9 / 81
2章 冒険の仲間
9話 ジュウカの村
しおりを挟む「そういえばさ、オリジナルリングって一匹の竜から作られたのか?」
「八匹の竜が一個ずつ作ったんだけど、急にどうしたのさ?」
馬車に揺られながらももうすぐ目的地に着きそうな時間にライヤはキョウカになんの前触れもない質問をしていた。
「だって俺雷鳴の指輪以外のオリジナルリングの事を何もしらないだろ?これから指輪集めをするのなら確実に指輪の能力は知っておくべきだ」
「確かにね。私としても教えて損はないし、教えておくか」
気分を切り替える為かキョウカは席を立つ。ちなみに今の馬車の中には二人以外の乗客はいない。皆目的地の街より前に馬車を降りて行った。
「とりあえず第二のオリジナルリングから。オリジナルリングには、きゃあ!」
「うわっ!」
走っていた馬車が急ブレーキをかけて止まる。その反動でライヤとキョウカは地面に強く激突した。
「何このデジャヴ!前の馬車も急停車したよね!」
「まあまあ、それより今きゃあって」
「何があったんですか!?理由次第じゃ運賃タダにしてもらいますから!」
キョウカが誤魔化す様に馬車の外に出た。
「うぅ。お、お恵みを」
そこには馬車の前で倒れ伏している四十代程度の男の姿があった。
「なっ!大丈夫ですか!?」
キョウカは直ぐに男に駆け寄ると男の状況を確認した。外傷はない。先程の言葉からして病でもなさそうだが。
「な、なにか食べもの」
「空腹で倒れたって事?まあ考えるのは後か」
キョウカが鞄から今日の昼ごはんであるパンを取り出すと、男はパンを即座に奪い口に運んだ。
「あっ!ちょっと!」
「どうした?」
「ライヤ!このおっさんが!」
少し遅れてきたライヤにキョウカが説明をしようと口を開くとその前に男が口を出した。
「そこの嬢ちゃんが飢えて死にそうな俺にパンを恵んでくれたって話さ。いやいい話だな」
「あんた死にそうな程食べてない訳じゃないだろ!状況を見ておかしいとは思ってたんだよ!」
「・・・キョウカの言うことがホントならあなたは盗みを働いた訳ですが」
ライヤが静かに、しかし威圧のある声を出すと男は手を上げて敵意がない事をアピールする。
「そう怒りなさるな。俺は食べものって言っただけだぜ?それで勘違いしてパンを渡してきたのは嬢ちゃんだ」
「この男ー!」
キョウカが感情を剥き出しにして怒るがそれをライヤが静止する。
「そんなに怒るなよ。俺の昼飯やるから。な?」
「ご飯が無くなって怒ってるんじゃない!いや、それもあるけど、それもあるけど!」
恐らく八割ご飯が無くなったからだろう。その証拠にライヤの言葉の後からは少し落ち着けている様に感じる。
「おっさんはこんな事で何を」
ライヤはそう言いかけてやめた。何故なら周りを見渡すとそこには幾つかの家がある集落の様な場所に辿り着いていたからだ。
「御者のおっちゃん。俺たちここまででいいよ。ありがとな」
「あ、はい。どうかお気をつけて」
御者の男にライヤが金を渡すと馬車は逃げる様に村から離れていく。
「さておっさん。交渉をしないか?」
「交渉?」
「今回の件をある事を引き受けてくれればチャラにするって話さ」
「ちょっと勝手に!」
「ちゃんとご飯あげるから」
「ご飯で怒ってるんじゃない!!」
勝手に交渉を持ちかけたライヤにキョウカが赤い顔をして怒り出す。そんなにご飯の為だと思われたくないのだろうか。
「んで、内容は?」
どうやら男の方も交渉に乗り気な様だ。こんな事をする以上覚悟は出来ていたのだろうか。
「簡単さ。この村で最近おかしな事はないかを聞きたい。例えば急に悪いやつがきて村を支配したとか」
「・・・いや、ねえな。いや待て。もしかしたらこれだけあれば思い出せるかも」
男は悩む素振りを見せながら掌を開きライヤに見せつける。
「情報次第だ」
「なるほど。だが話したら消えるなんて可能性があるだろ?」
「見ず知らずのおっちゃんの為に大事な昼飯渡した子がそんな事するとでも?」
「大事って訳じゃないし!そんなに食い意地はってないし!」
