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102話 魔神の軍勢 その2
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「で? これがアウグス帝国の絶対防衛線……近代兵器のオンパレードってやつか?」
「そうらしい」
デイトナの宮殿近くでは、ランファーリとグウェインの二人が話をしていた。急遽、レクス総督によって造られた兵器群についての感想を述べているのだ。
「こんな兵器、戦力数値10万を超える連中に通用するのかよ?」
「無理だろうな……気休め程度ですら怪しい……」
「やっぱりか……」
レドンド、レジナ、ゴーラといった規格外の魔物の数値をこの目で見たグウェインは、どこか成長したような顔つきになっていた。いや、謙虚な気持ちを強く持てるようになったと言えるのかもしれない。
ハズキに一泡吹かされたレクス総督はすぐに大佐以下に命じ、デイトナの警備を強化したのだ。流石は腐っても一国の軍事のトップを担う者であると言えるだろうか。その行動力の早さは見事であった。
しかし、全く足りていない……それが、唯一敵の戦力数値を見たグウェインの感想であり、ランファーリの直感でもあるのであった。グウェインは内心では非常に焦っている……現在、魔神の軍勢に攻め込まれでもしたら、ひとたまりもないのではないかと。
特に、敵の一人を捕らえた現状では、攻め込まれる可能性は高いのだ。ライラック老師よりもはるかに強いアルノートゥンのメンバーが事実上、参加できない状況は非常に不味いと言えた。
デュランは重傷を負い、シャルムはハズキの呪縛を担っているのだから。
「ところで、ランファーリと言ったかな? 君は竜族を呼べると聞いているが……」
「うん、まあそうだけど」
グウェインからの質問だが、ランファーリは興味なさそうに答えていた。敵戦力を考えた場合、ブルードラゴンですら足止め程度が精一杯と考えるのが妥当だ。
「それを呼べるのは1体だけなのか?」
「当たり前だろ? どこの世界に竜族を複数体呼べる怪物が居るんだよ」
評議会序列1位にして、歴代でも最強と謳われるランファーリ。そんな彼女の言葉であるからこそ、真なる竜族の召喚がいかに難しいかを理解させることが出来ると言える。レドンドの召喚を意図せず行った智司がいかに異次元かは、この時点でも察することが出来た。
もちろん、召喚能力だけで力が決まるわけではないが……。
「ただし……裏の私の場合はわからねぇけどな……」
「……?」
ランファーリはこの時、とてつもなく重要な事柄を述べたのだが、グウェインには理解することが出来なかった。だが、彼女はそれ以上、語ろうとはしない。
-----------------------------
「て、敵襲にございます!! デイトナ近郊の警備兵より伝令!」
宮殿の入り口付近に居たランファーリとグウェインの前に、アルビオン王国の偵察兵が現れる。息も絶え絶えになっている雰囲気であり、事の重大さが嫌でも理解できる状況だった。
「警備兵からの報告では、以前現れたシルバードラゴンとその背中には二人の人間のような者が乗っているとのことです!」
「人間……? まあ、おそらくは怪物なんだろうが、魔神の軍勢か」
「仮面の道化師が捕まったことで、逆鱗に触れたのかな? はははは、デイトナは今日で滅び去るかもね……」
踏んではいけない尾を踏んでしまった……グウェインは心底、アルノートゥンの二人が起こした事象を恨んでいた。あれがなければ、こんな事態は起こっていなかったかもしれないからだ。しかし、それは結果論でしかない。元々、魔神の軍勢を敵に回してはいたのだから……。
「まあ、そう悲観するなっての……ライラック老師とか各国の精鋭陣だって居るんだから……うっ!!」
「……? ランファーリ……?」
その瞬間、ランファーリの雰囲気が明らかに変わっていた。目つきはより鋭いものへと変わり、口元に笑みが零れている。
「それに……ワタシが居るんだからな。くふふふふふ………」
「な、何者なんだ、君は……?」
微妙に口調が変わっているランファーリ……自信家の「裏」の彼女が現れていたのだ。グウェインは明らかに戦闘能力が増している彼女に恐怖すら覚え、コンバットサーチを使うことを忘れていた。その数値自体は不明だが、元々の彼女の8万を超えていることは間違いないだろう。
「魔神の軍勢……ワタシも全力で能力を振るうとするよ、くふふふふふっ!」
そう言いながら、ランファーリは指を大きく打ち鳴らした。その後に現れる影の存在は、グウェインを驚愕させるには十分すぎるものであった。
「こ、こんなことが……!」
