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2章 冒険の仲間
24話 暴走
しおりを挟む「てめえ!ナズナに何してやがる!!」
「お兄様!!」
突然のライヤの登場にソルは驚愕した。
「嘘だろ。レアはもういない。しかも冒険者共も蹴散らされた。僕は終わるのか?ここで?」
「おい、ナズナから離れろ。それで指輪をこっちに渡せ」
「嫌だ。僕がここで終わるなんて。せっかくここまで、ここまでのしあがったんだ。僕の世界を、終わらせてたまるか」
「おい!聞いてんのか!?」
ライヤの忠告は自分の事でいっぱいいっぱいになっている今のソルには届かない。そして、ソルは決意した。
「レアなら、レアならこうする」
短い時間だがレアと過ごした日々が蘇る。そうだ。ソルは幾度もレアがピンチを切り抜ける所を見てきた。その方法は。
「動くな!動けばこの女を殺す!!」
ナズナを人質にすると言うものだ。
「なっ!やめてください!」
「やめるわけがないだろう!さあこいつを殺されたくなければ」
ソルがライヤの姿を見ると体中に寒気が走った。
「俺は、ナズナから離れろって言ったよな?」
静かなる迫力。明確なる殺意。まるで目の前にいるのは人間ではなく怒り狂う竜の様な恐怖がソルを支配する。
「こ、こここここ、このぉぉぉ!!」
それでもソルは止まれない。止まるわけにはいかなかった。小型のナイフをナズナの胸元目掛けて走らせた。
「え?」
ソルは不思議な感覚に陥った。それは、腕が突然無くなったかの様な感覚。その不思議な感覚に己の腕を見ると。
「ひっ!ぎぃやぁぁぁぁ!!」
ソルの腕は空中を三回ほど回った後地面に惨めに激突した。
「ぼ、僕の腕!痛い、痛い痛い痛いぃぃ!!」
ソルは痛みに地面に転がり込み何度も回る。しかし当然の事ながらそんなことで痛みは治らない。
「ナズナ、おいで」
「お兄様!怖かったですぅ!!」
隙だらけのソルからナズナは走ってライヤの胸に飛び込む。ライヤは自分の上着をナズナに優しくかけるとソルの方へ歩き出した。
「駆けろ、イナズマ」
「え?ぎぃぁぁぁぁぁぁ!!」
転がり回るソルにライヤは電撃を流し込む。
「てめえがナズナを泣かせたんだ。その責任、しっかりとって貰うぞ」
「がぁぁぁぁ!痛い!痛い痛い痛い!!助け、ごめんなざい!許しで!ぁぁぁぁぁぁ!」
ソルの言葉には全く耳を貸さずに常に高電圧、しかしソルが死んでしまわない加減で電撃を続ける。
「お兄様!やめて下さい!もう充分です!」
ナズナがライヤに走り寄るが電撃が周囲に飛び交っていて近寄れない。
「もういい。死ね」
「ひっ!」
充分にソルを痛めつけたライヤは雷を刃物状の形に作り直す。そして
「馬鹿ライヤ!!落ち着け!!」
その刃物は突然のビンタに止められた。
「お姉様!!」
「キョウ、カ」
キョウカのビンタされたライヤは突然力が抜けその場に崩れ落ちた。
「俺、今まで何して。確かあいつがナズナを、そうだ!ナズナ!ナズナは無事か!!?」
「ぶ、無事です!お兄様が助けてくれたのですよ!?覚えてないのですか?」
「俺が?」
ライヤは何も知らないと言う顔をしながら周囲を見渡す。そこには大火傷をして腕が無くなっているソルの姿が。
「なっ!大変だ!キョウカ!こいつを治療してやってくれ!!」
「ほ、本当に覚えて無いのですね」
「・・・ナズナちゃん。この話は後で必ず。ひとまずは警官を連れてきて。多分正気に戻ってる頃だから」
その後。応急手当を済ませたソルは正気を取り戻した警察に連行。無期懲役が決定した。レアの死亡の件も自殺という事で決着が付いた。
「オリジナルリングの暴走?」
「そう。オリジナルリングの使い手が悪の感情を持つと指輪がその隙に入り込んで暴走する事がある」
騒ぎになる前に街を離れた一行は魔導車にのり次の街を目指していた。
「暴走、か。それじゃああの惨状を作り上げたのは俺。って事か」