赤い顔を更に赤くしてライヤをポカポカと殴るキョウカはとりあえず置いておいて、男はライヤの言葉を聞いてため息を吐いた。
「兄ちゃん交渉が上手いな。余程歴戦の戦士なのか?なんてな」
「交渉は冒険者の心得の一つさ」
「っ!冒険者」
男はライヤの言葉に過剰に反応すると真面目な顔で話を始めた。
「この村で起こってる異変だったな。それは一言で言うと、消失だ」
「消失?」
「ああ。急に何もしてなかったのに物が消えちまう。財布が主になくなる物だが、他にも金目の物や食事、子供の菓子なんかも消えてる」
「盗み、ではないのか?」
ライヤが男に聞くと男は少し悩んだ後首を振った。
「確かに盗みの可能性がかなり高いが、目撃者はほとんどいない。よって確証がないのさ」
「ほとんどって事は、何人かは見たんだな」
「いいや、一人だけさ。この俺だ」
男の言葉にキョウカが信用出来ないと言わんばかりの目を向けるが男は少し笑うだけ。それが更にキョウカを苛立たせた。
「その犯人の特徴を教えてくれ」
「フードを深く被っていたせいで顔は分からねえが小柄な奴だった。ありゃあ十四から十六程度の歳だろうな」
「犯人は子供?だがそれならのお菓子が消える理由も分かる」
「俺が知ってるのはここまでだ。おっと、これは本当だぜ?俺が嘘ついた事あったかよ?」
「存在そのものが胡散臭い!ライヤ、もう行こ!」
男のなんとも言えない笑みに我慢の限界が来たキョウカがライヤの腕を掴み引っ張り始める。
「分かった。んじゃこれ」
ライヤは男の手元にお札を渡す。そこには六千イースがあった。
「ははっ!こいつはいいお客さんだ!これからもジュウカの村で情報が欲しけりゃあの店でドーベルって奴を呼べっていいな!そうすりゃ幾らでも情報をやるよ!」
「そいつはどうも、ドーベルさん」
ライヤはドーベルに軽く手を振るとそのまま村の中へと入っていった。
「精々子娘に大切なもん取られねえ様にな!」
◇
ドーベルの姿が見えなくなったくらいの場所。ライヤはどっと体の力を抜いていた。
「ふはぁー!つっかれたぁー!」
「ライヤのあれ演技だったんだね。完全に別人みたいだったよ」
「まあな。俺の性格は交渉には不向きだ。だから交渉する時には厳しく、けど相手にもメリットがある様に!でも厳しくだ」
「厳しく言い過ぎじゃない?まあそうでもしない限りあんたは相手に甘いだろうけど」
キョウカの言葉を否定したくても出来ない。実際ライヤは自分でも思うくらい甘いから。
「それにしてもこの村ジュウカって名前なんだな」
「うん。昔獣人が住んでいた村なんだって」
「マジ!?じゃあ獣人に会えたりする訳!?」
ライヤの目がキラキラと光りまだ見ぬ獣人への憧れが募る。獣人。犬耳や猫耳、狐とか様々な耳。あれ。耳しか言ってない。尻尾とかもあるのに。
「獣人ならいねえぞ」
「うわぁ!ドーベルさん!?なんでここに」
「お前ら宿とか取ってねえだろ。だからこの村の頂点に君臨する俺が宿を紹介してやろうと思ってね」
胸を張って自分の立場を上に上げる。何が頂点だよ。だが宿を紹介してくれるという話はありがたい申し出だ。
「自分達で探すので結構です」
「ちょっとキョウカ!」
「このおっさんの事だから高い宿を紹介してくるに決まってる」
「豪華なホテルと言え」
キョウカの読み通り本当にお高い宿を紹介するつもりだったらしい。ライヤは交渉モードが切れた瞬間に簡単にドーベルに騙された事に軽いショックを受けた。
「なんだよ。熱い夜を過ごすんならボロい宿屋じゃ苦情入るぞ」
「なっ!そそそそんな事しねえし!?」
「は?何どう言う事?」
先程とは逆にライヤの顔が赤くなりキョウカは何事もなかったかの様な顔をする。実際に何も分かっていないのだが。
「それより!獣人にはもう会えないってのはなんで!?獣人は人に従ってたからまだ生き残ってる筈だろ?」
そう。ドワーフは人に逆らったせいで滅ぼされてしまったが妖精、獣人は生きている筈。
「最近滅ぼされのさ。人間の王への反逆を考えているという無実の罪でな」
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる