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番外-邪神様がいなくなった施設とある警備員の証言(その時施設では)
しおりを挟むはじめに気が付いたのは研究施設に10年ほど勤める
ベテランの警備員だった。
日雇いで入った警備員がいなくなったと思ったら、
施設内で職員の不審死や自死、家族の不幸、重病など
立て続けに不幸が起こっていた。
明らかにおかしな状況で、働く職員には不安が広がっていく。
いつも以上に研究所はピリピリとした緊張感のある空気に
覆われ、警備や見回りも強化された。
そして、ある夜の見回りの最中、ベテラン警備員は
施設内でも最下層に位置している部屋の電子扉のロックが外されていることに気が付いた。
通常であればその扉(部屋)は管理者権限のある研究所の施設長にしか入ることを許可されていない。
施設内では「パンドラの箱」と呼ばれ、高い地位の施設職員でも入ったことがない。
それどころか誰もが近づくことさえ嫌がっている。
理由は定かではない。だがその施設では誰もが恐れる「秘密の部屋」だ。
警備員は慌てて上長に報告を行い、さらにいつの時点で扉が壊されてしまったのか
監視カメラを確認しての調査が行われた。
(さらに扉にはすぐに簡易的な電子ロックが取り付けられた)
「…これはいったいどういうことだ?」
警備員、施設長、職員2名が監視カメラに食い入るように確認している状況。
熊谷という日雇いの警備員が施設内を巡回している様子が映し出されていた。
しかし、明らかに様子がおかしい。
時々立ち止まっては、施設内の様子を小型のカメラに収めている様子がわかった。
これは明らかに規律違反だ。
施設内で見聞きしたことは、外に絶対に漏らさないようにと約定されていた。
書面にも記載があるし、この施設で務める誰もがそういう契約で仕事をしている。
それを破った場合は、命の保証はできないと面接時に脅されたはずだ。
「こいつを雇ったのは誰だ?」
「面接者は今すぐ厳しい処分を行う必要がありますね。確認しておきます」
「手遅れになる前に早くしなければ…」
「個人情報を調べています。…これは」
「まさか!マスコミの手先なのか?ふざけるな!」
「速やかな対象の処分と情報の統制が必要です。契約業者に依頼しましょう」
警備員は隣で椅子に縮こまり、ぶるぶる震えながらそのやり取りを見ているしかなかった。
施設長はいつにもまして怒り心頭という様子で、血管はビキビキと浮き出て、今にも血管が切れそうである。
そして二人の施設職員は淡々とその後の対処について話を進めていく。
そして契約業者というのが裏の仕事を請け負う組織だということは警備員も知っていた。
何でもやるらしい。文字通りなんでも。
つまり”一個人を誰にも知られずにひっそりと葬る”
”世に出てはまずい情報を流した情報元を最初からなかったことにする”
なんてことも力づくでやってしまうらしい。方法は知らない。
だから未だにこの警備員の仕事をやめられずに続けていた。
”うっかりこの施設について漏らしてしまったもの”の末路を警備員は知っていた。
すべて行方不明、もしくは不慮の事故によって亡くなっている。
”もし、自分もほかの仕事について、そこでうっかり、この施設のことを話してしまったら”
そう思うと恐ろしさに震えてしまう。
怯える警備員を尻目に、カメラの映像は進む。
熊谷は施設内でも最下層に位置する場所に来ていた。
そしてさらに熊谷は開けてはいけないといわれている扉に向き合う。
通常は電子ロックが掛かっており、パスワードと管理者の生体認証がなければ開かないはずの扉。
しかし、なぜか熊谷警備員がおすと、待っていたとばかりに、扉が開いていく。
そしてしばらくすると慌てた様子の熊谷警備員が走って出ていく。
そこで警備員は映像を止めた。
「ここまでです。この映像以前ではあの部屋の扉は電子ロックが掛かっていたことを確認しております。」
「くそ、だから日雇いは嫌だったんだ」
「しかし、その日に代わりの警備員がいなかったので仕方がないでしょう。それよりも早くこの熊谷という男を
処分することを優先すべきです、そして今後日雇いの警備員は使わないよう指示しましょう」
「それよりもこの事件の後と前で部屋の中の様子が変わっていた、あるものがなくなっていたんだ」
「はい、私も施設長について中を拝見させていただき、確認しました。あれは持ち出されては困りますね」
「しかし、この熊谷という男が持ち出したようには見えないな。あんな大きなものを隠して持ち運べるはずがないだろう」
「そうですね。これについては奇妙です。説明がつきません。しかし、現状あの熊谷という男が持っていると見て
調査すべきかとおもいます」
「俺もこれから別の会議がある。この件は本部に知られないよう秘密裏に進めろ」
「わかりました。」
やっと警備員は解放され、ここでお開きとなった。
確かに熊谷という男が絶対的に悪いのだが、これからあの男がどういう処分をされるのかと思うと
さすがにかわいそう思ってしまう。
せめて苦しまないでいられますように、と祈らずにはいられなかった。
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