「そうなる。暴走したオリジナルリングは危険だから暫く使わないで。一応封印はしてあるけど、また暴走する可能性もあるから」
キョウカの言葉にライヤは深刻に頷く。
「それじゃあ変化の指輪も暴走する可能性が?」
「勿論ある。でも変化の指輪は心優しい竜が持ち主だったらしいから滅多に暴走なんてしないよ」
それを聞いたナズナは安堵を漏らした。しかしライヤの顔を見るとまた顔を曇らせる。
「まあ、起こっちゃった事は仕方ない。暫くオリジナルリングは使わない事。いいね」
「おう。それで精神の指輪は?」
「ちゃんと回収済み。私が持ってる」
キョウカがソルを治療する時に取り返しておいた精神の指輪を二人に見せつける。
「これで三つ。残るオリジナルリングは五つですね」
「それでも遠いな。今までも結構ハードな旅だったっていうのに」
「そ、そうですね」
テンションの下がった二人にキョウカはため息を吐いた。
「全くシャキッとしなさい。私はこれを一人、で」
そこまで言ってキョウカは思い出した。この旅はもともと一人旅だったことを。一人で指輪を見つけ出せるかの不安や恐怖。それらを押し殺してただ歩いていた。
「昔の私が聞いたらビックリするだろうな」
それが今ではどうだろう。お節介な男に付き纏われ、自分の事をお姉様なんて言うちょっと変な可愛い妹分と楽しく旅をしている。
「ありがとうね、二人とも」
キョウカが素直にお礼を言うとライヤとナズナが目を丸くしていた。
「な、何その顔は」
「いや、妙に素直だなと思って」
「はい。びっくりしました」
「私ってそんなに素直じゃない?」
ライヤとナズナが即座に頷く。その事が少し恥ずかしくてキョウカは話を逸らす事にした。
「それより疲れたでしょ!指輪も無事回収出来たお祝いで今日はパーとやろう!パーティだ!」
「パーティ!いいですね!」
「そうだな。腕に寄りをかけて作るか!」
作戦成功。完全に流れが変わった。そして一同は美味しいご飯をただひたすらに食べた。
◇
「遅かったな。もう終わった後かよ」
大柄の男はマキセの街の入り口で呟く。街には警察が大量におり何かの後始末に追われていた。
「ちょいと失礼。ここいらでなんかあったのか?」
「お前は?悪いが部外者には何も」
「あ!フィンさん!来てくれたんですか!?」
警官の言葉を遮ったのは女性だ。ソルに操られていた冒険者の一人である。
「おう!助けに来たけど遅すぎたな。何があったのか色々教えてくれよ」
「はい!」
「おい!機密事項だって言っただろう!」
女性冒険者は知っていること全てをフィンと呼ばれた大男に話す。警官は頑張って止めようとするが一向に止まらないので「内密にお願いしますよ」とフィンに言ってその場を去った。
「洗脳されてた、か」
「はい。誰かが元凶を倒して私達を解放してくれたみたいなんですけど。その誰かが分からなくて」
フィンは顎に手を当てるとそのまま街の中へ。女性もそのまま後を追う。
「あ!あんた!ここは立ち入り禁止だ!」
「まあまあ気にしなさるな」
「おい!止まれ!」
警官を軽く振り払いフィンはソルの寝室へ。
「部屋が焦げてる。炎、いや違う。雷、電気か?」
「電気?そういえば街の何箇所かに稲妻が通ったかの様な後があったって警察の人が」
「何?そりゃ本当か?」
フィンの言葉に「間違いないです」と女性は答える。するとフィンは満足げに笑い部屋を出た。
「あ、ちょっと!もう行っちゃうんですか!?」
「おう、ちょっと野暮用が出来たからな」
フィンは女性に振り返りもせず歩いていく。行き先は魔導車が向かった方角だ。
「雷鳴の指輪の持ち主か。こりゃ随分と使いこなしてんなぁ。楽しくなりそうだぜ」
そう言ったフィンの中指には薄紫色に光る指輪がはめられていた。
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