34 / 81
2章 冒険の仲間
34話 お節介者
しおりを挟む「おおー!なかなかいい乗り心地だな!」
「窓から顔出すと気持ちいいよ!いい風がきてる!」
「おい危ねぇぞ。この辺の道は整備されてる訳じゃないんだからな」
魔道車のなかではしゃぐフィンとシルをライヤが嗜める。シルが身長一メートルもない体で窓から乗り込んでいるので凄く危ない。ここから落ちたら怪我で済まないだろう。
「それは気をつけるけどさ。ナズナに操縦を任せちゃってもいいの?」
「シルの発言は最もなんだけどよ。ナズナがどうしてもっ、て言うから」
「はい!お兄様とお姉様には快適な旅をして欲しいですから!」
ナズナが運転席から二人に向けて大きな声で話す。車の運転席にナズナの様な少女が座り運転する姿は少しシュールだ。法律違反ではないのだが申し訳なさは残る。
「んじゃあナズナちゃんがずっと運転してんのか?」
「そんな訳ないでしょ。ライヤと交代交代やってるよ」
「え?キョウカは運転しないの?」
シルの疑問はごもっともだ。しかしキョウカに運転は任せられない。その理由は単純。
「私、運転出来ないの」
キョウカには運転の才能が微塵もなかった。いきなりアクセル、ブレーキを踏むので急発進急停止。それ故魔道車が物にぶつかりそうになった事が何度もある。時には今の様に道が整備されていない様な場所も走るので乱暴運転をするキョウカには運転は任せられないのだ。
「フィンさんにも運転は覚えてもらうぜ?交代も二人より三人の方が楽だし」
「私はずっと運転していてもいいのですが」
「それはダメ。ナズナちゃん、自分は大事にしなきゃダメだよ。ちゃんとライヤを使いな」
「使うってなんだよ!?俺は物か!」
ライヤのツッコミにフィンとナズナが笑いキョウカは「うん」と答える。
「そんな事より先を急がないと。無駄な時間を過ごしすぎたんだからいち早く指輪を回収しないと」
「それはそうだけど無駄な時間って。あ、シルは何か知ってたりしないか?指輪の情報とか」
少し不貞腐れたライヤが空中を楽しげに飛ぶシルに問いかける。シルは知識の妖精だ。こう言う情報収集には長けていると思ったのだ。
「うーん。みんなが鍛えてる間にも情報収集はしてたけど、これといった情報はなかったよ。指輪を使った事件も何回かはあったけどどれも冒険者や憲兵に捕まってる」
「オリジナルリングの使用者なら一端の冒険者や憲兵が捕まえられる筈ないだろうな。つまり」
「指輪の使用者は今までみたいに分かりやすくはないって事だね。しっかりオリジナルリングの所持を隠しながら悪さしてる」
「もしくは指輪の所持者がいい人なのかもよ?フィンさんみたいに」
この様な事を考えても仕方ないのだが考えずにはいられなかった。オリジナルリングは実に強力な指輪だが、使い用によっては世界すら手に入れられる程の力だ。それ故に、放置する訳にはいかない。
「ん、待てよ?今更だけど俺全部のオリジナルリングを知らないな」
「あ、それは私も知らないので気になります!」
ライヤとナズナが知っているのはライヤの所持している雷鳴の指輪。ナズナの所持している変化の指輪。ソルが使っていて今はキョウカが保管している精神の指輪。そしてフィンが所持している歪曲の指輪のみだ。オリジナルリングは全部で八つ。まだ半分の指輪しか知らないのだ。これから残りの指輪を集めるのならその情報は知っておいた方がいい。
「そうだね。じゃあ話しておこうか。残りの四つの指輪について」
キョウカが指輪の話を始めようとした時。
「うわぁ!」
ナズナが悲鳴を上げて魔道車が急停止した。
「うげ!」
「ぐはっ」
「おっと危ない」
「きゃあ!」
「「「「今きゃあって」」」」
車が急停止したことにより一同が壁に激突する。シルだけは飛ぶことが出来るので激突せずに済んだが。
「もう!またこれか!!今度はどんな奴が飛び出してきたの!!」
もはや恒例行事というべき魔道車運転中の飛び出し。この出来事はこれまでにもファイアーシスターズやドーベル、シオンなどが行なっている。
「その顔拝んで損害賠償請求してやる!それが終わったらさっさと行くからね!関わらない様にね!!」
「お、おう」
キョウカはそう言い残すと魔道車を降りた。
「も、申し訳ねぇ!オラ、相棒のポチを探してて!そんで、」
「何にせよ飛び出しは悪。賠償金置いてさっさと消えな」
「ひ、ひぇぇ!ゆ、許してけろ!オラ悪気はながったんです!ポチは、田舎からでできてずっと一緒だったもんで」
