original ring

藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

34話 お節介者

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「おおー!なかなかいい乗り心地だな!」
「窓から顔出すと気持ちいいよ!いい風がきてる!」
「おい危ねぇぞ。この辺の道は整備されてる訳じゃないんだからな」
 魔道車のなかではしゃぐフィンとシルをライヤが嗜める。シルが身長一メートルもない体で窓から乗り込んでいるので凄く危ない。ここから落ちたら怪我で済まないだろう。
「それは気をつけるけどさ。ナズナに操縦を任せちゃってもいいの?」
「シルの発言は最もなんだけどよ。ナズナがどうしてもっ、て言うから」
「はい!お兄様とお姉様には快適な旅をして欲しいですから!」
 ナズナが運転席から二人に向けて大きな声で話す。車の運転席にナズナの様な少女が座り運転する姿は少しシュールだ。法律違反ではないのだが申し訳なさは残る。
「んじゃあナズナちゃんがずっと運転してんのか?」
「そんな訳ないでしょ。ライヤと交代交代やってるよ」
「え?キョウカは運転しないの?」
 シルの疑問はごもっともだ。しかしキョウカに運転は任せられない。その理由は単純。
「私、運転出来ないの」
 キョウカには運転の才能が微塵もなかった。いきなりアクセル、ブレーキを踏むので急発進急停止。それ故魔道車が物にぶつかりそうになった事が何度もある。時には今の様に道が整備されていない様な場所も走るので乱暴運転をするキョウカには運転は任せられないのだ。
「フィンさんにも運転は覚えてもらうぜ?交代も二人より三人の方が楽だし」
「私はずっと運転していてもいいのですが」
「それはダメ。ナズナちゃん、自分は大事にしなきゃダメだよ。ちゃんとライヤを使いな」
「使うってなんだよ!?俺は物か!」
 ライヤのツッコミにフィンとナズナが笑いキョウカは「うん」と答える。
「そんな事より先を急がないと。無駄な時間を過ごしすぎたんだからいち早く指輪を回収しないと」
「それはそうだけど無駄な時間って。あ、シルは何か知ってたりしないか?指輪の情報とか」
 少し不貞腐れたライヤが空中を楽しげに飛ぶシルに問いかける。シルは知識の妖精だ。こう言う情報収集には長けていると思ったのだ。
「うーん。みんなが鍛えてる間にも情報収集はしてたけど、これといった情報はなかったよ。指輪を使った事件も何回かはあったけどどれも冒険者や憲兵に捕まってる」
「オリジナルリングの使用者なら一端の冒険者や憲兵が捕まえられる筈ないだろうな。つまり」
「指輪の使用者は今までみたいに分かりやすくはないって事だね。しっかりオリジナルリングの所持を隠しながら悪さしてる」
「もしくは指輪の所持者がいい人なのかもよ?フィンさんみたいに」
 この様な事を考えても仕方ないのだが考えずにはいられなかった。オリジナルリングは実に強力な指輪だが、使い用によっては世界すら手に入れられる程の力だ。それ故に、放置する訳にはいかない。
「ん、待てよ?今更だけど俺全部のオリジナルリングを知らないな」
「あ、それは私も知らないので気になります!」
 ライヤとナズナが知っているのはライヤの所持している雷鳴の指輪。ナズナの所持している変化の指輪。ソルが使っていて今はキョウカが保管している精神の指輪。そしてフィンが所持している歪曲の指輪のみだ。オリジナルリングは全部で八つ。まだ半分の指輪しか知らないのだ。これから残りの指輪を集めるのならその情報は知っておいた方がいい。
「そうだね。じゃあ話しておこうか。残りの四つの指輪について」
 キョウカが指輪の話を始めようとした時。
「うわぁ!」
 ナズナが悲鳴を上げて魔道車が急停止した。
「うげ!」
「ぐはっ」
「おっと危ない」
「きゃあ!」
「「「「今きゃあって」」」」
 車が急停止したことにより一同が壁に激突する。シルだけは飛ぶことが出来るので激突せずに済んだが。
「もう!またこれか!!今度はどんな奴が飛び出してきたの!!」
 もはや恒例行事というべき魔道車運転中の飛び出し。この出来事はこれまでにもファイアーシスターズやドーベル、シオンなどが行なっている。
「その顔拝んで損害賠償請求してやる!それが終わったらさっさと行くからね!関わらない様にね!!」
「お、おう」
 キョウカはそう言い残すと魔道車を降りた。
「も、申し訳ねぇ!オラ、相棒のポチを探してて!そんで、」
「何にせよ飛び出しは悪。賠償金置いてさっさと消えな」
「ひ、ひぇぇ!ゆ、許してけろ!オラ悪気はながったんです!ポチは、田舎からでできてずっと一緒だったもんで」
