。

「悪い奴の癖に!」

悪の組織オレ達にだって色々事情はあるんだが」

寅は面倒そうに応えた。 丑の方に視線を向けると丑は連絡用の端末を起動させていて、子に現在の(妖精と魔法少女の)状態を連絡するつもりのようだ。

「うるさい! 悪い奴は、『穢れ』は、排除しなければならないんだ!」

《》は叫ぶ。

「オレは『穢れ』そのものじゃねぇよ」

『穢れ』と色々が混ざったひとだ。 丑と子も同じ。

「申や酉は殆ど『穢れ』だが」

「話がややこしくなるからオマエは喋るな」

あと戌か、とマイペースに口を挟む丑に、寅は返す。

「このオレが『穢れ』かどうかなんざ、信じなくてもどうでもいいが」

寅は黄金色のその目で、《》を睨みつける。

「大分、めちゃくちゃな事言ってんの分かんねぇの?」

その時、《》が気色ばむのが見えた。
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