original ring

藤丸セブン

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4章 オリジナルリング

65話 目的

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 王都のとあるカフェの一角。楽しげな顔をしたウルと警戒心を露わにしたキョウカが向かいで座っている。
「で、お話ってのは何処まで聞いてもいい訳?」
「お話しなんだからそんな固くならなくてもいいよ。友達に聞く軽い質問でもいいし、いきなり本題に入ってもいい。あ、恋バナは大歓迎かな」
「そう、じゃあ質問させてもらう」
 恋バナがスルーされた事にウルは少し唇を尖らせて届いたビールを口にする。
「あんたは、なんで魔族に協力なんてした訳?」
「んー。なんて言うかさー、退屈だったんだよね」
「は?退屈?」
 ウルは生まれた頃から才能のある少女だった。やる事なす事全てが上手くいき、その度に周りはウルを褒め称える。そして、嫌悪の対象となる。
「冒険者になったのはスリルのある生活が出来ると思ったからなんだ。親からは猛反対されたけど、平凡な生活なんてしたくなかった」
 しかし、ウルの予想とは正反対にウルという女性は冒険者の才能もあった。魔獣など彼女の相手に全くならなかったのだ。
「でも、続けてればいつか楽しいことがあるだろうって、そんな感じで冒険者やってたらさ。いつの間にかギルドマスターなんかにさせられちゃった」
「・・・」
「ギルドマスターって冒険者以上につまんないんだ。滅多に討伐とかいけないし」
 人生に退屈していた。そんなある日に、ウルは誘われたのだ。
「急に翼の生えた男が家に来てさ、「お前には才能がある。どうだ?俺達と一緒にこのイカれた世界をぶっ壊さないか?」とか言われちゃったんだよね」
「で、それに乗ったと」
「暇してる時に遊びのお誘いが来たらよく考えずに即答しない?それと似たようなもんだよ」
 ウルは薄い苦笑いを浮かべながら届いたビールを飲み干す。するとカフェのマスターが直様ビールの追加を持ってくる。慣れた手つきから見てウルはここの常連なのだろう。
「じゃあ次。残り二つのオリジナルリングの持ち主は誰?何処にいるの?」
「アッハッハ!直球!キョウカちゃんってストレートしか投げれないの!?」
 キョウカの真っ直ぐすぎる質問にウルは腹を抱えながら机を叩き笑う。少しムカつくが今は我慢だ。
「ひー面白っ!その質問の答え、何となく分かってるんじゃない?」
「多分傀儡の指輪の持ち主は王都にいる。けどもう一つ、障壁の指輪は分からない」
 第六のオリジナルリング、障壁の指輪。使用者が求める場所に破壊はほぼ不可能な障壁を張る指輪。一見それ程恐ろしい指輪には思えないが、怖いのは求める場所に障壁を貼るということ。その求める場所が頭と胴体の間、などなら人など一瞬で障壁に切り裂かれてしまう。
「ふふっ、ねえキョウカちゃん。オリジナルリングを奪った魔族は何人だったか知ってる?」
「魔族の数?」
 当時キョウカは村にはいなかったので魔族の数は見ていない。しかし、村の様子や外付けの情報でなんとなくは分かる。
「多分、二人」
「じゃあ残ってるオリジナルリングの数は?」
「二つ!?」
 答えは出た。残り二つのオリジナルリングの持ち主はアリシスの集落を襲った二人の魔族。そして、魔族の一人がここにいる可能性が極めて高い今、もう一人の魔族もここ、王都に潜伏している可能性が大だ。
「こうしちゃいられない。早くライヤ達に」
「待ったキョウカちゃん」
 席を立ちライヤ達にそのことを伝えようとするキョウカはウルの声に動きを止める。その言葉には動いたら殺す、と言わんばかりの圧力があった。
「まだ私がキョウカちゃんに質問してないでしょ?」
「・・・早くしてよ」
 キョウカは諦めて席に座り直す。確かにこちらばかりが情報を受け取るのも不公平だと敵相手に考えてしまったのだ。
「私の質問は一つだよ」
 ウルはビールを飲み干して真剣な瞳でキョウカを見る。
「キョウカちゃんは、人の為に死ねる?」
 ウルの予想外の質問にキョウカは少し動揺する。
「人は愚かだ。人はすぐ怒るし、嫉妬深いし、欲張りだし、怠け者だし、魔獣を食べたりするし、エロいことしか考えてないし、何より」
「自分勝手だ」
 ウルの言葉に強い気迫を感じる。今までおちゃらけていたのが嘘のようにその言葉には強いウルの感情が見て取れる。これは、ウルの人生の経験からくる言葉なのだろう。
