original ring

藤丸セブン

文字の大きさ
57 / 81
3章 血液城

57話 切り札

しおりを挟む

「さて、まだ生きてる?」
 キョウカが頭突きをお見舞いしてから数十分の時が過ぎた。その時の戦況は一方的。キョウカはミクリに手も足も出ずに傷つけられるだけ。キョウカは傷をキュアに治してもらってはミクリに挑むが一度も攻撃を当てられていない。
「ボイス!」
 シルの言葉にボイスが音による無線を開く。
 (不味いよ!ここままじゃキョウカの切り札を発動する前にキョウカが死んじゃう!)
 キョウカがミクリに挑むと決めた理由の一つとしてキョウカには切り札があった。
 (ええ、それは分かっています。しかし)
 キョウカはそれでも諦めずにミクリに挑む。だが、体力も精神力も限界が近い。
 (マスターは言いました。切り札は隠しておくからこそ切り札なのだと。特にマスターの切り札は一回限りのとっておき。ヴァンパイアを完全に殺せるタイミングまで使うつもりは無いと)
 (そんなこと言ったって、君が死んだら意味がないんだぞ。キョウカ)
「がっは!げほ!」
「オリジナルリングも使えず、普通の指輪すら使えない雑魚の癖によく足掻いたと褒めてあげてもいいんだけど、ちょっと面倒くさかったよ。だからこれでもう終わりにしようか」
 腕は上がらず足もほとんど動かない。ミクリは血液の武器を剣から鎌へと変更していた。その鎌をゆっくりと振り上げてキョウカの首を狙う。
「クッソ、ここまでか。もう体が動かないや」
「キョウカ!」
「ァァァァァァァァ!!」
 キョウカにトドメを刺そうとするミクリに騒音歌を当てるがピクリとも動かない。全くダメージがない。
「そうだ、最後に一つだけ」
 キョウカの遺言にミクリは少し動きを止めた。どうやら遺言を聞いてくれるつもりはある様だ。それなら、
「ライヤのやつはチンコデカイからセックスする時は気をつけた方がいいよ。すっげー痛いから」
「・・・は?」
「へ?」
「あら?」
 キョウカの想像もしなかった遺言にミクリだけでなくシルとボイスも目を丸くする。
「それでいてあいつ早漏でさ。しかもゴム付けたがらないの。めちゃくちゃ最低な野郎だからやる時は避妊具飲んどきなね。私みたいに降ろさなくちゃいけなくなるよ」
「え?キョウカとライヤってそういう?」
「破廉恥な!?マスター!?嘘ですよね!?」
 キョウカの恐ろしい言葉の数々にシルが動揺してウロウロと空を飛び回りボイスは顔を真っ赤にしてキョウカに叫ぶ。そしてミクリは鎌を振り上げたまま固まっていた。
「死ね」
 固まっていたミクリがポツリと呟く。今のミクリの脳内は怒りに満ちていた。
「待ってたよ」
 ミクリは血液の鎌を振り下ろし、鮮血が飛び散る。
「え?」
 鎌はキョウカではなく、ミクリの心臓へと突き刺さっていた。
「あんたの見解は間違ってるよ。確かにアリシス一族は妖精との関係が強いだけで指輪を使えない一族だけど。オリジナルリングだけは別。全てのオリジナルリングにほんの少しの適性があって、無茶をすれば一回くらい使えるんだよ」
「精神の指輪、か」
 第二のオリジナルリング、精神の指輪。その効果は対象の精神に介入してその精神を書き換える。
「普通の状態のあんたに精神の指輪は効かない。でも、油断しきってるトドメのタイミングと私とライヤの想像以上の関係を聞いて憤怒したあんたなら、一瞬の隙が出来る」
 隙を作り、その間に精神の指輪を発動。脳内を操作して鎌を振り下ろす場所はキョウカの首ではなくミクリの心臓へと変更した。通常のミクリなら即座に気づかれてしまうか精神に干渉などさせてくれないだろうが。
「ふ、うん」
 ミクリはそっけなくそう言い残してキョウカのすぐ横に倒れ込んだ。
「ライヤ、悪いな。気持ち悪い嘘ついちゃって、で、も。助けに、きた」
 キョウカは傷だらけの体を無理矢理動かして鎖に縛られたライヤの元へと歩き出す。
「キョウカ!無茶しない!ライヤはボイスに助けさせるから!」
 シルがそう言うとボイスは声を出さずに頷きライヤの手の鎖を音を震わせて破壊する。
