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1章 旅立ち
5話 マキの指輪
しおりを挟む「え?」
「へ?」
「エンカさん!ネンカさん!」
トレントに貫かれたエンカとネンカを見てキョウカが叫ぶ。そしてマキがその場から消えるかと思われるほどの速度で走り出すと短剣を取り出しトレントの枝を切り落とした。
「ぎぃやゃゃゃ!」
「二人共無事か!?」
トレントから背を向けて二人の元へ走り出すマキ。しかしトレントの枝は根本から復活していきマキへと襲いかかる。
「ボイス!」
「捕縛布!」
しかしボイスの音の衝撃により枝を止め、その隙にライヤが枝を止めた。
「あっ、悪い。取り乱した」
「大丈夫です、二人は必ず救います。キュア」
「キュキュ」
ボイスがキョウカに手を振るとその場から消える。変わりにキュアが空中から現れて地面に華麗に着地する。
「妖精!?」
「私の友達です。とにかくマキさんはトレントを」
キュアが二人の治療を始めるのを見た後にマキはライヤの手助けをする為に走り出した。
「おおおお!もう無理、限界ぃぃ!」
「男ならもうちょい頑張れや!」
ライヤが捕らえていた枝を再びマキが切り落としてライヤの横に着地する。だが。
「うぇ!?また復活してきやがる!なんだよこれ!」
「こいつはハイトレントだ。トレントの上位種。こいつを殺すには一片残らず燃やさないといけねえ」
「なら!フレイムポーション!」
ライヤが赤い液体の入った瓶を取り出すとそれをハイトレントに投げつける。その液体がハイトレントにかかると液体が燃え始める。
「どうだ!」
「いや、無理だろ」
「ぎぃやややや!!」
ハイトレントは枝を一本大きくして風を起こす。その風に吹き飛ばされて炎は消えてしまった。
「エンカさんとネンカさんで出来なかったのにあんたに出来るわけないでしょアホ!」
「ゔぇ!?キョウカさん酷くね!?」
言い方は酷いが実際その通りだ。既に冒険者であり炎をメインに使う人二人係で無理だったのに駆け出しの、しかもポーション頼りのライヤがハイトレントを倒せる筈がない。
「大丈夫だ。私に作戦がある。嬢ちゃん!その馬鹿どもはいつ回復する!?」
「あと五分もあれば完治です!」
「上々だ。ライヤとか言ったな。さっきの布の上位版とかあるか?」
「え?ありますけど俺の力じゃすぐ振り解かれ」
「充分だ」
マキはライヤにしゃがむように命じると耳元で作戦を呟く。そしてハイトレントを見る。
「ギィャャ!!」
ハイトレントが枝を伸ばし二人を襲う。しかしマキは襲い来る枝を丁寧に切り裂きハイトレントの間合いに入る。
「よぉ。よくも私の可愛い妹をやってくれたな」
「ぎぃぃぃ!?」
そしてハイトレントの体を真っ二つに切り裂いた。
「おら!今だライヤ!」
「え!?はい!捕縛ワイヤー!」
ライヤが捕まえるのはトレントの枝ではない。体をそのものだ。
「ギィャャ!!」
「ハイトレントってのは体を修復する時は攻撃は出来ないのさ。だからこうやっちまえば暫く攻撃は出来ねえ」
マキが身動きの取れないハイトレントの左半分を勝ち誇った様に踏みつける。その姿はライヤの憧れていた冒険者そのものだ。
「師匠と呼ばせてください」
「おお!?いやまあ、呼びたいなら呼びな」
真っ直ぐ純粋、そして輝きを抑えきれぬ目で頼んだら少し照れた様に了承してくれた。それから数分。
「ふっかーつ!」
「待たせたなマキ姉!」
「おお、やっちまいな」
マキは勝ち誇った様にしているがライヤにはまだ一抹の不安があった。
「ぎゃゃ!?ぎぃゃやゃやや!!!」
「うわっ!?」
「ちっ!しぶといぞクソが」
最後の力を振り絞ってか半分にされていたハイトレントが合体して元通りになる。しかも先程よりも大きい。
