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2章 冒険の仲間
37話 次なる指輪は
しおりを挟む「くそあの盗賊団めー!絶対追いついてとっ捕まえてやる!」
「それは無理だと思うよ。あいつの指輪は瞬足の指輪。例えライヤの雷鳴の指輪で全力で追ったとしても追いつけるかどうか」
シルのその言葉にキョウカは隠すつもりもなく大きな声で舌打ちをする。指輪が奪われそうになった事よりまた時間を無駄にしたことに苛立っている様だ。
「ん?お兄様。あの人が何か落としたみたいですよ?」
「マジか。ドロップアイテムとかかもな!」
「ゲームじゃねえんだからそんな訳ねぇだろ」
フィンは薄らと苦笑いをしながらも少しウキウキしながら落とした物を拾うライヤに近づいていく。
「これは、紙?チラシみたいだな」
「チラシ、ですか?」
ライヤが四つ折りになっている紙を開く。そこに書いてある事をライヤは声に出して読んだ。
「求む!人工迷宮挑戦者!」
「人工迷宮、ですか?」
そこに書いてあったのは新しく人工的に作られた迷宮、ダンジョンの情報が乗っていた。どうやらその迷宮には本物の宝物もある様だ。
「金銀財宝とかは流石に無いみたいだが色々なランクの指輪が各階層に散りばめられてるらしいぜ?」
「ほほう指輪か!そりゃテンション上がるな!」
「私達には使えないかも知れませんが売却すればお姉様のお食事を豪華に出来るかも知れませんね!」
ナズナがチラリとキョウカの方を見てわざとらしく大きな声で呟く。ライヤとフィンのテンションが上がっている様子を不機嫌に見ていたからだ。
「ナズナちゃん。私がご飯になると機嫌が治るとでも思ってない?」
「え?あ、あははは」
図星を突かれたナズナはキョウカの視線を誤魔化す様に笑う。
「おいキョウカ!これ見ろよ!!」
「ヤバいぜキョウカちゃん!こいつはヤベェよ!」
「あぁん?人工迷宮なんて行く訳ないでしょうが!ぶっ飛ばすよ?」
とても女の子とは思えない迫力のある声に二人は少し怖気付くがそれで止まれるほど気づいたことは小さなことでは無い。
「見れば分かるって!ほら!」
「しつこい!何だってのよ!」
苛立っていながらもライヤが渡したチラシをキョウカが受け取る。そしてチラシに目を移すと。
「ハァァァ!?人工迷宮を五階層をクリアした方には伝説の指輪、オリジナルリングの一つをプレゼントォォ!?」
そう、チラシの最後の一文にライヤ達には無視できない一文が書き込まれていたのだ。
「いや、信じる訳ないでしょうが」
「うん。怪しさ全開だよ二人とも」
驚きはしたもののそんな場所にオリジナルリングがあるとは考えにくい。更にこんなに堂々とオリジナルリングの存在を教えるなどと。
「でもこれが本物のオリジナルリングなら行かねえと別の冒険者とかに指輪を取られちまうぜ!?」
「それに絶対に考えられない訳じゃねえぜ。何故ならオリジナルリングはまだ四つ。世界の何処かにあるんだからよ」
ライヤとフィンの言い分も分からない訳では無い。しかしどうにも信用できない。
「もしかしたら、これは私達を誘き寄せる罠なんじゃ無いですか?」
「罠、か。確かにその線はあり得る」
もしこの人工迷宮を作り上げ、キョウカ達を誘き寄せようとしているならば考えられる。それをするならやったのは魔族だろう。
「でも、これが罠だとしても行く必要はあるよな」
「ああ。もしオリジナルリングがあるのなら行かざる終えないよな」
ライヤとフィンの言葉にキョウカは頭を悩ませる。確かにその人工迷宮にオリジナルリングがあるなら行かなければならない。しかし罠ならば危険だし、オリジナルリングがない可能性の方が高い。
「そうだ!キョウカはオリジナルリングの場所を光で見つけられるんだよね?それをすれば分かるんじゃ無い!?」
「そっか。ライヤ、その人工迷宮の地図とか載ってる?」
「おう。えっと、こっちの方向だな」
ライヤが地図を見ながら人工迷宮の方向へ指を刺す。その指の方向を見ながら精神の指輪に光を灯す。その光は真っ直ぐに進み。
「マジか。同じ方向だな」
「っーことは。このチラシに書かれてることは真実って事かよ」
「それは詳しくは分からないけど、その人工迷宮には行かざる終えないみたいだね」
そうと決まれば話は早い。一同は魔導車に乗り込みエンジンをかけた。
「行きます!飛ばすので皆さんしっかり捕まっていて下さいね!!」
「え?ナズナちゃん?安全運転でぇぇぇ!!」
