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1章 旅立ち
4話 ファイヤーシスターズ
しおりを挟む「凄えー!これが外の世界かー!!」
ライヤが馬車に乗りながら窓から顔を出してはしゃぐ。
「ちょっと危ないでしょ!傷が開いたらどうすんの!」
「傷?」
キョウカの言葉を聞いてライヤは初めてその事を思い出した。キョウカを助ける為にワイジと戦ったライヤは大怪我を負った上に雷鳴の指輪を使って倒れたのだ。しかし目が覚めたらワイジにやられた傷が消えていた。
「どうしてだ?」
「それは私と契約してるもう一人の準妖精、キュアの力だよ」
キョウカがニコッと笑うと祈りをする様に両手を合わせる。するとキョウカの頭上に緑色の猫の様な準妖精が現れる。
「キュ、キュキュウ!」
「この子がキュア。癒しの力を持つ私のはじめての友達だよ」
キュアは緑色である事を除けばほとんど猫そのものだった。姿形もそうだし、キョウカに甘える仕草も猫だ。
「そうか、ありがとなキュア」
「キュ?キュキュウ!」
ライヤがお礼を言うと少しだけ首を傾げた後直ぐ誇らしげに鳴いた。
「お、人の言葉分かるのか?」
「詳しく分かってるかは分からないけど、ある程度は理解してるんじゃないかな」
「キューウ!」
その様な会話をしながらライヤとキョウカは馬車に揺られる。雷鳴の指輪が光を発した方向に向かって。そんな時。
「うわぁ!」
「なんだぁ!?」
馬車が急停止をした。
「御者のおっちゃん!何があったんだ!?」
「えっと、それが」
ライヤとキョウカが外を見ると馬車の通行場所に仁王立ちする少女と横で腕を組んでいる二人の少女が見えた。全員の視線を感じた仁王立ちの少女はライヤ達に一言だけ言った。
「乗せろ」
◇
「いやぁ話が通じる相手で助かったぜ兄ちゃん」
「困ってる人は見過ごせない主義でね」
少女の要求にライヤは即座に答えた。その答えは聞いての通りである。新たに馬車に乗って来た少女は身長が130程のリーダーと思われる少女と140程度の赤髪の女の子だ。
「それより、なんであんなところに?お母さんやお父さんは?」
「はあ、結局お前もそうなのかよ」
「え?」
先程まで仲良さげに話していたライヤと少女の雰囲気が突然悪くなる。何か気に触る様な事を言っただろうか。
「いいか!私達は冒険者だ!もう立派な大人なんだよ!」
「「・・・えええええー!!?」」
馬車にライヤとキョウカの驚きの声が響く。その声に馬が驚き馬車が大きく揺れる。
「ぼ、冒険者?」
「その通り!とおからんもの?は音にも聞け!」
「しかくばよって?目にも見よ!」
「「我ら!泣く子も黙るファイヤーシスターズ!!」」
ライヤの声に今まで黙り込んでいた二人の少女が喋り始め、更にカッコいいポーズをとってチーム名を紹介してくれた。
「燃焼の指輪の使い手、三女!ネンカ!」
「火炎の指輪の使い手、次女!エンカ!」
「そして、」
ネンカとエンカがカッコいいポーズをとり自己紹介を終えるともう一人の少女がゆっくり起き上がる。そのカッコいい名乗りはどの様なものかライヤが目を輝かせる。そして遂に口を開いた。
「長女のマキだ」
「・・・え?それだけ?」
「それ以外になんかいるか?私は変なポーズなんてしたくないんだよ」
ライヤはマキのセリフを聞くとあからさまにテンションが下がった。カッコいい名乗りとファイヤーシスターズと言うほどのものなのだから炎にまつわる名前なのかもとすら考えていたし。
「あからさまにテンション下がるんじゃねえよ。さて、次はあんたらの番だ」
「何しにクウラの街に行くんだ?」
「目的とかあんのか?」
どうやらこの馬車はクウラの街という場所に向かっているらしい。正直ライヤもキョウカの地理には疎いので街の名前など言われても分からないのだが。
「えーっと、何かな」
