original ring

藤丸セブン

文字の大きさ
5 / 81
1章 旅立ち

5話 マキの指輪

しおりを挟む

「え?」
「へ?」
「エンカさん!ネンカさん!」
 トレントに貫かれたエンカとネンカを見てキョウカが叫ぶ。そしてマキがその場から消えるかと思われるほどの速度で走り出すと短剣を取り出しトレントの枝を切り落とした。
「ぎぃやゃゃゃ!」
「二人共無事か!?」
 トレントから背を向けて二人の元へ走り出すマキ。しかしトレントの枝は根本から復活していきマキへと襲いかかる。
「ボイス!」
「捕縛布!」
 しかしボイスの音の衝撃により枝を止め、その隙にライヤが枝を止めた。
「あっ、悪い。取り乱した」
「大丈夫です、二人は必ず救います。キュア」
「キュキュ」
 ボイスがキョウカに手を振るとその場から消える。変わりにキュアが空中から現れて地面に華麗に着地する。
「妖精!?」
「私の友達です。とにかくマキさんはトレントを」
 キュアが二人の治療を始めるのを見た後にマキはライヤの手助けをする為に走り出した。
「おおおお!もう無理、限界ぃぃ!」
「男ならもうちょい頑張れや!」
 ライヤが捕らえていた枝を再びマキが切り落としてライヤの横に着地する。だが。
「うぇ!?また復活してきやがる!なんだよこれ!」
「こいつはハイトレントだ。トレントの上位種。こいつを殺すには一片残らず燃やさないといけねえ」
「なら!フレイムポーション!」
 ライヤが赤い液体の入った瓶を取り出すとそれをハイトレントに投げつける。その液体がハイトレントにかかると液体が燃え始める。
「どうだ!」
「いや、無理だろ」
「ぎぃやややや!!」
 ハイトレントは枝を一本大きくして風を起こす。その風に吹き飛ばされて炎は消えてしまった。
「エンカさんとネンカさんで出来なかったのにあんたに出来るわけないでしょアホ!」
「ゔぇ!?キョウカさん酷くね!?」
 言い方は酷いが実際その通りだ。既に冒険者であり炎をメインに使う人二人係で無理だったのに駆け出しの、しかもポーション頼りのライヤがハイトレントを倒せる筈がない。
「大丈夫だ。私に作戦がある。嬢ちゃん!その馬鹿どもはいつ回復する!?」
「あと五分もあれば完治です!」
「上々だ。ライヤとか言ったな。さっきの布の上位版とかあるか?」
「え?ありますけど俺の力じゃすぐ振り解かれ」
「充分だ」
 マキはライヤにしゃがむように命じると耳元で作戦を呟く。そしてハイトレントを見る。
「ギィャャ!!」
 ハイトレントが枝を伸ばし二人を襲う。しかしマキは襲い来る枝を丁寧に切り裂きハイトレントの間合いに入る。
「よぉ。よくも私の可愛い妹をやってくれたな」
「ぎぃぃぃ!?」
 そしてハイトレントの体を真っ二つに切り裂いた。
「おら!今だライヤ!」
「え!?はい!捕縛ワイヤー!」
 ライヤが捕まえるのはトレントの枝ではない。体をそのものだ。
「ギィャャ!!」
「ハイトレントってのは体を修復する時は攻撃は出来ないのさ。だからこうやっちまえば暫く攻撃は出来ねえ」
 マキが身動きの取れないハイトレントの左半分を勝ち誇った様に踏みつける。その姿はライヤの憧れていた冒険者そのものだ。
「師匠と呼ばせてください」
「おお!?いやまあ、呼びたいなら呼びな」
 真っ直ぐ純粋、そして輝きを抑えきれぬ目で頼んだら少し照れた様に了承してくれた。それから数分。
「ふっかーつ!」
「待たせたなマキ姉!」
「おお、やっちまいな」
 マキは勝ち誇った様にしているがライヤにはまだ一抹の不安があった。
「ぎゃゃ!?ぎぃゃやゃやや!!!」
「うわっ!?」
「ちっ!しぶといぞクソが」
 最後の力を振り絞ってか半分にされていたハイトレントが合体して元通りになる。しかも先程よりも大きい。
