original ring

藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

10話 変化の指輪

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「それで、これからどうするだ?」
 ドーベルを振り払って高くも安くもない丁度いい値段の宿を取ったライヤとキョウカは今後の事について話し合っていた。勿論二部屋取ってある。
「とりあえず村を探ってみよう。それで見つかるとは思えないけど動かない事には始まらない」
「そうだな。気になる事もあるし」
 こうして二人は村を回る事にした。ジュウカの村の第一印象は少し古めの集落。最近出来た様な新しい建物はなく全て一昔前の形状だ。そして集落とは言ったものの人目が付かなさそうな路地裏の様な場所が幾つかあった。
「いかにも悪事をする人がいそう」
「そりゃ偏見だぜキョウカ。この村に住む人達は真っ当に生きてるよ」
「なんでそう言い切れるのさ」
 ジト目でライヤを見るキョウカにライヤは「なんとなく」と返す。しかし村を回った所で何か事件が起こることはなく初日が終わった。
「ようお二人さん。随分と元気がないねえ!」
「え?いや、そんな事もねえよ?普通に元気だけど」
「胡散臭いから近寄らないでくれる?」
 ジュウカの村探索二日目。ドーベルが二人が取っている宿にやってきた。
「おいおいそんなこと言ってもいいのか?俺はお前らにとって有力な情報を持ってるかもだぜ?」
「でも教えてくれんだろ?」
「そりゃあお前。お金次第よ」
 いっその事ことここまでくると清々しい。
「大丈夫だよ。今日は秘策がある」
 ライヤがそう言って食べかけの朝食を残して立ち上がる。
「あ、食べないなら貰うからね」
「あ、食べるって。おい!食うの早いよ!俺まだ食ってたのに!」
「あのね。食事中に席を立つ事はご馳走様と同義なの」
「じゃあキョウカは飯中にトイレ行かねえの!?」
 食事時に下品な話をした罪で買い出しに行かされたライヤは息を切らして帰ってきた。
「そんじゃ、作戦開始と、行こうぜ」
「昼はなんか作ってね。ここの朝食よりあんたのご飯の方が美味しい」
「嬉しい事言ってくれるな!分かりました!」
 嬉しさより理不尽過ぎることへの不満の方が強いが美味しいと言われればこう答えるしかない。
「んで、作戦ってのは?」
 ドーベルが何故かライヤの部屋でくつろいでいるのはこの際置いておくとしてライヤは作戦を説明した。
「ここだ」
 ジュウカの村で一番大きな建物。物見矢倉だったものの上に三人はいた。今は物見矢倉としては機能しておらずだからといって壊す事もしていない建物で下を見る。
「これで犯人が分かる」
「分かってたまるか」
 ライヤの言葉に被せてドーベルが毒を吐く。
「なんでだよ!高いとこから見ると分かるじゃん!」
「こっからいつ現れるかも分からん犯人見つけるのか?無理だろ」
「見つけた。南東方面!行って!」
「「嘘ォォ!?」」
 キョウカの言葉にドーベルはおろか作戦を出したライヤですら驚く。だがキョウカが言うのならそうなのだろう。
「行くぞドーベルさん!」
「え?俺も行くのぉ!?」
 ライヤはドーベルの手を取るとそのまま矢倉から飛び降りる。
「ぶわぁー!馬鹿なのかお前!こんな高さから飛び降りたら死ぬよー!?」
「死なねえから飛び降りたんだろうがっ!」
 ライヤは人差し指に付けられた収納の指輪から捕縛布を取り出し、家の煙突に括り付けた。
「おりぁぁぁ!!」
「ひぎぁぁぁ!」
 そしてそのままの勢いでジャンプ。見事犯人?の目の前に着地した。ドーベルはライヤより遠くで思い切り尻餅をついていたが。
「お前が最近頻発してる盗みの犯人か?」
「っ!」
「逃げんな!」
 その人物は深いフードがある服を着ており深くフードを被っている。更に小柄。これはドーベルの言っていた犯人像にピッタリ一致する。
「ボイス!」
 物見矢倉から急いで駆け降りてきたキョウカが犯人にボイスの攻撃を仕掛ける。だが犯人は頭を押さえながら走り続ける。
「逃さねえよ!」
 ライヤの捕縛布が見事犯人を捕らえる。この距離ならば捕らえる事はそう難しくない。