「七つの大罪とはよく言ったもんだよね。本当に人の汚い部分を的確に示している」
 ウルの言葉にキョウカは言葉を失ってしまう。これほど強い感情を持った質問に、返せるような答えをキョウカは持っていない。
「おっと、ちょっと脱線しちゃった。さて、じゃあ答えを聞かせてもらおうかな」
 人の為に死ねるか。そんなものは簡単に答えられれるものではない。その人、という単語がどの人を指しているのかにもよるし、死ぬ時の状況にもよる。全てが曖昧で、実に恐ろしい質問だ。ならば。
「私は、<人>とかいう存在の為には死ねない」
 キョウカなりの答えを、ぶつけるしかない。
「人ってのが汚いのは私にもよく分かる。すぐ怒る奴もいるし、エロいこと考えてる奴もいる。自分が可愛いの分かってて上目遣いでお願いしてくる子もいるし、何処までも自己中な奴もいる」
「・・・」
「けど!私はあいつらが好きだ!友達の為に命を懸けられるカゼジロウも、それなりに気に入ってるし、ちょっとエロいかも知れないけど頼りになるし優しいフィンも嫌いじゃない。ちょっとズルいナズナちゃんも本当の妹みたいに可愛いと思うし、どこまでも自分の事ばかりで、でも!誰よりも他人の事を考えてるライヤが好きだ!」
 キョウカの答えをウルは黙って聞く。この答えを聞く為だけに、ウルはキョウカに自分達が不利になる情報を渡したのだから。
「だから!私は<人>の為には死ねない!けど!<仲間>を助けられるなら!喜んで死んでやる!!!」
「・・・いい信念だ」
 キョウカの答えを聞いたウルは満足した様子で一言だけ発した。
「じゃ、私は行くから」
 キョウカは席を立ちまずは図書館へ向かう為歩き出し
「けど、詰みだ」
 キョウカの足が止まった。キョウカは自らの意志で足を止めたのではない。何故か突然足が動かなくなったのだ。
「はっ!あんた!?」
「ごめんね。私の役目は君を止める事。ルシフェル、魔族の目的の為にね」
 キョウカは足に力を込めて動こうとするが全く足が動く様子はない。
「私を止める事が目的って何よ!魔族は何をしようとしてる訳!?」
「いい答えを聞かせて貰ったし、答えちゃうかぁ」
 静かな雰囲気のウルは少し寂しそうな目をキラキラしたものに変えて楽しそうに話し始める。
「キョウカちゃんは聞いたことない?八つのオリジナルリングの全てが悪用されたらどうなるかを」
 昔、祖母からそんな言い伝えを聞いた気がする。確かオリジナルリングが全て悪用されると。
「原初の竜が人間の粛清に来る」
「人類に最初の魔法の指輪、雷鳴の指輪を与えた竜、カンナカムイを殺す。それがルシフェルの目的だよ」
「ウッソ、竜を殺す!?そんな事できる訳ないじゃん!」
 キョウカがウルに背中を見せたまま叫ぶ。そんな夢物語の為にオリジナルリングが盗まれ、多くの人が危険に晒されるというのか。
「精神、変化、欲望、生命、障壁、歪曲、傀儡。この七つは既に悪事に使用されている。唯一悪用されていないのは」
「ライヤの持ってる雷鳴の指輪!」
 ライヤが危ない。しかし、足が動かせない今のキョウカにその事を伝える手段はない。
「でもお生憎様!あの超ド級お人好しのあのライヤが悪事に手を染められるとは思えないけど!?」
「その為の傀儡の指輪じゃない」
「っ!」
 第八のオリジナルリング、傀儡の指輪。人を傀儡の様に扱えるあの指輪なら、確かに。
「刃物を持った一般人に殺されかかった時、ライヤ君はどうするのかな?私も、少し興味あるんだ」
「この、外道!!」
 恐らく、いや間違いなく、ライヤは一般人に危害を加えることは出来ない。故に、ここままではライヤが死んでしまう。
「いや!ライヤが死ねば雷鳴の指輪の適性者がいなくなる!だからそいつらはライヤを殺せないんじゃない!?」
「適性者ならいるよ。まあ、一発雷放ったら反動で死んじゃう様な小物の悪党だけど」
 キョウカの顔が青ざめる。このままでは、確実にライヤが殺される!
「くっそ!何やってんだよ私は!動け!動けっての!」
 自分の足を殴りつけ動く様に促すが、全く動く気配はない。
「頼む!お願いだから!」
 涙を流しながらキョウカは足を殴る。しかし変化はない。キョウカは己の無力さに絶望しながら
「「とーーーう!」」
 突然割れたカフェの二つの窓ガラスを眺めた。
「とーからんものは音にも聞け!」
「なんちゃらかんちゃら目にも見よ!」
「「我ら!泣く子も黙るファイアーシスターズ!!!」」
 カッコいいポーズを構えながら二人の少女は決まらない決め台詞を放った。
 
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