original ring

藤丸セブン

文字の大きさ
7 / 81
1章 旅立ち

7話 初クエスト

しおりを挟む

「うっし。ここからは魔獣が結構出てくるから気を抜くなよ。くれぐれも自分勝手に動くな」
「うっす!」
 偶然知り合ったファイヤーシスターズと共に初クエストを達成すべくライヤとキョウカはボアイノシシが出るという林へ入っていた。
「入っていた、じゃない!で、結局ボアイノシシって何なの!?豚なの?イノシシなの!?」
「ボアイノシシはボアイノシシだろ」
「ボアイノシシってのは豚の姿をしたイノシシで自分の姿以外のものが視界に入ると子供を守る為に襲いかかってくる魔獣だ。ちなみにごく稀に角の生えたボアイノシシがいるな。そんでもって焼いて食べると豚肉の味がする」
「・・・イノシシって事?」
「・・・イノシシではねえな。ボアイノシシ」
「「・・・」」
 何故か二人は沈黙する。恐らくボアイノシシについて考えているのだろうが幾ら考えても答えが出る訳ではない。それに。
「何ボーッとしてんだ!ここが危険な場所だって忘れてんのかぁ!?」
 その通り。ここはライヤが知っているどこよりも恐ろしい場所。冒険者の世界なのだ。
「そうだな!考えても仕方ないし初クエスト頑張るぜ!!」
「全く。お前らもしっかりこいつらの面倒見てやれ、よ?」
 マキがエンカとネンカに話しかけるが返事がない。それになんだか様子がおかしい。
「肉」
「菓子」
「は?」
「「食事だー!!」」
 目のハイライトが消えかかっているエンカとネンカはそう言うと茂みの奥深くへと入り込んでいった。
「ええ!?師匠達どうしたんだ!?」
「あいつは!イリュージョンバットか!」
 エンカ、ネンカが向かう先の少し遠くに紺色の体をしたコウモリ型の魔獣が見える。
「あれはどんな魔族なの!?」
「正確に言うとあいつは魔族じゃねえんだが、まあ説明は後!追うぞ!」
 キョウカの質問に答えられる余裕はないのかマキが素早く二人を追う。あれが魔族ではないと言う事の説明をしておこう。魔族には主に二種類が存在する。一つは自分の意思を持っており強力な力や魔力を持つ魔族。そしてもう一つはその魔族に作られた偽りの魔族。魔獣だ。魔獣は主にこの世界に存在する生物を元に作られている。ボアイノシシやイリュージョンバットもそうだ。
「イリュージョンバットは幻覚を見せるんだよ!」
「なるほど。エンカさんとネンカさんは幻覚を見てる訳だね」
 マキを見失わないように必死に走るキョウカに横からライヤが口を出す。イリュージョンバットは通常のコウモリと同じ様に超音波を出すが、それが魔獣と通常のコウモリの違いだ。イリュージョンバットの超音波には人に触れると幻覚症状を引き起こす効果があるのだ。そして幻覚を見せている人間を喰らう。
「じゃあめちゃくちゃやばいじゃん!」
「だな!でもマキ師匠なら大丈夫だ!」
 ライヤはマキを信じてただ走る。そして視界にマキが入ったと思った瞬間。
「あっ」
 キョウカの足場が崩れて落ちそうになっているのも見えた。
「キョウカ!」
 ライヤの足は即座に引き返してキョウカを抱きしめる形になった。
「なっ!」
 突然の事に顔を赤くするキョウカだが次の瞬間大きな衝撃が二人を襲う。どうやら知らない内に随分と高い所を登っていたようだ。落下が終わった時にはかなりの重傷を負っていた。ライヤが。
「ちょっと!ライヤ!しっかりして!」
 キョウカを落下の衝撃から守ったライヤは背中から多くの血を流していた。他の傷もかなり深い。だがライヤは。
「キョウカ、無事か。良かった」
 自分の事よりキョウカの心配をして、意識を失った。
  ◇
「ん?ここは」
「目、覚めた?ここは近場にあった洞窟」
