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1章 旅立ち
7話 初クエスト
しおりを挟む「うっし。ここからは魔獣が結構出てくるから気を抜くなよ。くれぐれも自分勝手に動くな」
「うっす!」
偶然知り合ったファイヤーシスターズと共に初クエストを達成すべくライヤとキョウカはボアイノシシが出るという林へ入っていた。
「入っていた、じゃない!で、結局ボアイノシシって何なの!?豚なの?イノシシなの!?」
「ボアイノシシはボアイノシシだろ」
「ボアイノシシってのは豚の姿をしたイノシシで自分の姿以外のものが視界に入ると子供を守る為に襲いかかってくる魔獣だ。ちなみにごく稀に角の生えたボアイノシシがいるな。そんでもって焼いて食べると豚肉の味がする」
「・・・イノシシって事?」
「・・・イノシシではねえな。ボアイノシシ」
「「・・・」」
何故か二人は沈黙する。恐らくボアイノシシについて考えているのだろうが幾ら考えても答えが出る訳ではない。それに。
「何ボーッとしてんだ!ここが危険な場所だって忘れてんのかぁ!?」
その通り。ここはライヤが知っているどこよりも恐ろしい場所。冒険者の世界なのだ。
「そうだな!考えても仕方ないし初クエスト頑張るぜ!!」
「全く。お前らもしっかりこいつらの面倒見てやれ、よ?」
マキがエンカとネンカに話しかけるが返事がない。それになんだか様子がおかしい。
「肉」
「菓子」
「は?」
「「食事だー!!」」
目のハイライトが消えかかっているエンカとネンカはそう言うと茂みの奥深くへと入り込んでいった。
「ええ!?師匠達どうしたんだ!?」
「あいつは!イリュージョンバットか!」
エンカ、ネンカが向かう先の少し遠くに紺色の体をしたコウモリ型の魔獣が見える。
「あれはどんな魔族なの!?」
「正確に言うとあいつは魔族じゃねえんだが、まあ説明は後!追うぞ!」
キョウカの質問に答えられる余裕はないのかマキが素早く二人を追う。あれが魔族ではないと言う事の説明をしておこう。魔族には主に二種類が存在する。一つは自分の意思を持っており強力な力や魔力を持つ魔族。そしてもう一つはその魔族に作られた偽りの魔族。魔獣だ。魔獣は主にこの世界に存在する生物を元に作られている。ボアイノシシやイリュージョンバットもそうだ。
「イリュージョンバットは幻覚を見せるんだよ!」
「なるほど。エンカさんとネンカさんは幻覚を見てる訳だね」
マキを見失わないように必死に走るキョウカに横からライヤが口を出す。イリュージョンバットは通常のコウモリと同じ様に超音波を出すが、それが魔獣と通常のコウモリの違いだ。イリュージョンバットの超音波には人に触れると幻覚症状を引き起こす効果があるのだ。そして幻覚を見せている人間を喰らう。
「じゃあめちゃくちゃやばいじゃん!」
「だな!でもマキ師匠なら大丈夫だ!」
ライヤはマキを信じてただ走る。そして視界にマキが入ったと思った瞬間。
「あっ」
キョウカの足場が崩れて落ちそうになっているのも見えた。
「キョウカ!」
ライヤの足は即座に引き返してキョウカを抱きしめる形になった。
「なっ!」
突然の事に顔を赤くするキョウカだが次の瞬間大きな衝撃が二人を襲う。どうやら知らない内に随分と高い所を登っていたようだ。落下が終わった時にはかなりの重傷を負っていた。ライヤが。
「ちょっと!ライヤ!しっかりして!」
キョウカを落下の衝撃から守ったライヤは背中から多くの血を流していた。他の傷もかなり深い。だがライヤは。
「キョウカ、無事か。良かった」
自分の事よりキョウカの心配をして、意識を失った。
◇
「ん?ここは」
「目、覚めた?ここは近場にあった洞窟」
どれだけ眠っていたのか分からないがライヤが目を覚ますと頭の下にはクッションがありキョウカの上着が体にかかっていた。
「俺、どんくらい寝てた?」
「三十分くらい」
「思ったより寝てねえ!なら良かった!」
なんだが少し拍子抜けしたが寝過ぎていないのならいいだろう。それより今は。
「傷、治してくれたんだんだな。サンキュー」
「そりゃ私が悪かったんだし、助けてもらっちゃったし、こっちこそありがと」
「っ!」
赤面してお礼を言うキョウカに思わずライヤも赤面してしまう。そして二人とも視線を移す。そこからは少しだけ気まずい雰囲気が流れた。
(どうしよう、いつも何話してたっけ?)
(落ち着けよー。平常心だ平常心)
そんな雰囲気を壊す様に、奴は現れた。
「グオオオオ!!」
「なっ!熊!?」
「あれは攻撃力に極振りしまくった魔獣、バスターベアー!!上級冒険者でも苦戦する程の魔獣だぞ!」
通常の熊よりも三倍ほど大きな体。体のあちこちにある赤いあざ。それがバスターベアーの特徴だ。出会ったら逃げるのが通常。
「でも逃げ場がねえよ!そうか!この洞窟はバスターベアーの住処だったのか!」
「グオオオオ!!」
「うぇぇぇぇ!」
バスターベアーの振り下ろした腕を情けない声をあげながらなんとか回避する。
「逃げろ!」
「言われなくとも!」
ライヤが叫ぶとキョウカも同じ事を考えていたのか同時に走り出す。しかしバスターベアーは追ってくる。
「え!?速っ!あいつそんなに速いの!?」
「これ逃げられねえぞ!」
なんとか洞窟の外へ逃げ出したはいいがバスターベアーの足は思いの外速い。
「やるしかねえ。捕縛ワイヤー!」
捕縛布より更に頑丈なワイヤーをバスターベアーの片腕に巻きつける。そしてもう片方もと思ったが、
「グオオオオ!!」
「あっかり破られたー!?」
もう片方の腕に生えた凶暴な爪により破壊された。正直もう勝ち目がない。
「ボイス!」
「グァァァァ!!」
キョウカが音の準妖精ボイスを呼び出しバスターベアーの能に音を流し込む。その隙に。
「ライヤ!これを!」
「っ!こいつは!」
キョウカが投げたそれを掴むとそれは光り輝く指輪だった。雷鳴の指輪。この世界を変えた八つの指輪の一つだ。
「あんたに託す!やっちゃって!!」
「おう!!」
ライヤが雷鳴の指輪を人差し指に装着すると早速ライヤの体に電流が走る。
「グア!?グオオオオ!!!」
それを確認したバスターベアーはボイスを殴り飛ばしライヤへ一直線に走り出した。
「なっ!?うおっ!」
「ボイス!ライヤ!」
吹き飛ばされ壁に激突したボイスは力尽きて消える。ライヤはなんとか攻撃を躱したが爪が頬を少し斬っていた。
(なんでいきなり俺に?危険を感じたのか?それにしてもさっきまでボイスの攻撃は聞いてたのにどうして簡単に振り解けた?)
「ライヤ!」
思考はキョウカの言葉に遮られる。目の前にはバスターベアーの腕。
「くっ!大盾!」
収納の指輪から放出した大盾で攻撃を防ぐ。考えるのは後だ。今はバスターベアーを倒して
「キョウカを守らねえと」
その想いに共鳴し雷鳴の指輪は雷を放つ。
「いっけぇぇぇ!!サンダーボルトォォォォォ!!」
ライヤが雷鳴の指輪を空高く翳す。すると指輪からではなく空から雷がバスターベアーに襲いかかった。
「グギャァァァ!!」
雷が命中したバスターベアーは力尽きて倒れる。恐る恐る生命確認をすると息はしていない。
「おっ、しゃぁぁぁ!!」
「やったー!やったよライヤー!!」
初めてのクエストとは思えない強敵を倒したライヤとキョウカは大声を上げて喜んだ。
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