キョウカが質問攻めをするエンカとネンカに困り顔をする。確かにオリジナルリングを探しに行くなどとは言いにくい事もある。もしかしたらこの少女達もオリジナルリングを欲しているかもしれないし。
「俺達は冒険者になりたいんだ!クウラの街?ってのは知らないけど、心躍る冒険がしたい!」
戸惑っているキョウカの代わりにライヤが答える。オリジナルリングを探している事は伝えないがライヤにとっての目的とはこっちが本命だ。
「ほぉ、私らの後輩になるってことか」
「ネンカに後輩が!?」
「エンカに後輩が!?」
「「悪くねーなー!」」
楽しげに笑うファイヤーシスターズ。聞いた所によるとそのクウラの街とはファイヤーシスターズの故郷であり、冒険者ギルドが存在するらしい。冒険者ギルドは各地の街にあり、魔族の討伐から馬車の護衛や薬草採取。庭の雑草抜きまでなんでも仕事を紹介してくれる場所だ。
「じゃあ街についたら私らが冒険者登録手伝ってやるよ。まあそんなに難しくねえけどな」
「なあマキ姉!せっかくだから一緒にクエストとかにも行こうぜ!」
「なあマキ姉!初クエストくらい手伝ってやってもいいんじゃねえの!?」
ネンカが嬉しそうに、エンカが少し偉そうにマキにライヤ達との仕事を頼む。
「まじ!?俺も初クエスト二人なのは不安だったんだ!経験者のみんながいればかなり心強いな!」
「そうか?まあ、構わねえけどよ」
ライヤに尊敬の目で見られたマキは少し照れて了承する。そんな中、馬車は二度目の急停止をした。
「いでぇ!」
「うわぁぁ!」
「むぎゃ」
「うぎゃ」
「きゃっ」
馬車が異様に傾いた事でライヤが壁に激突。それに追い討ちをかける様にキョウカ、エンカ、ネンカ、マキの順番でライヤの上に乗った。ん?今きゃって言った?
「ちょっ!重っ!」
「バッカ!女の子に向かって重いとは何!?」
「「そーだぞー」」
キョウカとエンカ、ネンカが無茶を言ってくる。四人の女の子に乗られているのなら重いだろう。
「おい、そんなことより外だ。魔族退治だ」
マキの言葉にエンカとネンカが顔を上げると即座に馬車を出る。
「マジか!俺達も」
「そうだね、行かなきゃ!」
ライヤとキョウカが馬車の外に出るとそこには木の化物がいた。トレントと言う木の魔族だ。
「木とか、私達の得意分野だな。エンカ!ネンカ!」
「はいよー!燃焼の指輪!」
「あいよー!火炎の指輪!」
エンカとネンカの指についた赤い指輪が光り、指輪から業火が現れる。
「「ファイヤー!!」」
二人の言葉により放たれた大きな火球は見事トレントに命中した。
「ぐぎゃぁぁぁ!」
「他愛無いな」
そのままトレントが燃えるのを見守ると、後ろからトレントの群れが現れた。
「トレントの群れ!?くそ、俺も加勢に」
「行かなくていいさ。ネンカとエンカに任せな」
ライヤが助けに行こうとするのをマキが止める。そしてトレントの群れを見ると、確かに加勢など要らない様子だ。
「ファイヤー!」
「燃えろ燃えろー!」
「ぐぎゃぁぁぁ!」
二人の出す炎にトレントがどんどん燃やし尽くされる。逃げようとするトレントもいたが他のトレントの火が燃え移り死んでいくトレントも。
「なんか、一方的だね」
「これが冒険者かぁ!!」
少し覚めた目で見るキョウカを他所にキラキラと憧れる人を見る様な目をエンカとネンカに向けるライヤ。遂にトレントは残り一匹とまでなっていた。
「観念しな」
「お縄につきな」
「「ファイヤー!!」」
二人の炎が合わさりトレントに正面から炎が当たる。そして片手を天に突き上げたポーズをライヤ達に見せつけた。
「あのポーズは何なの」
「かっけー!エンカさんもネンカさんもカッケー!」
「「師匠と呼びな」」
完全に油断しきっていた。先程までのトレントは炎で燃やし切っていたが、最後の一匹は違った。
「エンカ!ネンカ!まだだ!」
「「へ?」」
マキの声に振り返った二人はトレントが伸ばした木の腕に貫かれた。
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