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4章 オリジナルリング
80話 ライヤ・アラタ
しおりを挟む「バ、かな。この、我が」
ライヤの稲妻とルシフェルの黒炎を合わせたライヤの拳の一撃を受けてルシフェルが地面に倒れ込む。意識はあるが、体が全く動かない。
「終わりだ。お前の夢は、ここまでだ」
「終わる、のか。我の野望が」
全身傷だらけのライヤが倒れたルシフェルを見下ろしながら言う。
「だけど、お前の夢は理想に近い」
「・・・何?」
ライヤがしゃがみ込みルシフェルの胸ぐらを掴む。
「俺は人間も、魔族も。獣人も妖精も!全ての種族が平等で平和に暮らせる世界を創りたい」
「・・・綺麗事を。そんなものは不可能だ」
「ああ。俺だけじゃな。だから、お前も俺に協力しろ」
ライヤの思いもよらない提案にルシフェルは目を丸くして言葉を失う。
「我に、手伝え、だと?」
「そうだ。人間の俺と、魔族のお前なら、必ず出来る」
ライヤの瞳には希望が宿っていた。綺麗事でも構わない。その綺麗事を実現してみせるという、強すぎる希望が。
「・・・分かった」
「本当か!?」
ライヤが敵に見せるにはあまりにも眩しすぎる笑顔を見せる。やはりルシフェルはこの男が苦手だと心底思う。
「お前が、この滅びに抗えたらな!」
だからこそ。ルシフェルは最後の足掻きをするのだ。人間全員は無理でも。ここにいる人間達は滅ぼせる様に。
「滅び?」
「お兄様!空を!!」
ルシフェルの言葉に疑問を感じながらナズナに言われた通りライヤは空を見る。
「なっ!!!」
その空には小さな点の様なものが見えた。が、それが何なのかは直ぐに分かってしまった。
「い、隕石?」
落ちてくる点の存在に気がつく。それは物凄いスピードでこちらへ近づいているのが分かった。
「何で隕石なんかが!?」
「お姉様!あの隕石に傀儡の糸が付いてます!」
ナズナの言葉通り隕石には大量の傀儡の糸が絡みつけられており、ルシフェルが操っているのが分かった。
「よく見えるなぁ。ってか幾らオリジナルリングと言えど宇宙まで届く!?馬鹿すぎるでしょぉぉぉ!!」
キョウカの奇声が王都に響くが隕石は止まらない。
「やべぇぞ。あんなでけえ隕石が落ちたら俺らだけじゃなくこの王都全体が吹き飛ぶぞ」
「んな事は分かってる!フィン!お前何とか出来ねえのか!?」
「無茶言うんじゃねえよ」
フィンに暴言を吐くマキにフィンは首を振る。幾ら空間を歪める歪曲の指輪と言えど隕石の周りを歪める事など不可能だ。もしフィンがライヤ程の適正を持っていれば、或いは何とかなったかも知れないが。
「俺が行く」
「ライヤ!?」
誰もが慌てる中、ライヤが一人で立ち上がる。
「無茶ですよ!幾らお兄様でも!」
「そうだよ!ただでさえ死にそうな体してる癖にあんな隕石を破壊する威力なんて雷鳴の指輪にはっ」
キョウカが言葉に詰まって言いたいことを途中で止める。ライヤの言いたい言葉が分かってしまったから。
「俺の命を使う。オリジナルリングってのは、使用者の生命力をオリジナルリングに捧げればその分の力が出せるんだよな?」
「それはっ」
「その通り。オリジナルリングに寿命を捧げることでオリジナルリングは使用者を人間から化け物へと変える」
ライヤの問いかけにキョウカは答えず、代わりにルシフェルが答える。その言葉にライヤは目つきを鋭くした。
「生命力って、フィン!良いのか!あんなでけえもん壊す為に捧げる生命力って」
「ああ。多分ライヤの一生分。もし運良く寿命が残っても、三年生きられねえだろうな」
「そんな!私は反対です!お兄様が死んじゃうなんて絶対嫌です!!」
ナズナがライヤの腕を掴んで泣き叫ぶ。そのナズナを優しく見つめてライヤは頭を撫でる。まるで最後の様に優しく、慈愛を込めて。
「俺以外には止められない。もしここで俺が何もしなかったからここにいる人間はみんな死ぬ。でも俺が動けば、犠牲者はゼロに出来るかも知れない」
「犠牲者、ゼロ?」
その言葉にキョウカは怒りを露わにしてライヤに平手打ちをする。
「お姉様!」
「犠牲者ゼロ、だと?あんたが死ぬだろ!!?私達が助かってもあんたが死ぬんだよ!!」
「・・・俺は」
「あんたも人間だ!あんたも私達と同じだろうが!!お願いだから。自分の事も守るべき人に加えてよ」
大粒の涙を流すキョウカにライヤは手を伸ばそうとするが、途中で手を戻す。
「ごめん、でも。方法はこれしかねえ」
こうしている間にも隕石は明確な姿が見えるまでこちらに接近してきている。衝突まで残された時間は少ない。
「大丈夫、必ず戻る」
腕を掴んで離そうとしないナズナを優しく撫でて腕を離して貰い、地面に蹲って涙を溢すキョウカの頭にそっと手を乗せる。
「駆けろっっ!!」
動くたびに全身を走る激痛に耐えながらライヤは雷を纏って空へ飛び、隕石に真っ向からぶつかった。
「ライヤ!」
「お兄様!」
隕石に真っ向からぶつかったライヤだが、当然その程度では隕石はびくともしない。ライヤの持てる全ての雷を隕石にぶつけるが、変化はない。
「無駄だ。人間一人の力で隕石が止まるものか」
隕石の落下はライヤの抵抗により速度が下がってはいるが、止まる気配はない。
「頼む、雷鳴の指輪!!!」
ライヤから放たれる電撃の威力が急激に上がる。ライヤが生命力を燃料にし始めたのだ。
「おい!糸が!」
「いや。ここまで落ちて来てたら糸なんて関係ねぇよ」
マキが指差す方向には隕石を覆う様に絡まっていた大量の傀儡の糸が焼き切れた姿で宙を舞っている。これで隕石を地面へと降ろそうとする力は軽減されたが、その程度で隕石は止まらない。
「駄目だ。ライヤ君の電撃じゃ隕石は止められない」
「そんな!お兄様っ」
ウルの呟きにナズナが祈る様に腕を重ねる。
「ぐっ!とめら、れ。ねぇーのならっ!!!」
ライヤは更に生命力を燃料に電撃を強める。隕石を止められないのなら、破壊する!
「無駄だ。諦めろ、ライヤ・アラタ!」
「うるせえ黙ってろ!ライヤ!男魅せろよぉ!!」
ルシフェルの声は届かない。だが、マキの声もライヤには届いていない。その理由は人間には耐えられない電撃に、ライヤの鼓膜はとっくに破壊されているから。
「うおおおおおおおお!!」
「おい、あれヒビ入ったんじゃねえか?」
消え入りそうなカゼジロウの声にキョウカは隕石に注目する。
「はい!ヒビ入ってます!小さいですけど、入ってます!!」
キョウカには小さすぎて見えないが、どうやら隕石に小さなヒビが入っている様だ。ライヤはそのヒビの中に高圧な電撃を流し続けている。
「ライヤ・アラタ。貴様、本当に何者なのだ!?」
ヒビは少しずつ、だが確実に広がっていく。
「ライヤ!」
「ライヤァ!」
「ライヤ君」
「お兄様!」
「ッ!ライヤ!!!」
フィン、カゼジロウ、ウル、ナズナ、キョウカの声が響く。
「「「「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」
「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ライヤの稲妻が隕石を包み、巨大な隕石を見事破壊した。
「・・・よっしゃ」
隕石はかなり小さくなってバラバラに地面へと落ちていく。ライヤも同じく自由落下をしながら、仲間たちの待つ地上へ落下。
「変化!」
ナズナの作ったクッションに落ちたライヤは。目から光が消え、腕や足は十七歳とは思えない程弱々しくなっていた。
「ライヤ!あんた凄いよ!やり切ったんだよ!!」
「お兄様!お兄様お兄様!」
「やるじゃねえのっ!」
「流石オイラのダチだぜ!」
「あ、、、、ああ」
皆の声に応えてライヤは声を振り絞り手をあげる。とてもゆっくり、数センチだけ。
「っっ。ライヤ」
「フィン、さん」
「ん?」
ライヤが小さな声でフィンを呼ぶとフィンはその言葉を聞く為耳を近づける。
「一緒に冒険してくれて、ありがとうございました。本当にお世話になりました」
「そんな事いいよ。あんま喋らない方が」
「カゼジロウ」
フィンの言葉を無視して、否。フィンの言葉は聞こえずにライヤはカゼジロウの名を呼ぶ。
「・・・おう」
「ダチになって間もない俺を、助ける為に命かけてくれて、ありがとう」
「・・・当たり前だろ。ダチを助けるのは当然だ」
カゼジロウが弱々しいライヤの手を掴む。
「ナズナ」
「は、い」
溢れる涙がライヤの顔に落ちる。が、ライヤは気にせず話し続ける。感覚がないから。
「俺を、兄と呼んでくれて、ありがとう。嬉しかったよ」
「お、にぃ、さまっ!」
ライヤの胸にナズナは顔を埋める。
「キョウカ」
「・・・」
ライヤの問いかけにキョウカは無言を貫く。
「ほら、キョウカちゃん」
「こっち来ねえのか女?」
フィンとカゼジロウに呼ばれても、キョウカは何も言わない。
「楽しかった。一緒に、戦えて、飯食って、笑い合えて。冒険出来て、楽しかった」
「・・・ライヤ」
「俺を、冒険に連れて来てくれて、ありがとう。俺は、最高に幸せだったよ」
ライヤは、ほんの一粒だけ涙を流して、目を閉じた。
「・・・・・バカライヤ」
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