悪魔と契約した少女

ばんご

文字の大きさ
上 下
9 / 29

魂の縛り

しおりを挟む
悪魔は人間の夢に侵入できる
自由自在に夢を操れることができるのだ

陽菜に悪魔を見せたのも、アリアであった
小間使いに陽菜の偵察に行かせたが、すぐに返り討ちに会い、使い物にならなくなってしまった

なので、獲物を得る為の強行手段とも言える
悪夢を魅せて追い詰めようとした

だが、それも数日で勘づかれてしまった
リアムが魂の縛りで、陽菜の夢に侵入できないようにしたのだ

『さすがに勘づかれてしまっている分
 動くことは難しそうね』

けれどアリアは焦った様子はなく、楽観視してる
彼女に取ってこれはゲームに過ぎない
ゲームは勝者と敗者に分かれる

彼女は決まって勝者となる
何故なら、彼女に敗者は似合わないから

『あの子が真実を知ったその瞬間が
 チャンスよね』

勝者には勝ち取った瞬間に、褒美が与えられるのだから、それを疑わない

『じっくりと、待ちましょうか
 焦ることはないわ、私に手に入らない
 ものは絶対にはないのだから ふふっ』


陽菜から悪夢の話を聞き、夢の中へと侵入するとどうやら悪魔の仕業だった

すぐに縛りで入れないようにしたが、きっと彼女、アリアだろう

忠告したのに、手に入らないものはないと
信じて疑わない女
俺はそんな傲慢な態度が気に食わない

あんな奴に俺は人間の生を終わらせられたと
思い出すだけで、怒りが込み上げてくる

『けど、今更な話だ
 あの時の選択が間違ったとは思わない』

そう、彼は生前目に見えないものが見える体質で、幽霊、妖の類なども目視できた
そして、悪魔さえも呼び寄せてしまう魂の持ち主だった

両親には不審に思われ、気づけば近所で浮いた存在になっていた

だから俺は周りに入ってはいけないものだと
そう思い、見えるものを見ないふりして
毎日過ごすのに必死だった

そんな光景を見て、目につけたのが、アリアだった

あの時の俺は、アリアの出した契約を疑うことはなかった
迂闊だったのだ、悪魔とは自分の欲の為なら平気で嘘をつく
偽りの契約だった

死期がまだ先の俺に、言い放ったのだ
『あなたの命、魂を差し出せば
 あの子の病はよくなる』

その時の俺は、医者の卵 医学部の研修医だったから
元々、興味がある分野であった
陽菜と出会い、この子を助けたいと
そう思いながら勉学に励んだ

勉学に励んだところで、陽菜の容態が変わることないことはわかっている
けど、何もしないよりはいいとそう思った

陽菜の体に巣食っている病が、少しでも病人にとって軽減できるような方法がないのか、探した

結果は火をを見るより明らかだった
何も成果はなかった

その時のアリアの言葉が、俺にとっては喉から手が出るほど欲しいものだった

けどその結果、俺が陽菜の前からいなくなる
魂、存在ごと消えるのだから
きっと悲しむだろう

願いを叶える為に代償はつきもの
きっとこの事を知ったら、陽菜は悲しむ
わかっているのに、俺は了承した

俺は心の中で陽菜に何度もごめん、と呟いた
届く事ない声を、ずっと

けど、その結果俺は騙されていたのだ
アリアは俺の魂の欲しさだけでは足りなかった
 
結果、俺の陽菜を救うという願いは叶えられることはなかった

刺激が足りない、そう言われ
俺を同類、悪魔の姿に変え魂の縛りをされている状態だ

俺の魂は今アリアに縛られている
逆らうこともできずに、アリアの望むままに
死ぬことさえも許されない

悪魔は禁忌を犯せば、死ぬことは許される
けど俺は魂の縛りがあるせいで、禁忌に手を伸ばそうともできない

縛りを解くには、人間の時の心残りを叶えれば
解呪できると言われた

人間界では、俺の死は神隠しとされた
忽然と姿を消したことになっているから

これが俺の仕組まれた人間としての生を終わらせた経緯だ
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

わたくしは悪役令嬢ですので、どうぞお気になさらずに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,349pt お気に入り:95

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,595pt お気に入り:3,096

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,769pt お気に入り:1,659

白蛇のお告げ

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,831pt お気に入り:3,022

処理中です...