仮の面はどう足掻いても。

月乃宮 夜見

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強襲する量産品。

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 一撃目を外してしまった。

「次はちゃんと狙って、魔法少女!」

声をかけると、魔法少女達は道具を構え直す。


×


 兎面の女幹部は、思っていたよりも弱かった。 魔法少女達が魔法エネルギーを込めた技を放てば、みるみるうちに弱っていく。

 雑魚怪物よりは丈夫だけど、パワーアップしたリミッターを外した魔法少女達にとっては楽勝な相手だったみたいだ。

「魔法少女、もうちょっとだよ!」

《》の声に頷き、魔法少女達は各自の道具を構える。


×


 死角を狙ったはずの攻撃が、防がれてしまった。

 黒い羽を散らして消えたそれは、小鳥のような姿をしていた。

「魔力の色が違う! 他にも敵がいるかもしれないから、気を付けて!」

魔法少女達は警戒を強め、武器を力強く握る。


×


 あと一歩で敵幹部を一人倒せそうだったのに、邪魔が入ってしまった。 それは、黒い魔力の塊りだった。

「……あと、少しだったのに……!」

 魔力の色から、兎のような仮面の幹部を守っていたあの小さな鳥の作り主だということも同時に分かった。


×


 追い詰めた、と思っていたらまた幹部が増えた。 猿のような、骨のような仮面の幹部だった。 魔法少女達が少し怯むが、そんなに大きな問題では無い事を伝える。

「相手が増えたって何の問題もないよ!ぼくたちは強くなったんだから!」


×


 鳥の仮面の幹部が、兎の仮面の幹部と猿の仮面の幹部を作り出した穴の中に放り込んで、2人程逃されてしまった。

「あと少しだったのに!」

そう言っても、居なくなってしまったのはどうしようもない。 それに、目の前の幹部を倒してから追えばいい話だ。

 仮面の幹部は穴をやけに丁寧に閉じ、こちらを向いた。

「さて、これはこれは。 …………色々と面倒そうだなぁ」

 どうしようかな、と呟く鳥のような敵幹部は面倒そうに側頭部に手をやる。

「帰りたかったら、ぼくたち魔法少女を倒してからだ!」

「……じゃあ、そうさせてもらおうかな」

 そう返事した仮面の幹部は、にやりと胡散臭く笑って頭から手を放し、準備運動のように暗黒色の魔力を散らした。 

「魔法少女、気を付けて!」

 確か、鳥の仮面の幹部は、『仮面の奴らの幹部の中でかなり強い奴だ』って、妖精の中では有名な話だ。 どのくらい強いかは判らないけど、どうせ、勝てるんだ。


×


 魔法少女達の魔力とぶつかり、キラキラした魔力と暗黒色の火花が派手に飛び散る。

「……く、意外と手強いな」

敵幹部は苦しそうな声を上げる。


――これなら勝てる。


確信のように思った。


 幹部が応援を呼ぼうとしているのか、薄いタブレット端末を持ち出した。

「させないんだから!」

ばっと魔法少女が光線を飛ばし、幹部の手から端末が落ちた。 落ちた衝撃で端末が割れ、余裕そうだった幹部は僅かに表情を歪めた。


「やっちゃって、魔法少女!」

もう、《》は、すでに相棒であった魔法少女達の名前を憶えていなかったが、《》も、魔法少女達も、気付くことはなかった。



――そして。


「           」

魔法少女が打てる最高の浄化技を、幹部に叩き込む。 虹色を帯びた眩ゆい光が、周囲を明るく染めていく。 


「――やっ、た?」


 魔法少女の1人が声を上げる。 他の魔法少女達も緊張して面持ちで幹部が居た所を注視する。

 そういえば、わざの名前を、忘れてしまった。 何て言ってたっけ。


 光が収まり、幹部の様子が確認できるようになる。 持っていた魔力の量が随分と減っていて、初めに持っていたと思われる量の十分の一ぐらいしか残っていなかった。

 鳥のような仮面の敵幹部は動かなくなっていた。


×


「うそ……みたい」

 魔法少女達によって、拘束されるその姿を見、若い女は言葉を零す。

「『仮の面』幹部を倒したんだ、俺達が!」

若い男の顔は、これまでに無いほど歓喜に満ち溢れている。

「これで、追手は僕たちよりも、妖精のほうに気が向くだろうね!」

 本当に、妖精達は愚かだ。 この後、自分達がどうなるのかなんて全く分かっていない。 仮の面の奴らは魔法少女の敵対組織の中で何れ程強力であるか、自分達に被った不利益を、どうやって返す組織なのかを。

 若い子供は、嬉しさで歪む顔を押さえて言う。

「これで、『仮の面』の上層部の力を大きく削ぐことができた上に、あの組織は妖精の国と戦争を起こすに違いないよ」

そうなれば、妖精達を潰す事に集中するだろう。 他の探し物や色々な事を放り出して。 仮に自分達の存在を見つけたとしても、その頃にはもうそこまで体力も残っていない筈だ。


僕たちの、完全勝利だ。


 若い子供は愉悦に歪む顔を隠すことができなかった。

――ああ、本当に

妖精バカな奴らって」

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