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2章 冒険の仲間
22話 救出作戦
しおりを挟む「これが僕のアルバムさ。僕は小さい頃はここじゃないけれど裕福な家に住んでいてね」
ソルが帰ってきたと思ったら小さい頃の写真が沢山貼ってあるアルバムを持っていた。
「けれどその平和は長続きしなくてね。五歳の頃会社が倒産して僕は売りに出された」
「売りに?」
「僕はこの街出身じゃないんだ。簡単に言うならばこの街の奴隷にされたって所さ」
ナズナが驚きの表情を見せるとレアがこちらを見ている事が分かった。何が言いたいのかは分からないが気に入られてはいない様だ。
「だがレアが僕を救い出してくれた。今の僕があるのは全てレアのおかげなんだよ」
「レアさんの?というかレアさんとはその、どの様なご関係で?」
ソルの後ろに立つレアの表情が険しくなっていくがそれに屈する訳にはいかない。ナズナが意を決して言葉を出すとソルは少し嬉しそうに笑った。
「なんだい?嫉妬してくれているのかい?でも大丈夫。レアは僕の侍女だったんだよ。奴隷に出された僕を救う為家を抜け出して探してくれたんだ」
「そう、だったのですか」
昔世話をしていたと言うのならソルの事を坊っちゃんと呼ぶ事も納得がいく。この二人はお互いがお互いの事を一番に考えていると言う事だろうか。
「では、最後の質問です」
「ん?そんなに畏まらなくていい。存分に言ってくれ給え」
ソルに向けて言っている訳ではないがそれは置いておく。
「その指輪、精神の指輪はいつ手に入れられたのですか?」
その問いを口にした瞬間レアが動いた。胸元のナイフを取り出しナズナの胸に。
「大丈夫だよレア。彼女は僕の妻だよ?それくらい知る権利がある」
もう少しでナズナの胸に収まっていたナイフが動きを止め、ナズナから離れて行く。ソルが単純で物凄く助かった。
「これはレアが僕を救い出してくれた時貰ったんだ。確かレアはとある男性から譲り受けたと言っていたね?」
「・・・はい。坊っちゃんを救い出す力が欲しいとその男に言うと、彼は笑ってこの指輪を」
(男性?それがお姉様から指輪を奪った魔族?でも相手が魔族ならこの人達も気づくんじゃ)
そこまで考えてナズナは思考を変えた。違う。相手が誰だろうがレアにとってはどうでもいいことなのだ。
(レアさんはソルさんの事しか考えていない。そのソルさんの為なら、魔族だろうと利用する可能性がある)
「さて、これで僕の話は終わりだ。さて次はどうやって親交を深めようか?」
ソルが楽しげに笑う。しかしその背後のレアはソルとは裏腹にいつでもナズナを殺す気があると言ってもいい。今のナズナは指輪を持っていない。この状況でレアに力では勝てっこない。なら。
「その前にこの城を一通り見せて貰えませんか?」
「なるほど。案内しながら親交を深めようと。でも僕は城の構造よく知らないんだよなぁ」
この城の主がそれでもいいのかと心配になるが、それは今はどうでもいい。これは最悪の場合レアが案内するパターンに?
「よし、レアも連れて三人で行くとしよう。レア、案内よろしく頼むよ」
「畏まりました」
三人は部屋から出て歩き始める。
(お兄様。お姉様。今何してるかな?)