「そんで?それだけで私達に勝てるとでも!?」
 マキは勝ち誇った顔でニヤつくハイトレントにそう叫ぶと中指に光る指輪を発動させる。
「うおおおおお!」
「マキ姉パワー!」
 マキの指輪が光り始めるとそれに呼応してエンカとネンカの指輪も光る。真っ赤な大きな光だ。
「「ファイヤー!!!」」
 二人の炎が合わさりハイトレントへ放出される。その炎は。
「ぎぃ、ぎぃや?」
 始めの炎とは比べ物にならない威力と大きさだった。
「ぎぃやあゃあやあやあ!」
 エンカ、ネンカ。そしてマキの合体技に直撃したハイトレントは数秒と持たずに肺になった。
  ◇
「す、凄え。なんだあの炎!さっきみたエンカさんとネンカさん。いや、師匠達の炎とは全然ちげえ!」
「へへん!そうだろそうだろ」
「へへん!実はこの高威力の炎の正体はマキ姉なのだ」
 二人が誇らしげに胸を張り背後にいるマキを目立たせる様に両手をマキに向ける。
「ああ。私の指輪は昇格の指輪。対象の指輪のランクを一つ上げるのが効果さ」
 昇格の指輪。ランクA。昇格させられる指輪の数は二つが限界だ。ちなみにエンカとネンカの指輪はBランクだ。エンカとネンカの火力を増幅させる薪。それがマキなのだ。
「本当に凄え!冒険者!凄すぎる!」
「いや、お前らの実力もなかなかのもんだったぜ。将来有望な後輩だよ」
「歓迎するぜ後輩」
「どうせなら冒険者登録まで付き合ってやるよ後輩」
 ライヤにとっては物凄くありがたい申し出をしたネンカにライヤが笑顔で了承しようとすると、キョウカに引っ張られた。
「え!?何だよ」
「何だよじゃない。何しようとしてんの。あの三人が行こうとしてる街にはオリジナルリングはない。だからスルーするよ」
「えー!?冒険者登録くらいはさせてくれよ!頼む!」
「ダメ。ただでさえ時間ないんだから」
 ファイヤーシスターズが二人の会話を盗み聞きしようとするとボイスが目の前に現れ盗み聞きしない様にする。と、それはそうとライヤは諦めずに交渉する。その結果ボイスを突破してきた三人のクウラの街限定スイーツの話で手が打たれた。
「師匠!街に着くまでに今までの色んな冒険譚を聞かせてくれよ!」
「おおいいぜ!そうだなー。じゃあ私達が駆け出しだった頃の盗賊退治の話とかどうだ」
「おおー!」
 マキの冒険譚に目を輝かせるライヤと苦笑いしながら聞くキョウカ。その話の大まかな内容は三回目のクエスト中に盗賊に遭遇したが簡単に撃退してやったという話。いわば自慢話だ。
「懐かしいよなー。あの盗賊共」
「それって何年前の話だ?」
「そうだな。ネンカ達が十八の頃くらいか?」
「「へ?」」
 ネンカの意外な言葉にライヤとキョウカは耳を疑った。
「そうだっけか?つーことは随分前だな」
「マキ姉がまだ若かった頃だな」
「マキ姉昔は可愛かったのになー」
「ほとんど変わってねーだろうが。ずっとこの身長だしな」
 マキとエンカ、ネンカ。この三人見た目は小さく小学生にも見えるが。実の年齢は何歳なのだろうか。
「あ、あの。師匠?師匠達って何年くらい冒険者やってるんですか?」
(ナイス質問!その質問ならなんとなく歳が分かる!)
 ライヤのそれとない質問には明確な答えが返ってきた。
「あーそうだな。私が十八の頃に始めたから、もうかれこれ八年になるな!」
「エンカ達も十八からだったからー?」
「五年だよ。引き算も出来ねえのかエンカ」
 つまり。今の年齢は。
「マキさんが二十六でエンカさんネンカさんが二十三ー!?」
 キョウカの驚きの声が馬車を震わせた。そんなこんなで色々ありながら馬車はクウラの街へ到着した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...