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2章 冒険の仲間
32話 鍛錬
しおりを挟む「と、いう訳で。冒険者のフィンさんを仲間に加えました」
「よろしくな嬢ちゃん方」
「おいおい。まさか私達より歴戦の冒険者を仲間に連れてくるとはねえ」
フィンとの騒動が終わった翌日。その日から鍛錬が始まる日だったのでフィンも連れてきた。
「それで、鍛錬って言ってもどんな風にやるんだ?」
「お金稼ぎつつマキさん達に稽古をつけてもらう感じかな」
「クエスト、鍛錬、クエスト、鍛錬だな」
マキの言葉にフィンは少し頭を捻った後「じゃあこういうのはどうだ」と言った。
「三日クエストに行った後三日鍛える。その後一日休息を取って三日クエストだ」
「なんだ?私の考えじゃ不満なのか?」
「お嬢さん方三人ならそれでも問題ねえだろうさ。だがこいつらはあくまでも冒険者のなりたて、ひよっこだぜ?そいつらがその鍛錬についていくのはきついと思うがね」
「俺頑張りますよ!?」
「気合の問題じゃねえ」
実際クエストと鍛錬と一日ずつ行う鍛錬と三日クエスト、三日鍛錬からの一日休憩の違いが分からない。分かるのは休憩の日があるかないか程度だ。
「クエストってのは絶対安全じゃない。唐突に起こる予期せぬ問題に直面したときに鍛錬の疲れが、なんて通用しないからな」
「だから鍛錬の後に休憩を入れてやるって事か。流石上級者様は新人教育も優しいな」
「多分、嬢ちゃんがスパルタでこの二人もタフだっただけじゃねえかな」
フィンに頭に手を置かれたエンカとネンカがタフと言われて誇らしげにしている中、キョウカは絶望していた。
「でも三日続けてクエストには行くんだ!?というか三日間ずっと鍛錬ってのも、田舎で適当に生きてきた私にはキツいんだけど!?」
「わ、私も自信がないです。昔はほとんど食事も食べてなかったので、筋肉とかもないと思いますし」
「それをこれからなんとかするんだ!大丈夫!俺も冒険者になりたいとか言っても筋トレとかはキツくて三日で辞めたから!!」
ライヤが弱音を吐く二人を励まそうと楽しげに肩を組むがキョウカは冷たい目、ナズナは苦笑いを浮かべていた。
「何その目。そのー、あんたはやれよって感じの目?」
「分かってんじゃん。そう言う目だよ」
「いえ、決してそんな事は!でも、お兄様は冒険者になる為に頑張ってたって聞いてたので」
「うん。ごめんなさい」
自分が不利だと察した瞬間ライヤは二人に頭を下げる。
「いや別に謝って欲しい訳じゃないし」
「じゃあどうすればいいんだ?」
「おーい、話が脱線してんぞ。本題に入ろうぜ。やるのか?やらないのか?」
ごもっともな意見である。とは言っても三人の意見は決まっている。
「やる」
「やる、やればいいんでしょ」
「お!お願いします」
「よし!」
全員参加が決まりこれより三日間の鍛錬が始まる。が、その前に。
「コケー!!」
「なんで私がジャイアントコケコースに襲われてるのさー!!」
「だってキョウカズルして戦ってねえから実力分からないし」
マキの指示の元キョウカには特別な試練があった。それはジャイアントコケコースを一人で討伐することである。
「幾らなんでもいきなりキョウカちゃんに一人討伐は無理あるだろ」
「フィンさんの言う通りだ!キョウカは戦闘向きじゃないしジャイアントコケコースにボイスの技通じないんだぞ!?」
「あ、そうなのか?知らねえや」
そういえばマキはキョウカの戦闘スタイルもジャイアントコケコースとの戦闘も知らない。
「それはいいから早く助けてよ!!」
ダメ元でボイスが小さい口から騒音歌を放つがジャイアントコケコースも負け時と鳴き声を挙げる。
「やっぱボイスじゃ相性が悪いな。マキさん!」
「しゃーねぇ。ライヤ助けてやれ」
その言葉を待ってましたとばかりにライヤはキョウカの元へ走り出す。
「行くぜ!稲妻!」
雷鳴の指輪から稲妻が走るとその稲妻はジャイアントコケコースを取り囲む様に輪を作った。
「こ、コケ!?」