◇
「殴り込む」
「馬鹿」
一方マキセの街から離れたライヤとキョウカはナズナを救い出す為の作戦を立てていた。
「とはいえ殴り込み以外に作戦とかあるか?」
「あるでしょ一杯。まずは状況を確認しようか」
この作戦の最終目標はナズナの奪還。その為の障害はソルとレア。更に言えば精神の指輪により洗脳された住人達だ。
「結局あいつは街の住人全員を洗脳してるのか?」
「その可能性は高い。ボイスに街の音を聞いてもらったけど、驚く程静かだったから」
「捕まってて助けを求めてる人はいなかったと」
そうなるとこの作戦の難易度は格段に上がる。どれだけいるか分からない住人を相手にするのは危険だ。
「やっぱ身を潜めて夜にマキセの街に忍び込むしか無いんじゃない?」
「あの壁に囲まれた街にどう入る?壁を登ることなんて出来ねえぞ」
「あー。壁を登る魔道具とかない?」
「・・・魔道具店行ってから考えるか」
◇
「またここにいたのかい?レアが探していたよ」
「ソルさん。何が御用ですか?」
「用がないと君に会っちゃいけないのかい?僕らは夫婦」
「まだ、違います」
あれから二日が経過した。ソルは幾度もナズナに迫ってきたがそれは結婚したらと引き伸ばし今に至る。現在のナズナの居場所は城にある大きな図書館である。ここは案内された時からナズナのお気に入りの場となっていた。
「明日は結婚式だ。僕と結婚したらこうして自由に図書館に来る事は出来なくなる」
「ええ。分かっています」
「それは良かった。君は本当にいい子だね」
周りにレアはいない。今ならソルを殺して指輪を奪う事が出来る。
「いや、出来ませんね」
ナズナは小さく呟く。ここにいるのはオリジナルリングを持った男とオリジナルリングどころか指輪すら持たない女。幾ら相手が油断しきっているといっても殺せる筈がない。
「明日の君のウエディングドレスはレアが作った最高傑作だ。今から楽しみだよ!」
ウエディングドレスなど着たくない。もし着るのなら。
「好きな人の隣に立って、お兄様とお姉様にお祝いされたかった」
しかしそれはもう叶わない。ライヤとキョウカを恨む事はない。そんな権利はナズナにはない。それでも。
「助けて」
ナズナがそう呟くと遠くから破壊音が響き渡る。
「何事だ?」
「坊っちゃん!侵入者です!」
レアが慌てて図書館に転がり込んでくる。その様子からして侵入者の正体は明白。
「お兄様!お姉様!」
「くっ!レアはあれの準備を!僕は操り人形共を使う!」
ソルが指輪を光らせる。恐らく動かしていなかった洗脳した人たちを動かしたのだろう。
「渡さない。ナズナは僕の物だ」
マキセの街の正門前。設置した大量の爆弾が破壊してくれた壁を通りライヤはマキセの街に侵入した。侵入と言うにはあまりに分かりやすく。
「お?なんか凄え人がいるな。出迎えかな」
ライヤの前に立ち塞がったのは武器を持った洗脳状態の人々。一言も話さない所を見ると知能などは洗脳していないのかも知れない。
「まあ邪魔するなら容赦はしねえけどなっ!!」
全身から電流を走らせて襲いくる人々を全員、余す事なく感電させる。ゾンビの時と同じ容量だ。
「よし、じゃあ行くか」
倒れた人に見向きもせずライヤはナズナの元へと走り出す。
「待ちなさい!」
しかし静止する声に足を止める。
「こんばんわ。確かレアさんだったよな」
「信じられません。こんな正面から突っ込んでくるとは」
「どうでもいいんだよ手段なんて、ナズナを返してもらうぜ」
ライヤがレアにむけて電流を放つがレアはそれを防ぐ様に盾を出す。
「っ!てめぇ!」
その盾は数日前に人質にされていた少女だった。
「全く学習しませんね。あなた方は人質を殺せない。そんな状態で正面突破だなんて馬鹿としか言いようがありません」
レアのナイフが少女の首元へと移動する。
「今すぐ去りなさい。いえ、今すぐこの場で死んでもらいましょうか」
「・・・」
「聞こえないのですか?自害しなさいと言っているのです!」
レアが大声をあげるとライヤもそれに対抗する様に声をあげる。
「あと頼んだぜ!!!」
「は?」
ライヤは言うが早く足に電流を纏わせ素早く走り出す。そして。
「この子は安全な場所に運ばせてもらうよ」
何もない所から声がすると人質の少女がレアから引き離される。
「あなた。いつからそこに」
「インビジブルフィールドって言ってね。周辺の物体の姿を消す魔道具を使ってたんだ。だからずっといた」
そこにはインビジブルフィールドを解除して少女を抱きかかえたキョウカがいた。
「しかし、人質なら幾らでも」
「この周辺に人はいない。ライヤが動けなくなった人を運んでるからね」
そう。ライヤが走り去ったのは人質を作らない為だったのだ。いくら洗脳した人を人質にしようとも人がいなければ意味がない。更に洗脳させて移動させようにも体が動かなければ意味はない。
「そんじゃあタイマンといこうか。あんたはここで捕まえる」
「坊っちゃんの幸せを壊す者には、鉄槌を下さなければなりませんね」
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