ナズナの運転はいつもは安全第一だが急ぐとなると話は変わる。安全は二の次。速度を上げられるだけ上げて全力で走り続ける。それだと言うのに事故などは一切起きない。ナズナのドライビングテクニックの賜物だ。
「ま、まさか。こんな早く着くとは思わなかったぜ」
移動する前の一同のいた場所から人工迷宮までは約二日程の距離だったが、なんと一日で辿り着いてしまった。しかし時刻は深夜。流石にこの時間から人工迷宮に入るのは危険でもある。
「ふぅ。流石に疲れました」
「お疲れ様ナズナちゃん。私の為にありがとね」
「いえ!お姉様の力になれたのなら嬉しいです!」
キョウカに笑顔を見せるナズナにキョウカが抱きつく。微笑ましい光景だがこれからの事を考えて行かなければならない。
「シル。この辺に街とかないか?ナズナと、そこで車酔いしてるフィンさんを休ませてやりたい」
「ちょうど近くにあるよ。この人工迷宮に挑戦してる人が下宿する為に作られた簡易的な物みたいだけど」
「簡易的な街?もしかして宿はテント的なやつか?」
確かに野宿をするよりはいいかも知れないが今回宿を取るのは二人をしっかりベットで寝かせてあげたいからだ。それが無いなら魔導車の中で寝ればいいのだから。
「まあ、行ってみれば分かるよ」
シルの言葉にひとまず納得してライヤは魔導車を収納の指輪に仕舞い込み、移動する。
「ここが、簡易的な街?」
ライヤは目を丸くしてその街を見る。その街はとてもじゃないが直ぐ出来たとは思えない作りだった。
「しっかり建築されてる様にしか見えねぇぜ?シル、確かな情報なのか?」
「勿論!あ、人が来るからボク消えるね」
シルがそう言い残して姿を消すとその数秒後に女性が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。人工迷宮最寄街、リベイアにようこそ!観光ですか?いや、そんな訳ないですよね。そう!迷宮!迷宮に挑みにきたのですよね!!ね!!」
「お、推しが強いな。まあその通りだけど」
「でももうこんな時間!もう体を休める時間です。ならば!ウチの宿屋に泊まって行きませんか!?なんと今なら初回宿泊半額です!!」
「お、おう」
かなり推しが強い女性はどうやらこの街、リベイアの宿屋の従業員らしく宿屋を直ぐに紹介してきた。確かにくたびれていて宿屋を選ぶのも面倒ではあるし半額というキャンペーンは助かるが、なんとも推しが強い。
「分かった。そこに泊まるよ。二人部屋取れるか?」
「勿論でございます!!」
「待った。その前に質問に答えてくれるか?」
ライヤが宿屋へ行こうと思うとそれをフィンが止める。
「なんでしょうか!?」
「いや、ここは人工迷宮の為に作られた簡易的な街だって聞いてたんだが、随分よく出来てんだなと思ってよ」
フィンは少し睨みを聞かせて女性に問いかける。シルの情報を信じて警戒している様だ。
「ええ!これらの建築物は全て指輪により作られているので早く、頑丈です!これこそ我らが市長の指輪!木材の指輪なのです!!」
「なるほどな。指輪による建築物なら簡易的ではあるのか」
ひとまずシルの情報が間違いではないと言うことが分かった。その指輪には少し興味があるが、まずは体を休めるのが先決だろう。
「じゃあ宿屋へご案内します!!」
女性について行き、一同は宿屋の中へと入っていった。
「そういえば、シルはこういう時どうするんだ?」
部屋に入りベットに飛び込んだライヤはシルの事についてフィンに聞く。部屋割りは当然男女で分かれておりライヤとフィンで一部屋。そしてキョウカとナズナで一部屋だ。
「基本的には契約者の俺の近くにいる。だから部屋で寝るなや多分この部屋だな。変な気を起こすんじゃねえぞ?」
「起こさねえよ。というかベットに入ってきてたら潰しちゃいそうで心配だ」
「心配すんな。多分宿屋にいる時はシルは姿を現さないからよ」
妖精については詳しく分からないが姿を消した状態でも睡眠が取れるのだという。更にシルは戦闘能力が皆無なのでフィンと二人の時以外は滅多に姿を見せないのだとか。シルが誘拐されて、その力を悪用されない為らしい。
「なるほど。知れば知るほど妖精って不思議な生き物だな」
「妖精にとっては人間も同じ様な存在なのかもな」
「深いなー」
ライヤとフィンは他愛のない会話をしながら眠りに落ちていった。
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