「ボイス、声が」
「もうボクはキョウカに精神力送ってないし、キョウカも送れる程の力持ってない。大丈夫。妖精から元の準妖精に戻っただけだからさ」
 シルの言葉にキョウカは安堵の息を漏らす。これで全てが終わったのだ。
「うおおおおおおおお!!」
 と思った寸前。ライヤに付けられた足の鎖をボイスが破壊した直後にライヤが叫びをあげてキョウカに全速力で走り出す。その目はとても血走っていた。
「え?」
「キョウカ!?」
 髪の毛の八割が赤くなっており、口元には立派な牙が、背中には二つの羽が生えているライヤは驚く程の速度でキョウカの元へ辿り着き、キョウカの体へ覆い被さった。
 ザクッ
 鋭い音がミクリの部屋に響き渡る。それ程に凄く大きな音だったと思うが、キョウカには軽く聞こえた。キョウカの目の前に大量に飛び散る鮮血。その血がキョウカの顔に向かってくるが何をする事も出来ずに飛んでくる血をキョウカは顔で受け止める。
「え?」
 数秒後、キョウカは全てを理解した。
  ◇
「ん?ここは?」
 何かゴツゴツとした何かに体を支えられている感覚に違和感を覚えてナズナは目を覚ます。
「おう、起きたか。じゃあ自分で歩け、重ぇ」
「あなたは、変態仮面さんでしたっけ?」
「カゼジロウさんだ!振り落とすぞお前!?」
 ナズナは状況を確認。ナズナは今カゼジロウにおんぶされて血液城を進んでいた。
「あなたがここにいるってことは、勝ったって事ですね」
「あったりまえだろ!倒した後気絶して目を覚ました後は吸血鬼のやつはいなかったが、まああの傷で戦闘は出来ねえだろ」
「えぇ」
 ナズナは少し呆れたが自分もルゥを倒した後即座に気絶してしまったことを思い出し黙る。
「しかし意外です。あなたが私を助けてくれる事もですけど、まさかおんぶしてくれるとは」
「いや、猫みてぇに運ぼうとも思ったんだが。一応な」
 カゼジロウがナズナを見つけた時、吸血鬼の姿は見えなかったが周りの状況から激戦だった事は分かった。
「オイラはお前を弱いメスだと思ってた。だが、お前は強いメスだった。立派な戦士にはそれ相応の対応が必要だろうが」
「・・・ありがたい話何ですけど、メスっていうやめてくれません?」
「それは無理だ」
 即座に断られてナズナは少し拗ねる。しかしカゼジロウとはライヤを救ったら終わる協力関係でしかない。ならばもう少し耐えればいいだろう。
「おっ、なんか凄え部屋に出たな。壁とか床がボロボロだぞ」
「本当ですね。多分フィンさんが戦った跡だと思いますけど」
 フィンとカイが戦った部屋を通って先へと進む。
「死体はねえな。ん?死体がないなんておかしくねえか?」
「確かにそうですね。吸血鬼は生命力が強いから私達より先に起きてお姉様の元へ行っているなんて事は」
 ナズナは最悪の想像をして恐ろしくなる。吸血鬼は人間よりも傷の治りが早い。なので倒せたら即座にトドメを刺さないといけないのだが、カゼジロウもナズナもトドメを刺せていない。
「早く走ってください!早く!お姉様とお兄様を助けないと!!!」
「痛え痛え叩くな!!!というかてめぇ自分で走れよ!」
 そう言いつつカゼジロウは瞬足の指輪を発動してナズナが振り下ろされない程度の速度で走り出す。
「でもあの傷じゃ戦闘の加勢なんて出来ねえと思うぞ!オイラ殺せはしなかったが歩くのが限界なレベルくらいにはボコボコにしたもん!」
「だから!その傷が直ぐに治るのが吸血鬼なんですよ!もし私達が戦った二人が生きてて四体一なんて状況になってたら」
 ナズナは自分で言った言葉に物凄く怖くなって再度カゼジロウを強く叩く。
「痛え!叩くんじゃねえっての!!分かった分かった!速度上げればいいんだろっ!!!」
 まるで馬とジョッキーの様な姿の二人はそのまま城を進んでいく。余談だが、ナズナとカゼジロウは見つけることが出来なかったけれど、その部屋の隅には男の死体が一つ転がっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...