素早い動きで稲妻を避けたジャイアントコケコースは逆に自ら稲妻の檻に入ってしまった事に気がついたが時すでに遅し。
「終わりだ!ライトニングプリズン!!」
「コッ!コケー!!」
閉じ込めた稲妻が一斉にジャイアントコケコースに向かい動き出しジャイアントコケコースをこんがりと焼く。討伐完了だ。
「どうよ!!」
ライヤは両手を広げてとても誇らしげに笑う。まるで褒めて欲しそうな犬の様に見える。
「あ?それくらい出来て当然だろ?」
「そーだぞー」
「むしろ出来なかったら軽蔑するレベルだぞー」
容赦のない言葉がライヤに突き刺さる。ライヤは戦闘不能になった。
「お兄様はメンタル強い様で弱いですよね」
「いやぁー!俺はいいと思ったぜ!素早いジャイアントコケコースを見事一撃で討伐して見せたのは凄いことだ!」
「ですよね!!」
フィンに褒められた途端ライヤは希望に満ちた顔で笑顔を見せる。単純な男である。
「ふぅ。あれだ、まぁ。助かった。ありが」
「コケーー!!」
キョウカが少し頬を染めながらライヤにお礼を言おうとすると背後から先程のジャイアントコケコースよりもより大きなジャイアントコケコースが飛び出してくる。
「へ?」
「危ねえ!!」
ライヤが必死に雷鳴の指輪を発動させるが間に合わない。
「おっと危ねえ」
「ゴケっ!!?」
キョウカに飛び出してきたジャイアントコケコースに気づいたフィンが軽く腕を振ってジャイアントコケコースを正面から殴る。ジャイアントコケコースはいつもの甲高い声を挙げずに吹き飛んだ。
「あ、しまった。ジャイアントコケコースは素材になるから傷つけないように討伐しねえといけないんだよな」
「全くフィンは!ボクが教えた事全然学んでないじゃんかー!」
それを当たり前の様に、更に失敗した様にフィンは笑いシルは怒る。
「俺、自信無くしそう」
「私も生きていく自信無くしそう」
「お兄様もお姉様も立派な人ですよ!生きてるだけで価値があります!偉いです!!」
必死に励ましてくれるナズナを二人は強く抱きしめた。
◇
「よし、じゃあ鍛錬始めるぞ」
「「よろしくお願いします!」」
「お、お願いします!」
マキの言葉に九十度近くまでお辞儀をしたライヤとキョウカに慌てながらナズナも真似をしてお辞儀をする。
「そういうのはいらん」
鍛錬のメニューは簡単。体作りである。
「ランニングと筋トレ。あとはーなんだ?」
「俊敏さを鍛える為に俺たちの攻撃をひたすら躱すトレーニングとかもいいんじゃねえか?」
「あれ?ナイフ捌きとか指輪の出力アップ的なトレーニングじゃないの?」
ライヤの問いにフィンは笑顔で答える。
「そうだぞ。ナイフ捌きを良くするには素早く動ける体にナイフの威力を上げる筋力なんかが必要不可欠だろ?あと多分ライヤはナイフ向いてないぞ」
「な、なるほど。あとサラッと大事な事言うなよ!!」
「何はともあれ体は冒険者の基本だ。とりあえずランニング行くぞー!」
「は、はい!」
大きな街を八人で走っていく。通行人の邪魔にならない様に一列で走っているが。
「これ、凄い恥ずかしいんだけど!」
「しょうがねえだろ。トレーニングする場所なんてないんだから」
「それはそうだけど!」
住人の目と恐らく同じ冒険者のクスクスと笑う声を聞きながら走るのはしんどい。体だけでなく心も。
「文句ばっかりだなキョウカ。んじゃペースアップだ」
先頭を走っていたマキが足を早めてスピードを上げる。
「うおおお!!負けるかぁぁー!」
「はい!ナズナ頑張ります!」
それに応じて二番目のライヤ、三番目のナズナもペースを上げる。
「は!?まじで言ってる!?」
「遅いぞキョウカ!」
「お先にー!」
後ろにいたネンカとエンカもあっという間にキョウカを抜かしていく。
「さて、どうするキョウカちゃん」
「ボクはキョウカのペースに合わせるよ。一人にするとこないだみたいに危ないからね」
軽く走るフィンとフィンの肩に乗って笑うシルの言葉に少し腹が立つ。
「あーもう!走ればいいんでしょー!!」
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