 今回の飛び出し犯は顔にそばかすのついたいかにも田舎者という雰囲気の青年だった。青年は仁王立ちで損害賠償を請求してくるキョウカに怯えてオドオドしていた。
「こら!可哀想だろうが!それにぶつかってもいないんだし損害賠償なんていらねえよ」
「あ!こらライヤ出てくるな!あんたが出てくるとまた余計な事に関わる事になる!」
 キョウカを見かねてライヤが魔道車から出てくる。自分を庇うライヤに青年は心底ほっとした様な顔を見せた。
「元はと言えば道が悪いし視界も悪い。そんでもってこんな道魔道車が通ってるなんて誰も思わないしここはお互い様って事で手を打とうぜ」
「も、申し訳ねぇ!でも、そうしていただけると非常に助かります!オラは一刻も早くポチを探さねえといけねぇんで!」
「ポチ?ペットか?」
「んだ!ペットと言うか、オラの相棒なんです!ポチがいねえとオラこの先やっていげねぇ」
 凄く困った様な顔をする青年。その姿を見たライヤが
「却下」
「まだ何も言ってねえだろ!」
「どうせこの人を助けたいとか言うんでしょ!?無理!却下!そんな事している暇はない!」
 図星である。ライヤはちょうどこの人を助けたいと言おうと思っていた。
「一緒にポチを探してくださるんですか!?ありがてぇ!ありがてぇです!都会の人はやざしいんですねぇ!」
 青年が喜ぶと同時に凄い顔でキョウカに睨まれた事でまた怯える。青年にとってライヤとキョウカはまさに天使と悪魔だった。
「こういう時は多数決!みんなー!この人を助ける人は手を上げてー!」
 ライヤが魔道車にいる仲間達に声をかけて手を上げる。
「私は賛成です!困っている人は見過ごせません」
「俺もだ。どうせペット探しだろ?その程度ちゃっちゃと終わらせて目的地に向かえば問題ねえだろ」
 三体二。多数決により助ける事が決定した。
「ありがてえです!ポチはカッコいい黒色の子なんです!あ、オラはマーティ!田舎もんですけど、よろしくお願いします!」
「俺はライヤ。こっちがキョウカでフィンさん、ナズナ、シルだ。よろしくな」
「んだ!」
 マーティが笑顔を見せてお礼を言う。それに応じる様にライヤも笑顔を見せる。どうやら既に仲良くなった様だ。
「珍しいな、お前が人助けを躊躇うなんてよ」
 フィンがシルに声をかける。多数決の結果は賛成がライヤ、ナズナ、フィン。反対がキョウカとシルだ。基本的にシルは知識の為ならどんな事でも。人間は面白い生き物なので積極的に関わる、と言うタイプの妖精だ。そのシルが人助けを断る事はフィンにとっては意外な事だった。
「ボクも助けようとは思った。けど、なんだか嫌な予感がしてね。まあそんなに凄く嫌な予感じゃないからフィンやみんななら切り抜けられるとは思うんだけど」
「そうか。切り抜けられるなら大丈夫だ。キョウカちゃんは怒るかも知れねえけど、旅に問題は付き物。寄り道は率先してするもんだ」
「うん、そうだね!」
 一抹の不安を抱えながらもフィンの言葉に納得してシルもポチの捜索を開始する。
「ここって結構木々が生い茂ってんだね。地面も沼が広がってるし」
 魔道車を収納の指輪にしまって辺りを探す。そこは沼地の様で至る所に泥の沼や大きな木が生えていた。
「こんな所で犬探すのー?めっちゃ汚れてそう」
「お姉様、頑張りましょうね!早く見つければ直ぐ旅を再開出来ますから」
 広い範囲でポチを探すに当たって一同は手分けをして探す事に決定した。ライヤとマーティ。キョウカとナズナ。そしてフィンとシルの三班に分かれてポチの捜索に当たった。
「ポチー!どこにいるー?」
「フィンったら猫に話しかけても反応なんてしないよ」
「いや名前呼ばれれば鳴くかもしれねぇし草むらとかから飛び出してくるかも知れねえだろ?それと、多分犬だぞポチ」
 ポチと言う名前からして恐らくマーティのペットは犬だろう。黒いと言っていた事からフィンは黒犬を想像していたのだが。
「え?猫じゃないの?ほら、猫といえばポチ、いや。タマだね。猫といえば」
 シルが指を頬に当てて暫く考えると自分が勘違いをしている事に気がついた。シルはずっと黒猫を想像していたがポチなら黒犬だろう。
「ん、待てよ?」
「どした?」
「確かにマーティはポチは黒くてカッコいいとは言ったけど、何もポチが犬だなんて言ってないよね?」
 シルが思い返してみるとマーティは一度もポチの正体を口にしていない。更に思い返してみるとマーティの指には指輪が付いていた。
「嫌な予感がする。フィン!ライヤの所に行こう!」
 フィンがシルの言葉に頷きシルを肩に乗せて走り出した。
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