「こっの!お願い、指輪!」
 犯人は高い声で指輪を光らせるとその光は犯人を包み、その姿を鳥へと変えた。
「はぁぁ!?」
 小柄な犯人より更に小さな鳥を捕縛布で捕らえることは出来ず鳥はそのまま飛び去っていく。
「あれは、変化の指輪!予想はしてたけどやっぱりか!」
「変化の指輪!?」
「第三のオリジナルリング、変化の指輪。その指輪は自分、他人、無機物に至るまで己が望むものへと姿を変えさせることの出来るオリジナルリング。こいつを捕まえるのは相当骨だよ!」
「そんなの反則だろ!!」
 文句を言いつつ尚も諦めずに鳥を追うライヤだが鳥から何かが落とされる。それは一握り程度の砂。それが変化の指輪の光を浴びると、一瞬で大きな岩へと変化した。
「うわぁぁ!!」
 落ちてくる岩をなんとか避けるがそこに鳥の姿はなく、かと言ってフードを被った犯人の姿もなかった。
  ◇
「どうしよう。完全に詰んだ」
 キョウカが部屋で情けない声を上げる。既にライヤ達がジュウカの街に辿り着いてから七日が経過していたが犯人に遭遇出来たのは一度限りだ。
「そりゃそうだろうな。あんな指輪があるなら一度バレた格好じゃ盗みをしない。キョウカの気持ちはよく分かる」
 ドーベルも二日目以降から協力はしてくれていない。まああんな光景を見たなら無理もないが。
「あいつは何か隠してる。あいつを追求すればあの犯人に辿り着けるかも。もしかしてグルなんじゃ」
「そりゃどうかな。ドーベルはチャランポランしてっし寧ろ犯人に狙われそう、だけど、な?」
 ライヤが何かを閃いたかの様に突然立ち上がって部屋を出る準備をする。
「ちょっとちょっと!どうしたの!?」
「ちょっと出かけてくる!お客さんが来るかもだから部屋片付けといてくれ!」
 それだけ言い残すとライヤは部屋から素早く出て行った。
「この部屋あんたの部屋だけど」
 それから数時間後、時刻は丁度お昼時だ。
「遅い」
 キョウカのお腹が悲鳴を上げるが部屋に食べる物は何もないしお金もない。今から探しに行ってもいいのだが、探しに行った結果入れ違いになりでもしたらめんどくさい。何より空腹で動きたくない。
「お腹空いたー。お腹空いたー!ライヤー!早く帰ってこいやー!おーなーかすいたー!」
 空腹が爆発してキョウカが幼児の様にベットで暴れる。そこで気がついた。部屋の扉が空いている事に。
「・・・いつから?」
「えっと、お腹空いたくらいから?」
「ふざけんな!!」
 キョウカが枕を全力でライヤに投げつける。実際キョウカはライヤが数十分前くらいからお腹空いたと連呼していたのでどれくらい見られていたのかは分からなかったのだが。
「そ、それより。お客さん連れてきたぞ」
「どうせ胡散臭い男でしょ!もういい!あの男拷問して犯人の場所を吐かせて」
 ライヤが連れてきたのは女性だった。それもフードを軽く被った小柄な少女。
「は?」
「初めまして、ナズナ・ラークンです」
 少女、ナズナはキョウカにお辞儀をするとどうすればいいのか戸惑い始めた。キョウカを見て数日前に自分を捕まえようとした人だと気がついたからだ。
「落ち着いてくれ。しっかり金なら払うし乱暴もしない。そこは約束する」
 よく見るとライヤは目に伊達メガネ、頭に帽子を被っていた。それで変装でもしているつもりなのだろうか。まあ実際騙されている少女がいるのだが。
「貴方達は、私をどうしたいのですか?警察に突き出すのですか?それとも、殺すのですか?」
「乱暴はしないって言っただろ。ただ話を聞きたいだけなんだよ。それで願わくばその指輪を返してあげて欲しい」
 完全に怯えきっているナズナをライヤは優しい言葉で安心させようとする。ナズナは不安が増えて涙目になっているが。
「ライヤ。この子をどうやって連れてきたの?」
「まず財布をチラつかせて歩いて、盗まれそうになったら捕まえて、逃げようとするナズナについてきて俺と話をしてくれたらお金あげるって言った」
「乱暴はしないで下さい」
「乱暴にはしないって!優しくするよ!」
「事案、変態。二度と私の前に現れないで」
 
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