original ring

藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

9話 ジュウカの村

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「そういえばさ、オリジナルリングって一匹の竜から作られたのか?」
「八匹の竜が一個ずつ作ったんだけど、急にどうしたのさ?」
 馬車に揺られながらももうすぐ目的地に着きそうな時間にライヤはキョウカになんの前触れもない質問をしていた。
「だって俺雷鳴の指輪以外のオリジナルリングの事を何もしらないだろ?これから指輪集めをするのなら確実に指輪の能力は知っておくべきだ」
「確かにね。私としても教えて損はないし、教えておくか」
 気分を切り替える為かキョウカは席を立つ。ちなみに今の馬車の中には二人以外の乗客はいない。皆目的地の街より前に馬車を降りて行った。
「とりあえず第二のオリジナルリングから。オリジナルリングには、きゃあ!」
「うわっ!」
 走っていた馬車が急ブレーキをかけて止まる。その反動でライヤとキョウカは地面に強く激突した。
「何このデジャヴ!前の馬車も急停車したよね!」
「まあまあ、それより今きゃあって」
「何があったんですか!?理由次第じゃ運賃タダにしてもらいますから!」
 キョウカが誤魔化す様に馬車の外に出た。
「うぅ。お、お恵みを」
 そこには馬車の前で倒れ伏している四十代程度の男の姿があった。
「なっ!大丈夫ですか!?」
 キョウカは直ぐに男に駆け寄ると男の状況を確認した。外傷はない。先程の言葉からして病でもなさそうだが。
「な、なにか食べもの」
「空腹で倒れたって事?まあ考えるのは後か」
 キョウカが鞄から今日の昼ごはんであるパンを取り出すと、男はパンを即座に奪い口に運んだ。
「あっ!ちょっと!」
「どうした?」
「ライヤ!このおっさんが!」
 少し遅れてきたライヤにキョウカが説明をしようと口を開くとその前に男が口を出した。
「そこの嬢ちゃんが飢えて死にそうな俺にパンを恵んでくれたって話さ。いやいい話だな」
「あんた死にそうな程食べてない訳じゃないだろ!状況を見ておかしいとは思ってたんだよ!」
「・・・キョウカの言うことがホントならあなたは盗みを働いた訳ですが」
 ライヤが静かに、しかし威圧のある声を出すと男は手を上げて敵意がない事をアピールする。
「そう怒りなさるな。俺は食べものって言っただけだぜ?それで勘違いしてパンを渡してきたのは嬢ちゃんだ」
「この男ー!」
 キョウカが感情を剥き出しにして怒るがそれをライヤが静止する。
「そんなに怒るなよ。俺の昼飯やるから。な?」
「ご飯が無くなって怒ってるんじゃない!いや、それもあるけど、それもあるけど!」
 恐らく八割ご飯が無くなったからだろう。その証拠にライヤの言葉の後からは少し落ち着けている様に感じる。
「おっさんはこんな事で何を」
 ライヤはそう言いかけてやめた。何故なら周りを見渡すとそこには幾つかの家がある集落の様な場所に辿り着いていたからだ。
「御者のおっちゃん。俺たちここまででいいよ。ありがとな」
「あ、はい。どうかお気をつけて」
 御者の男にライヤが金を渡すと馬車は逃げる様に村から離れていく。
「さておっさん。交渉をしないか?」
「交渉?」
「今回の件をある事を引き受けてくれればチャラにするって話さ」
「ちょっと勝手に!」
「ちゃんとご飯あげるから」
「ご飯で怒ってるんじゃない!!」
 勝手に交渉を持ちかけたライヤにキョウカが赤い顔をして怒り出す。そんなにご飯の為だと思われたくないのだろうか。
「んで、内容は?」
 どうやら男の方も交渉に乗り気な様だ。こんな事をする以上覚悟は出来ていたのだろうか。
「簡単さ。この村で最近おかしな事はないかを聞きたい。例えば急に悪いやつがきて村を支配したとか」
「・・・いや、ねえな。いや待て。もしかしたらこれだけあれば思い出せるかも」
 男は悩む素振りを見せながら掌を開きライヤに見せつける。
「情報次第だ」
「なるほど。だが話したら消えるなんて可能性があるだろ?」
「見ず知らずのおっちゃんの為に大事な昼飯渡した子がそんな事するとでも?」