 どれだけ眠っていたのか分からないがライヤが目を覚ますと頭の下にはクッションがありキョウカの上着が体にかかっていた。
「俺、どんくらい寝てた?」
「三十分くらい」
「思ったより寝てねえ!なら良かった!」
 なんだが少し拍子抜けしたが寝過ぎていないのならいいだろう。それより今は。
「傷、治してくれたんだんだな。サンキュー」
「そりゃ私が悪かったんだし、助けてもらっちゃったし、こっちこそありがと」
「っ!」
 赤面してお礼を言うキョウカに思わずライヤも赤面してしまう。そして二人とも視線を移す。そこからは少しだけ気まずい雰囲気が流れた。
(どうしよう、いつも何話してたっけ?)
(落ち着けよー。平常心だ平常心)
 そんな雰囲気を壊す様に、奴は現れた。
「グオオオオ!!」
「なっ!熊!?」
「あれは攻撃力に極振りしまくった魔獣、バスターベアー!!上級冒険者でも苦戦する程の魔獣だぞ!」
 通常の熊よりも三倍ほど大きな体。体のあちこちにある赤いあざ。それがバスターベアーの特徴だ。出会ったら逃げるのが通常。
「でも逃げ場がねえよ!そうか!この洞窟はバスターベアーの住処だったのか!」
「グオオオオ!!」
「うぇぇぇぇ!」
 バスターベアーの振り下ろした腕を情けない声をあげながらなんとか回避する。
「逃げろ!」
「言われなくとも!」
 ライヤが叫ぶとキョウカも同じ事を考えていたのか同時に走り出す。しかしバスターベアーは追ってくる。
「え!?速っ!あいつそんなに速いの!?」
「これ逃げられねえぞ!」
 なんとか洞窟の外へ逃げ出したはいいがバスターベアーの足は思いの外速い。
「やるしかねえ。捕縛ワイヤー!」
 捕縛布より更に頑丈なワイヤーをバスターベアーの片腕に巻きつける。そしてもう片方もと思ったが、
「グオオオオ!!」
「あっかり破られたー!?」
 もう片方の腕に生えた凶暴な爪により破壊された。正直もう勝ち目がない。
「ボイス!」
「グァァァァ!!」
 キョウカが音の準妖精ボイスを呼び出しバスターベアーの能に音を流し込む。その隙に。
「ライヤ!これを!」
「っ!こいつは!」
 キョウカが投げたそれを掴むとそれは光り輝く指輪だった。雷鳴の指輪。この世界を変えた八つの指輪の一つだ。
「あんたに託す!やっちゃって!!」
「おう!!」
 ライヤが雷鳴の指輪を人差し指に装着すると早速ライヤの体に電流が走る。
「グア!?グオオオオ!!!」
 それを確認したバスターベアーはボイスを殴り飛ばしライヤへ一直線に走り出した。
「なっ!?うおっ!」
「ボイス!ライヤ!」
 吹き飛ばされ壁に激突したボイスは力尽きて消える。ライヤはなんとか攻撃を躱したが爪が頬を少し斬っていた。
(なんでいきなり俺に?危険を感じたのか?それにしてもさっきまでボイスの攻撃は聞いてたのにどうして簡単に振り解けた?)
「ライヤ!」
 思考はキョウカの言葉に遮られる。目の前にはバスターベアーの腕。
「くっ!大盾!」
 収納の指輪から放出した大盾で攻撃を防ぐ。考えるのは後だ。今はバスターベアーを倒して
「キョウカを守らねえと」
 その想いに共鳴し雷鳴の指輪は雷を放つ。
「いっけぇぇぇ!!サンダーボルトォォォォォ!!」
 ライヤが雷鳴の指輪を空高く翳す。すると指輪からではなく空から雷がバスターベアーに襲いかかった。
「グギャァァァ!!」
 雷が命中したバスターベアーは力尽きて倒れる。恐る恐る生命確認をすると息はしていない。
「おっ、しゃぁぁぁ!!」
「やったー!やったよライヤー!!」
 初めてのクエストとは思えない強敵を倒したライヤとキョウカは大声を上げて喜んだ。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...