魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり

文字の大きさ
102 / 126

102話 魔神の軍勢 その2

しおりを挟む
「で? これがアウグス帝国の絶対防衛線……近代兵器のオンパレードってやつか?」

「そうらしい」


 デイトナの宮殿近くでは、ランファーリとグウェインの二人が話をしていた。急遽、レクス総督によって造られた兵器群についての感想を述べているのだ。


「こんな兵器、戦力数値10万を超える連中に通用するのかよ?」

「無理だろうな……気休め程度ですら怪しい……」

「やっぱりか……」

 レドンド、レジナ、ゴーラといった規格外の魔物の数値をこの目で見たグウェインは、どこか成長したような顔つきになっていた。いや、謙虚な気持ちを強く持てるようになったと言えるのかもしれない。


 ハズキに一泡吹かされたレクス総督はすぐに大佐以下に命じ、デイトナの警備を強化したのだ。流石は腐っても一国の軍事のトップを担う者であると言えるだろうか。その行動力の早さは見事であった。


 しかし、全く足りていない……それが、唯一敵の戦力数値を見たグウェインの感想であり、ランファーリの直感でもあるのであった。グウェインは内心では非常に焦っている……現在、魔神の軍勢に攻め込まれでもしたら、ひとたまりもないのではないかと。


 特に、敵の一人を捕らえた現状では、攻め込まれる可能性は高いのだ。ライラック老師よりもはるかに強いアルノートゥンのメンバーが事実上、参加できない状況は非常に不味いと言えた。

 デュランは重傷を負い、シャルムはハズキの呪縛を担っているのだから。



「ところで、ランファーリと言ったかな? 君は竜族を呼べると聞いているが……」

「うん、まあそうだけど」


 グウェインからの質問だが、ランファーリは興味なさそうに答えていた。敵戦力を考えた場合、ブルードラゴンですら足止め程度が精一杯と考えるのが妥当だ。


「それを呼べるのは1体だけなのか?」

「当たり前だろ? どこの世界に竜族を複数体呼べる怪物が居るんだよ」


 評議会序列1位にして、歴代でも最強と謳われるランファーリ。そんな彼女の言葉であるからこそ、真なる竜族の召喚がいかに難しいかを理解させることが出来ると言える。レドンドの召喚を意図せず行った智司がいかに異次元かは、この時点でも察することが出来た。

 もちろん、召喚能力だけで力が決まるわけではないが……。


「ただし……裏の私の場合はわからねぇけどな……」

「……?」


 ランファーリはこの時、とてつもなく重要な事柄を述べたのだが、グウェインには理解することが出来なかった。だが、彼女はそれ以上、語ろうとはしない。



-----------------------------



「て、敵襲にございます!! デイトナ近郊の警備兵より伝令!」


 宮殿の入り口付近に居たランファーリとグウェインの前に、アルビオン王国の偵察兵が現れる。息も絶え絶えになっている雰囲気であり、事の重大さが嫌でも理解できる状況だった。


「警備兵からの報告では、以前現れたシルバードラゴンとその背中には二人の人間のような者が乗っているとのことです!」

「人間……? まあ、おそらくは怪物なんだろうが、魔神の軍勢か」

「仮面の道化師が捕まったことで、逆鱗に触れたのかな? はははは、デイトナは今日で滅び去るかもね……」


 踏んではいけない尾を踏んでしまった……グウェインは心底、アルノートゥンの二人が起こした事象を恨んでいた。あれがなければ、こんな事態は起こっていなかったかもしれないからだ。しかし、それは結果論でしかない。元々、魔神の軍勢を敵に回してはいたのだから……。



「まあ、そう悲観するなっての……ライラック老師とか各国の精鋭陣だって居るんだから……うっ!!」

「……? ランファーリ……?」


 その瞬間、ランファーリの雰囲気が明らかに変わっていた。目つきはより鋭いものへと変わり、口元に笑みが零れている。


「それに……ワタシが居るんだからな。くふふふふふ………」

「な、何者なんだ、君は……?」


 微妙に口調が変わっているランファーリ……自信家の「裏」の彼女が現れていたのだ。グウェインは明らかに戦闘能力が増している彼女に恐怖すら覚え、コンバットサーチを使うことを忘れていた。その数値自体は不明だが、元々の彼女の8万を超えていることは間違いないだろう。


「魔神の軍勢……ワタシも全力で能力を振るうとするよ、くふふふふふっ!」


 そう言いながら、ランファーリは指を大きく打ち鳴らした。その後に現れる影の存在は、グウェインを驚愕させるには十分すぎるものであった。


「こ、こんなことが……!」


 現れたのは、各種色とりどりのドラゴン族達……。双頭とされる金銀の竜族以外の全てがそこに集結していたのだった。戦争が始まりを告げる……。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...