「大事って訳じゃないし!そんなに食い意地はってないし!」
 赤い顔を更に赤くしてライヤをポカポカと殴るキョウカはとりあえず置いておいて、男はライヤの言葉を聞いてため息を吐いた。
「兄ちゃん交渉が上手いな。余程歴戦の戦士なのか?なんてな」
「交渉は冒険者の心得の一つさ」
「っ!冒険者」
 男はライヤの言葉に過剰に反応すると真面目な顔で話を始めた。
「この村で起こってる異変だったな。それは一言で言うと、消失だ」
「消失?」
「ああ。急に何もしてなかったのに物が消えちまう。財布が主になくなる物だが、他にも金目の物や食事、子供の菓子なんかも消えてる」
「盗み、ではないのか?」
 ライヤが男に聞くと男は少し悩んだ後首を振った。
「確かに盗みの可能性がかなり高いが、目撃者はほとんどいない。よって確証がないのさ」
「ほとんどって事は、何人かは見たんだな」
「いいや、一人だけさ。この俺だ」
 男の言葉にキョウカが信用出来ないと言わんばかりの目を向けるが男は少し笑うだけ。それが更にキョウカを苛立たせた。
「その犯人の特徴を教えてくれ」
「フードを深く被っていたせいで顔は分からねえが小柄な奴だった。ありゃあ十四から十六程度の歳だろうな」
「犯人は子供?だがそれならのお菓子が消える理由も分かる」
「俺が知ってるのはここまでだ。おっと、これは本当だぜ?俺が嘘ついた事あったかよ?」
「存在そのものが胡散臭い!ライヤ、もう行こ!」
 男のなんとも言えない笑みに我慢の限界が来たキョウカがライヤの腕を掴み引っ張り始める。
「分かった。んじゃこれ」
 ライヤは男の手元にお札を渡す。そこには六千イースがあった。
「ははっ!こいつはいいお客さんだ!これからもジュウカの村で情報が欲しけりゃあの店でドーベルって奴を呼べっていいな!そうすりゃ幾らでも情報をやるよ!」
「そいつはどうも、ドーベルさん」
 ライヤはドーベルに軽く手を振るとそのまま村の中へと入っていった。
「精々子娘に大切なもん取られねえ様にな!」
  ◇
 ドーベルの姿が見えなくなったくらいの場所。ライヤはどっと体の力を抜いていた。
「ふはぁー!つっかれたぁー!」
「ライヤのあれ演技だったんだね。完全に別人みたいだったよ」
「まあな。俺の性格は交渉には不向きだ。だから交渉する時には厳しく、けど相手にもメリットがある様に!でも厳しくだ」
「厳しく言い過ぎじゃない?まあそうでもしない限りあんたは相手に甘いだろうけど」
 キョウカの言葉を否定したくても出来ない。実際ライヤは自分でも思うくらい甘いから。
「それにしてもこの村ジュウカって名前なんだな」
「うん。昔獣人が住んでいた村なんだって」
「マジ!?じゃあ獣人に会えたりする訳!?」
 ライヤの目がキラキラと光りまだ見ぬ獣人への憧れが募る。獣人。犬耳や猫耳、狐とか様々な耳。あれ。耳しか言ってない。尻尾とかもあるのに。
「獣人ならいねえぞ」
「うわぁ!ドーベルさん!?なんでここに」
「お前ら宿とか取ってねえだろ。だからこの村の頂点に君臨する俺が宿を紹介してやろうと思ってね」
 胸を張って自分の立場を上に上げる。何が頂点だよ。だが宿を紹介してくれるという話はありがたい申し出だ。
「自分達で探すので結構です」
「ちょっとキョウカ!」
「このおっさんの事だから高い宿を紹介してくるに決まってる」
「豪華なホテルと言え」
 キョウカの読み通り本当にお高い宿を紹介するつもりだったらしい。ライヤは交渉モードが切れた瞬間に簡単にドーベルに騙された事に軽いショックを受けた。
「なんだよ。熱い夜を過ごすんならボロい宿屋じゃ苦情入るぞ」
「なっ!そそそそんな事しねえし!?」
「は?何どう言う事?」
 先程とは逆にライヤの顔が赤くなりキョウカは何事もなかったかの様な顔をする。実際に何も分かっていないのだが。
「それより!獣人にはもう会えないってのはなんで!?獣人は人に従ってたからまだ生き残ってる筈だろ?」
 そう。ドワーフは人に逆らったせいで滅ぼされてしまったが妖精、獣人は生きている筈。
「最近滅ぼされのさ。人間の王への反逆を考えているという無実の罪でな」
 
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