「そんで?それだけで私達に勝てるとでも!?」
マキは勝ち誇った顔でニヤつくハイトレントにそう叫ぶと中指に光る指輪を発動させる。
「うおおおおお!」
「マキ姉パワー!」
マキの指輪が光り始めるとそれに呼応してエンカとネンカの指輪も光る。真っ赤な大きな光だ。
「「ファイヤー!!!」」
二人の炎が合わさりハイトレントへ放出される。その炎は。
「ぎぃ、ぎぃや?」
始めの炎とは比べ物にならない威力と大きさだった。
「ぎぃやあゃあやあやあ!」
エンカ、ネンカ。そしてマキの合体技に直撃したハイトレントは数秒と持たずに肺になった。
◇
「す、凄え。なんだあの炎!さっきみたエンカさんとネンカさん。いや、師匠達の炎とは全然ちげえ!」
「へへん!そうだろそうだろ」
「へへん!実はこの高威力の炎の正体はマキ姉なのだ」
二人が誇らしげに胸を張り背後にいるマキを目立たせる様に両手をマキに向ける。
「ああ。私の指輪は昇格の指輪。対象の指輪のランクを一つ上げるのが効果さ」
昇格の指輪。ランクA。昇格させられる指輪の数は二つが限界だ。ちなみにエンカとネンカの指輪はBランクだ。エンカとネンカの火力を増幅させる薪。それがマキなのだ。
「本当に凄え!冒険者!凄すぎる!」
「いや、お前らの実力もなかなかのもんだったぜ。将来有望な後輩だよ」
「歓迎するぜ後輩」
「どうせなら冒険者登録まで付き合ってやるよ後輩」
ライヤにとっては物凄くありがたい申し出をしたネンカにライヤが笑顔で了承しようとすると、キョウカに引っ張られた。
「え!?何だよ」
「何だよじゃない。何しようとしてんの。あの三人が行こうとしてる街にはオリジナルリングはない。だからスルーするよ」
「えー!?冒険者登録くらいはさせてくれよ!頼む!」
「ダメ。ただでさえ時間ないんだから」
ファイヤーシスターズが二人の会話を盗み聞きしようとするとボイスが目の前に現れ盗み聞きしない様にする。と、それはそうとライヤは諦めずに交渉する。その結果ボイスを突破してきた三人のクウラの街限定スイーツの話で手が打たれた。
「師匠!街に着くまでに今までの色んな冒険譚を聞かせてくれよ!」
「おおいいぜ!そうだなー。じゃあ私達が駆け出しだった頃の盗賊退治の話とかどうだ」
「おおー!」
マキの冒険譚に目を輝かせるライヤと苦笑いしながら聞くキョウカ。その話の大まかな内容は三回目のクエスト中に盗賊に遭遇したが簡単に撃退してやったという話。いわば自慢話だ。
「懐かしいよなー。あの盗賊共」
「それって何年前の話だ?」
「そうだな。ネンカ達が十八の頃くらいか?」
「「へ?」」
ネンカの意外な言葉にライヤとキョウカは耳を疑った。
「そうだっけか?つーことは随分前だな」
「マキ姉がまだ若かった頃だな」
「マキ姉昔は可愛かったのになー」
「ほとんど変わってねーだろうが。ずっとこの身長だしな」
マキとエンカ、ネンカ。この三人見た目は小さく小学生にも見えるが。実の年齢は何歳なのだろうか。
「あ、あの。師匠?師匠達って何年くらい冒険者やってるんですか?」
(ナイス質問!その質問ならなんとなく歳が分かる!)
ライヤのそれとない質問には明確な答えが返ってきた。
「あーそうだな。私が十八の頃に始めたから、もうかれこれ八年になるな!」
「エンカ達も十八からだったからー?」
「五年だよ。引き算も出来ねえのかエンカ」
つまり。今の年齢は。
「マキさんが二十六でエンカさんネンカさんが二十三ー!?」
キョウカの驚きの声が馬車を震わせた。そんなこんなで色々ありながら馬車はクウラの街へ到着した。
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