41 / 81
2章 冒険の仲間
41話 友と書いてダチと読む
しおりを挟む「オイラの勝ちだな!諦めて負けを認めちまいな!!」
ライヤの渾身の一撃を防いだカゼジロウが瞬足の指輪で加速されたパンチをライヤに繰り出す。ライヤもガードしようと腕を交差させるがガードしていない部分にカゼジロウの一撃が入る。
「がっ!」
「まだまだまだまだ!!」
怒涛のラッシュにライヤは歯を食いしばり、悲鳴も上げずに耐え続ける。
「やばいよ!フィン!なんとか出来ないの!?」
「そうです!フィンさんの指輪でお兄様をお助け出来ないのですか!?」
「落ち着けよ二人とも。この殺し合いはサシだ。俺が入ったらルール違反で負けになっちまうぜ?」
「そんな話してなかったでしょ。反則をしても負けなんて聞いてないけど」
キョウカの屁理屈にフィンは黙って答える。
「このままじゃライヤが負けるのは確定でしょ!せっかく取り戻したオリジナルリングが!!」
「だから、落ち着けよ。まだライヤが負けるなんて決まってねえだろ。それに」
「それに?」
「あいつは男と男の決闘に臨んでるんだ。そこに何が掛けられているのか。その懸けている物がどれだけ重要なのか。そんな事、ライヤだって分かってるさ」
カゼジロウの猛攻は終わらない。全身に痛みが伝わる。肉が、骨が。もう限界だとライヤの体に危険信号を出している。だが。
「負けねぇ」
そんな物は戦闘中に大量に放出されるアドレナリンが消してくれる。ライヤは負けない。負けられないのだ。ここで負けたら、これまで苦労して取り戻して来たオリジナルリングがキョウカの元から無くなってしまう。
「俺は、キョウカを悲しませる事だけはしねぇって。決めたんだよ!!」
「はっ!カッコいいじゃねぇか。だが残念だったな!!その覚悟も指輪も!全部姫さんが頂くぜ!!」
カゼジロウが指輪を眩い程に光らせ拳を振るう。この一撃でトドメを刺すつもりだ。
「っ!」
しかしその拳はライヤに触れる前に止まった。
「なんだこれ。体が動かねえ」
「効いてきたか。どんだけ耐性あるんだよお前」
カゼジロウの体の動きが止まった理由。それはライヤが放った稲妻がカゼジロウの身体中を巡り、痺れさせているからだ。
「がっ!体を動かそうとすると、全身に電撃が回って、動けねぇ!!」
「形成逆転、だな!!」
動けないカゼジロウの体にライヤは右ストレートを打ち込む。
「ぐはっ!」
その拳は決して強い攻撃では無いが、全身に電撃が走り、体がボロボロなカゼジロウには有効打となり得る。
「がはっ。はぁ、はぁ。舐めんじゃねえぞ。オイラにも、負けられねぇ理由があんだよ!!」
「ぶはっ!?こ、こいつ。まだ動けんのかよ!!」
カゼジロウも拳に力を入れてライヤを殴りつける。
「瞬足の指輪をフル活用してようやく今の一撃。カゼジロウ君はもうダメですね」
「あらマーティ。もしかして諦めているの?」
「姫?」
カゼジロウの動きを見て諦めていたマーティがローズを見上げる。
「カゼジロウはまだ諦めていないわ。それなら私達がやる事は一つでしょう」
「っ!はい!そうですね!」
マーティは大きく息を吸い込んで叫ぶ。
「頑張れ!!カゼジロウ君!!」
マーティの声に応じる様にカゼジロウはまた一撃、拳をライヤの体に叩き込む。
「何をっ!ライヤ!負けたら招致しないからね!!」
「お兄様ー!!!頑張って下さーーーい!!」
「男を見せろ!!ライヤ!!」
「ファイトー!ライヤー!」
お互いの応援の声がライヤの耳に、カゼジロウの耳に入ってくる。その言葉に動かされる様に二人は拳を握った。
「うおおおおお!!」
「だりゃぁぁぁ!!」
型も何もないただただ力を込めたパンチがカゼジロウに刺さる。すると今度は大きく振りかぶられたカゼジロウの腕にライヤの顔が当たる。そこから先は意地のぶつかり合いだった。
「くたばりやがれ!!」
「お前の方こそ!!」
漫画やアニメにありがちな格闘シーンとは程遠い、子供の喧嘩の様な二人の殴り合い。無傷の時なら大したダメージ、大きな痛みにもならない弱々しいパンチ達は確実に二人にダメージを与え、体力を削り、確実に戦闘不能へと近づけていく。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「ぜーはー、ぜーはー」
両者互角。最後にはポカポカと言う効果音がふさわしい程の殴り合いが一度途切れる。
「そろそろ、限界だよな。だからオイラからお前に提案がある」
「なんだ、よ。言ってみな」
「次の一撃。それにオイラ達の全てを載せよう。それでどっちが勝っても、恨みっこなしだ」
カゼジロウからの提案。キョウカは「そんなもん受けなくていい!」と叫ぶが耳から血を流しているライヤにその声は上手く通らない。
「いいぜ。受けてたつ」
「勝った!!」
ライヤの返答にカゼジロウではなくマーティが喜びの声を挙げる。この最後の一撃をカゼジロウは回避して、ライヤにトドメを刺すつもりだと考えたのだ。カゼジロウは頭は良くないが、本能的に勝ち筋を見出せる。故にこの作戦に乗った時点でライヤの負けなのだ。
「行くぞ!!!」
「かかってきやがれ!!!」
お互いの全力が篭った右手と左手がお互いの顔面を見事に捉えた。
「え?」
マーティが驚きの声を挙げるがローズは分かっていた様に目を閉じた。
「あの子がそんな事考えられると思う?あの子は素直に全力同士をぶつけたかっただけよ」
「ぐっ、はぁ」
「がっ、ふぅ」
二人は腑抜けた声を出しながら荒削りでデコボコな岩で出来た床に大の字に倒れ伏す。
「お前、めちゃくちゃ頑丈なんだな」
「お前こそ、タフ過ぎるだろ」
「「ふ、フハハハハハハハハハ!!」」
見るも耐えない程ボロボロで酷い傷を負っている二人がほぼ同時に笑い出す。
「え?何これ。何が起こってんの?」
「歪みあってた男達が拳で語り合ったんだ。そりゃあ意気投合して友(ダチ)になる流れだろうが」
「ちょっと何言ってるのか分からない」
ポカンとするナズナに分かりやすく動揺するキョウカ。女の子には分からない、男のロマン、と言うやつなのかも知れない。
「なぁ、お前の名前って何だった?」
「おいおい今更かよ。戦闘中にめちゃくちゃ叫ばれてたじゃねえかよ」
カゼジロウの質問にライヤは笑って答える。
「ライヤ・アラタだ。お前は?」
「カゼジロウ。下の名前は知らねえ。この名前だって、多分本名じゃねえし」
ライヤは暫く黙り込んだ後、「そうか」と短く呟く。
「なあカゼジロウ。俺たち、友達になれねえかな?」
「あ?」
ライヤの言葉にカゼジロウはこれまた短く返す。
「お前はアニメとか漫画とか見れたかは知らないけど、男達がこうして殴り合って地面に寝転んだら、友情が生まれるんだよ。だから」
「はっ!くだらねえな」
ライヤの発言をカゼジロウは鼻で笑い、切り捨てる。
「オイラ達はもうマブダチだろうがよ」
かと思いきや、妙にいい顔をしてそう口にした。
「ふっ!フハハハ!そうだな、マブダチだ」
ライヤもカゼジロウに同意。ここにマブダチが誕生した。
「あ、でも引き分けになったら、姫さん達はどうなるんだろうな」
「そうだな。キョウカに負けは渡さなかったが、勝ちも渡せなかったのは情けねえ」
二人の体力は既に限界を超えている。こうして話している間にも段々と意識は遠のいていっているのだ。
「まあ、ここから先の話は姫さんに任せるか。オイラは、少し、休ませてもらう」
「ああ。俺も、キョウカ達に、後を、任せて、休もう」
その言葉を最後にカゼジロウとライヤは意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる