original ring

藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

42話 欲望の指輪

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「いい試合だったぜライヤ。後は任せな」
 力尽きてカゼジロウとともに倒れたライヤには聞こえてないであろうがフィンが呟く。
「さて、どうするよ盗賊団。俺らの代表は二人とも伸びちまったが?」
「そうね。なら第二回戦と行きましょうか」
 フィンにローズは落ち着いたまま話を続ける。まるでカゼジロウが引き分ける、もしくは負ける事を想定していた様だ。
「二回戦は二対二と行きましょう。ゴールデンローズからは私とマーティが出るわ」
「じゃあ一人は俺が出るとして、もう一人は」
「フィンさん!私に行かせてください!」
 フィンが後ろを振り返りキョウカとナズナを見るとナズナが直ぐに名乗りを上げた。
「分かってんのか?ここで負けたら指輪が取られちまうんだぜ?」
「分かっています。それでも、私は戦いたいのです」
 ナズナの目には決意が漲っている。覚悟はとうにできているという目だ。
「うっし!じゃあナズナちゃんと俺で行くか!いいかいキョウカちゃん?」
「勿論。私は大した戦力にならないし。任せるよ、信じてるからね」
 キョウカの言葉に二人は強く頷き前に歩き出す。ちなみにライヤとカゼジロウはキョウカが縁の方へと引きずっていった。
「それじゃあ、始めるとしましょうか!」
 準備が整った瞬間にローズがオリジナルリング、欲望の指輪を発動する。二人は身構えるが直接的な攻撃は飛んでこない。そのかわり。
「うっ。何だこれ、腹、減った」
「わ、私もです。なんだか、力が、出ない、です」
 二人が急に腹を空かせ始める。体感としては四日間何も食べていない様な感覚。
「それは欲望の指輪の能力の一つ!食欲の力、マイナスだ!でもその発動には暫く時間が掛かるはず!」
 キョウカの叫びにローズが不敵に笑う。そう。ローズは初めからこの指輪の能力の準備を始めていた。カゼジロウに戦わせたのはこの能力を発動させる時間稼ぎだ。
「欲望の指輪には主に三つの能力があるの。一つは食欲を操作する力。もう一つは性欲を暴走させる力。最後の能力は睡眠欲を高める力!」
 ローズが楽しげに指輪の能力を説明してくれる。この指輪の効果は相手への妨害などがメインである。故に二対二なのだ。
「姫は相手の力を奪うのが仕事。後はオラの役割だ!」
 マーティが指輪を発動させると何もない所から沢山の魔獣が現れる。
「転移の指輪!君達に負けた事で買った指輪さ!この指輪があれば遠く離れてる僕の友達達をこの場に呼べる!さあ!蹂躙されなよ!」
 魔獣達がマーティの声に合わせて雄叫びを挙げてフィンとナズナに襲い掛かる。
「はっ!空腹だと力が出ない。それは当然の事だな。だがな!空腹程度で俺を止められるとでも思ったかよ!!」
 フィンが襲い掛かる魔獣の一匹に棍棒を振り下ろす。フィンの全力は出せていないのか威力は少し低いが魔獣の骨を叩き折るには十分だ。
「くっ!こっちには数がいるんだ!お前達!あいつを殺せ!!」
「ちっ!厄介な!」
 フィン一人ならば魔獣の対処程度大した事はない。しかしこの空腹感は約四日ほど何も食べていない感覚だ。なかなか力が出せない。
「思い出すなぁ。貧乏な冒険者時代をよぉ」
 フィンは以前一週間水生活をしていたことがある。故に空腹に耐え得る体ではあるがナズナはそうでは無いだろう。ナズナを守りながら魔獣を倒していかなければならない。
「やぁっ!」
 そう思っていたフィンは目を丸くする。ナズナの方に襲いかかった魔獣にナズナはナイフを抜き見事に切り裂く。
「この程度なら問題ありません。私、お兄様とお姉様に救ってもらう前はこの程度の空腹日常でしたので!!」
 ナズナが声を上げながらナイフを踊らせる。ナズナが走りナイフが動くと一匹、また一匹と魔獣達が血を噴き出して倒れていく。
「凄ぇな。マキのナイフ捌きを完全にマスターしてるじゃねえか」
 ナズナの体格はナイフの師匠であるマキの体格と似ている。そのせいか魔獣を相手取り血を噴出させるナズナの姿がマキと重なって見える。なんとも頼もしく成長したものだ。
「フィンさん!」
「ああ。俺も負けてられねえなぁ!!」
 食事は人間の力の源だ。そのエネルギーをほとんど絶ったというのに目の前の二人は棍棒を振り下ろし、ナイフを踊らせる。
「化け物なのかしらね」
 今までこの指輪を発動させた多くの冒険者はなす術もなく蹂躙されていた。ローズにとってはこの様な経験は初めてだ。
「それでも、私は負けないわ。私はこの国の頂点に立つのよ!」
 ローズが叫びを挙げて欲望の指輪を発動させる。食欲が通じないのなら次の欲望を暴走させればいいのだ。
「オフっ!」
「フィンさん!?」
 ローズが指輪を発動させるとすぐさまフィンが倒れる。
「どうしたんですかフィンさん!?しっかりして下さい!」
「や、やべぇ。ムラムラする」
「・・・」
 倒れたフィンに駆け寄って声を掛けるナズナは無言でフィンから離れていく。
「まっ、待ってくれ!マジでおかしいんだってこれ!俺が興奮したくてやってる訳じゃねえ!」
「・・・そう言われましても」
「そうだよな!こんな殺し合いの中急に発情しまくって気持ちよくなってる男ふざけてると思うよな!でも事実なんだよ!」
 フィンの声にナズナは怪訝な顔を見せるがフィンに襲ってくる魔獣はひとまず対処する。
「フィン!ナズナちゃん!その効果は欲望の指輪の性欲の能力だ!体が敏感になって男は多分死ぬ!」
「男の人が?よく分かりませんけど私には何もありませんよ?」
 ナズナの疑問にキョウカは冷や汗を流す。欲望の指輪の性欲の効果は性を知っている者にしか効果がない。ナズナに効果がないのはナズナに性の目覚めがまだだからだろうが、その事を説明するのはなんだか恥ずかしい。それにキョウカ自身もこの指輪についてはあまり理解していないのだ。
「そりゃ性欲の話なんか小さい頃の私じゃ理解出来ないでしょうが」
 兎にも角にもフィンは恐らくもう戦えない。となるとナズナが頼みなのだが。
「あ、空腹が無くなった。それなら。変化!!」
 欲望の指輪の能力は重複が出来ない。食欲なら食欲。食欲と性欲を同時に発動する事は出来ないのだ。その為空腹感に襲われてあまり使えなかった変化の指輪が使える様になる。
「そんな、みんな!」
 デカイ魔獣も、凶悪な魔獣も、群れで動く魔獣も、全ての魔獣の姿が小さな鶏の姿へと変化する。
「終わりです!」
 ナズナが地面を蹴り走り出す。全ての鶏にナイフをしっかりと入れて全ての鶏を殺す。その後変化を解除すれば。
「魔獣の討伐、完了です」
「そ、そんな。僕の友達みんなが殺された。くっ!ポチ!!みんなの仇を取ってくれ!!」
「ガァァァァ!!」
「変化」
 最初の魔獣の群れには入っていなかったマーティの相棒、アックスレイブンのポチが迫力ある叫びを挙げるが一瞬で鶏へ変わる。
「申し訳ないですけど、終わりです!」
「ポチィィィ!!」
 ナズナがナイフで鶏を切り裂こうとするとマーティが間に入りポチを庇って切り裂かれる。
「ぐぁぁ!」
「まさか魔獣を庇うなんて、想定外です。本当にお友達だったんですね」
 血を流して倒れるマーティにポチは悲しそうに鳴く。そのポチを殺すのは少々気が引ける。
「魔獣、そして盗賊団。殺しても問題はないのですが、お兄様ならそんなことしませんね」
 ポチ以外の魔獣はマーティが大事にしているというよりは捨て駒という感覚が強かった。しかしポチだけは本当に友達なのだろう。
「寝ていてください」
 ナズナは鶏姿のポチにライヤから貰った睡眠薬を飲ませて眠らせる。まさかフィンの寝息がうるさくてライヤから貰っていた睡眠薬がこんな所で役に立つとは思わなかったが。
「さて、後はあなただけですよローズさん。マーティさんの傷の手当もしたいので、降参して下さい」
 マーティの傷は死ぬ様なものではない。しかしこのまま放置していれば危険だ。ナズナでは応急処置くらいしか出来ないが、キョウカとキュアならば完璧に傷を癒せる。なのでナズナのしてはすぐ降参して欲しいのだが。
「ふ、ふふふふふ。降参?冗談でしょう?私は!こんな所では終われないの!!」
 ローズが指輪を発動。選ぶ能力は残る最後の一つ、睡眠欲だ。
「くっ!」
 指輪の発動と同時にナズナに極力な眠気が襲う。気をしっかりと持ち眠気に耐えようと唇を噛むが、眠気は振り払えない。
「ま、まずい」
 気を抜くとすぐにでも眠ってしまいそうになる。力を込めて一度自分の顔を叩いてみるが眠気のせいか力が出なく痛みをほとんど感じない。
「ナズナちゃん!!」
「お、お姉、様」
 ナズナは必死に声を上げるキョウカを薄めで見ながら、目を閉じた。
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