現れたのは、各種色とりどりのドラゴン族達……。双頭とされる金銀の竜族以外の全てがそこに集結していたのだった。戦争が始まりを告げる……。
「そうらしい」
デイトナの宮殿近くでは、ランファーリとグウェインの二人が話をしていた。急遽、レクス総督によって造られた兵器群についての感想を述べているのだ。
「こんな兵器、戦力数値10万を超える連中に通用するのかよ?」
「無理だろうな……気休め程度ですら怪しい……」
「やっぱりか……」
レドンド、レジナ、ゴーラといった規格外の魔物の数値をこの目で見たグウェインは、どこか成長したような顔つきになっていた。いや、謙虚な気持ちを強く持てるようになったと言えるのかもしれない。
ハズキに一泡吹かされたレクス総督はすぐに大佐以下に命じ、デイトナの警備を強化したのだ。流石は腐っても一国の軍事のトップを担う者であると言えるだろうか。その行動力の早さは見事であった。
しかし、全く足りていない……それが、唯一敵の戦力数値を見たグウェインの感想であり、ランファーリの直感でもあるのであった。グウェインは内心では非常に焦っている……現在、魔神の軍勢に攻め込まれでもしたら、ひとたまりもないのではないかと。
特に、敵の一人を捕らえた現状では、攻め込まれる可能性は高いのだ。ライラック老師よりもはるかに強いアルノートゥンのメンバーが事実上、参加できない状況は非常に不味いと言えた。
デュランは重傷を負い、シャルムはハズキの呪縛を担っているのだから。
「ところで、ランファーリと言ったかな? 君は竜族を呼べると聞いているが……」
「うん、まあそうだけど」
グウェインからの質問だが、ランファーリは興味なさそうに答えていた。敵戦力を考えた場合、ブルードラゴンですら足止め程度が精一杯と考えるのが妥当だ。
「それを呼べるのは1体だけなのか?」
「当たり前だろ? どこの世界に竜族を複数体呼べる怪物が居るんだよ」
評議会序列1位にして、歴代でも最強と謳われるランファーリ。そんな彼女の言葉であるからこそ、真なる竜族の召喚がいかに難しいかを理解させることが出来ると言える。レドンドの召喚を意図せず行った智司がいかに異次元かは、この時点でも察することが出来た。
もちろん、召喚能力だけで力が決まるわけではないが……。
「ただし……裏の私の場合はわからねぇけどな……」
「……?」
ランファーリはこの時、とてつもなく重要な事柄を述べたのだが、グウェインには理解することが出来なかった。だが、彼女はそれ以上、語ろうとはしない。
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「て、敵襲にございます!! デイトナ近郊の警備兵より伝令!」
宮殿の入り口付近に居たランファーリとグウェインの前に、アルビオン王国の偵察兵が現れる。息も絶え絶えになっている雰囲気であり、事の重大さが嫌でも理解できる状況だった。
「警備兵からの報告では、以前現れたシルバードラゴンとその背中には二人の人間のような者が乗っているとのことです!」
「人間……? まあ、おそらくは怪物なんだろうが、魔神の軍勢か」
「仮面の道化師が捕まったことで、逆鱗に触れたのかな? はははは、デイトナは今日で滅び去るかもね……」
踏んではいけない尾を踏んでしまった……グウェインは心底、アルノートゥンの二人が起こした事象を恨んでいた。あれがなければ、こんな事態は起こっていなかったかもしれないからだ。しかし、それは結果論でしかない。元々、魔神の軍勢を敵に回してはいたのだから……。
「まあ、そう悲観するなっての……ライラック老師とか各国の精鋭陣だって居るんだから……うっ!!」
「……? ランファーリ……?」
その瞬間、ランファーリの雰囲気が明らかに変わっていた。目つきはより鋭いものへと変わり、口元に笑みが零れている。
「それに……ワタシが居るんだからな。くふふふふふ………」
「な、何者なんだ、君は……?」
微妙に口調が変わっているランファーリ……自信家の「裏」の彼女が現れていたのだ。グウェインは明らかに戦闘能力が増している彼女に恐怖すら覚え、コンバットサーチを使うことを忘れていた。その数値自体は不明だが、元々の彼女の8万を超えていることは間違いないだろう。
「魔神の軍勢……ワタシも全力で能力を振るうとするよ、くふふふふふっ!」
そう言いながら、ランファーリは指を大きく打ち鳴らした。その後に現れる影の存在は、グウェインを驚愕させるには十分すぎるものであった。
「こ、こんなことが……!」
現れたのは、各種色とりどりのドラゴン族達……。双頭とされる金銀の竜族以外の全てがそこに集結していたのだった。戦争が始まりを告げる……。
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