今回の飛び出し犯は顔にそばかすのついたいかにも田舎者という雰囲気の青年だった。青年は仁王立ちで損害賠償を請求してくるキョウカに怯えてオドオドしていた。
「こら!可哀想だろうが!それにぶつかってもいないんだし損害賠償なんていらねえよ」
「あ!こらライヤ出てくるな!あんたが出てくるとまた余計な事に関わる事になる!」
キョウカを見かねてライヤが魔道車から出てくる。自分を庇うライヤに青年は心底ほっとした様な顔を見せた。
「元はと言えば道が悪いし視界も悪い。そんでもってこんな道魔道車が通ってるなんて誰も思わないしここはお互い様って事で手を打とうぜ」
「も、申し訳ねぇ!でも、そうしていただけると非常に助かります!オラは一刻も早くポチを探さねえといけねぇんで!」
「ポチ?ペットか?」
「んだ!ペットと言うか、オラの相棒なんです!ポチがいねえとオラこの先やっていげねぇ」
凄く困った様な顔をする青年。その姿を見たライヤが
「却下」
「まだ何も言ってねえだろ!」
「どうせこの人を助けたいとか言うんでしょ!?無理!却下!そんな事している暇はない!」
図星である。ライヤはちょうどこの人を助けたいと言おうと思っていた。
「一緒にポチを探してくださるんですか!?ありがてぇ!ありがてぇです!都会の人はやざしいんですねぇ!」
青年が喜ぶと同時に凄い顔でキョウカに睨まれた事でまた怯える。青年にとってライヤとキョウカはまさに天使と悪魔だった。
「こういう時は多数決!みんなー!この人を助ける人は手を上げてー!」
ライヤが魔道車にいる仲間達に声をかけて手を上げる。
「私は賛成です!困っている人は見過ごせません」
「俺もだ。どうせペット探しだろ?その程度ちゃっちゃと終わらせて目的地に向かえば問題ねえだろ」
三体二。多数決により助ける事が決定した。
「ありがてえです!ポチはカッコいい黒色の子なんです!あ、オラはマーティ!田舎もんですけど、よろしくお願いします!」
「俺はライヤ。こっちがキョウカでフィンさん、ナズナ、シルだ。よろしくな」
「んだ!」
マーティが笑顔を見せてお礼を言う。それに応じる様にライヤも笑顔を見せる。どうやら既に仲良くなった様だ。
「珍しいな、お前が人助けを躊躇うなんてよ」
フィンがシルに声をかける。多数決の結果は賛成がライヤ、ナズナ、フィン。反対がキョウカとシルだ。基本的にシルは知識の為ならどんな事でも。人間は面白い生き物なので積極的に関わる、と言うタイプの妖精だ。そのシルが人助けを断る事はフィンにとっては意外な事だった。
「ボクも助けようとは思った。けど、なんだか嫌な予感がしてね。まあそんなに凄く嫌な予感じゃないからフィンやみんななら切り抜けられるとは思うんだけど」
「そうか。切り抜けられるなら大丈夫だ。キョウカちゃんは怒るかも知れねえけど、旅に問題は付き物。寄り道は率先してするもんだ」
「うん、そうだね!」
一抹の不安を抱えながらもフィンの言葉に納得してシルもポチの捜索を開始する。
「ここって結構木々が生い茂ってんだね。地面も沼が広がってるし」
魔道車を収納の指輪にしまって辺りを探す。そこは沼地の様で至る所に泥の沼や大きな木が生えていた。
「こんな所で犬探すのー?めっちゃ汚れてそう」
「お姉様、頑張りましょうね!早く見つければ直ぐ旅を再開出来ますから」
広い範囲でポチを探すに当たって一同は手分けをして探す事に決定した。ライヤとマーティ。キョウカとナズナ。そしてフィンとシルの三班に分かれてポチの捜索に当たった。
「ポチー!どこにいるー?」
「フィンったら猫に話しかけても反応なんてしないよ」
「いや名前呼ばれれば鳴くかもしれねぇし草むらとかから飛び出してくるかも知れねえだろ?それと、多分犬だぞポチ」
ポチと言う名前からして恐らくマーティのペットは犬だろう。黒いと言っていた事からフィンは黒犬を想像していたのだが。
「え?猫じゃないの?ほら、猫といえばポチ、いや。タマだね。猫といえば」
シルが指を頬に当てて暫く考えると自分が勘違いをしている事に気がついた。シルはずっと黒猫を想像していたがポチなら黒犬だろう。
「ん、待てよ?」
「どした?」
「確かにマーティはポチは黒くてカッコいいとは言ったけど、何もポチが犬だなんて言ってないよね?」
シルが思い返してみるとマーティは一度もポチの正体を口にしていない。更に思い返してみるとマーティの指には指輪が付いていた。
「嫌な予感がする。フィン!ライヤの所に行こう!」
フィンがシルの言葉に頷きシルを肩に乗せて走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる