魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり

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114話 ランシール学園での攻防 その1

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「グルルルルルル……!!」


「いやぁ、怖いですわ、本当に……。そんな風に睨まれると、怖気づいてしましますわ……」


 ランシール学園の中央グラウンドに現れているレッドドラゴン、ブルードラゴン、グリーンドラゴンの3体の竜族。その3体はレドンド、エステラ、ミヤビと相対していた。


「誰がやるのだ?」

「ん~~、私はさっき模倣した空間制御魔法を試したいところだけど……身体に馴染むにはもう少しかかりそうだし、パスでいいわ」

「おい……気まぐれで決めるな、貴様……」


 任務には真面目なレドンドは、エステラの態度を叱責していた。エステラは智司から言わせれば、ちょっと適当な感じの気の良い同級生だ。レドンドはまた智司の趣味を垣間見た瞬間であった。15,6歳くらいの少年は色々と複雑なのである……。

「ほんなら、私が向かいますわ。レドンドも手伝ってくれます?」

「いいだろう」


 レッドドラゴンたちの相手をするのは、ミヤビとレドンドに決まった。ミヤビは専用の扇子を持ちながら、最初にドラゴン達に向かって行った。

「グルルルルルル……!」


 そんなミヤビに対応したのはレッドドラゴンだ。強烈な炎を彼女に向かって吹き出した。温度で言えば、軽く1000度を超える程の代物だ。通常の生物であれば、それだけで焼け焦げてしまうはずだが……。


「なかなか強いブレス攻撃ですが、私には効かないみたいですわ。もう少し、強い攻撃じゃないといけませんなぁ」

「グルルル……!!?」



 ミヤビはほとんどダメージを負っている気配はなく、怯んだレッドドラゴンに向かって、専用の扇子による乱撃をお見舞いする。

「グオオオオオ……!」

「おや……? まだ生きてはるんですね……なかなかやりますなぁ……」


 ミヤビの必殺の攻撃をまともに受けたレッドドラゴンではあるが、まだ絶命には至っていなかった。流石はソウルタワー800階層のボスだと言えるだろうか……。ミヤビ自身も、レッドドラゴンには一定の評価をしているようだった。


「グウウウウ……」

「でも、ダメージは相当に負ってはりますなぁ。この状態からの逆転は不可能ですよ? 大人しくしてれば、苦しまないように殺してあげますから……」


 無慈悲なミヤビによる言葉……知性のあるレッドドラゴンには理解出来ていたようだ。レッドドラゴンの動きが鈍り出した。抵抗をしても勝ち目がないと悟ったのか。その姿を見たミヤビは、レッドドラゴンに敬意を表し再び乱撃を展開、苦しむことのない死を与えたのだった……。



------------------------------



「ゴロロロロロ……!」

「フルルルルル……!」


 レドンドの前には二体のドラゴンの姿があった。グリーンドラゴンとブルードラゴンだ。どちらの相手も、レッドドラゴンよりは劣る個体ではあるが、列記としたドラゴン族である。


「ふん……私は種族としては、この者達を同じなわけか……」


 エステラは自らの背後で寛いでいる……生徒たちの監視はしているようだが、そんなものは彼女からすれば、片手間以外の何ものでもない。この2体の相手をするのは自分であることが、ひしひしと伝わってきたレドンドであった。


「私は魔神様より生み出されたドラゴン、レドンドだ……。貴様らよりも高位に位置する存在……試してようか」


 レドンドの言葉を理解しているのか、ブルードラゴン、グリーンドラゴン共に大きく奮い立っていた。周囲から見れば、ドラゴン族の力比べに見えているかもしれない状況だ。お互いブレス攻撃を行った為に猶更と言えるだろうか。


 とてつもない轟音が、ランシール学園のグラウンドに響き渡った……。技の威力というものは派手さだけでは決まらないというのは常識ではあるが、それを抜きにしても、エステラの空間制御魔法を上回るほどの衝撃がほとばしっていた……。

 グリーンドラゴンとブルードラゴン、そしてレドンドのブレス攻撃がぶつかり合った衝撃だ。

「ふむ……この程度か。なかなか強力な一撃であったが、私の敵にはならんな」

「グルルルルル……!?」

「フルル……!?」


 グリーンドラゴンとブルードラゴンのブレス攻撃を容易に弾き飛ばしたレドンドのブレス攻撃……。

 何時ぞやのサラに対して放った戯れの一撃とは明らかに違う全力の攻撃だったのだ。ドラゴン族の双頭の実力を見せつけた結果と言えるだろうか……この時点で、勝負は決していた。



 その後、グリーンドラゴンとブルードラゴンはレドンドに勝負を挑むも、多少の善戦の末、彼一体に敗れ去ってしまった。レドンドもそれなりのダメージは負ったが、みるみる内に回復していく……。


「以前に蹴散らした、天網評議会の者達よりは、遥かに強い……。これがドラゴン族か」


 伝説上の竜族にレドンドは敬意を表していた。自らもそれに該当しているはずだが、そんなことは忘れて……。


「お疲れ、レドンド。あんた、結構強いじゃん」

「エステラ……先輩に対する言葉の使い方がなっていないようだな」


 上から目線で話すエステラに苛立っている様子のレドンド。立場としては同格である為に、レドンドは対等であることを強調しているのだ。

「へえ、言うじゃない。なら、私と戦ってみる?」

「いいだろう……」


 エステラはわざとレドンドを挑発してみせる。レドンドはそれに気付きながらも、彼女との戦いを承諾していた。3体ものドラゴン族を倒した直後とは思えない光景だ。


「……あかんな、これは……格が違いすぎるで……」

「なんだってんだよ……! こんな戦力を持っていても、魔神の配下だってのか……!?」


 ナイゼル、デルト共に戦意を完全に喪失している。ドラゴン族を容易に倒せる化け物……それでも、魔神に従う配下であることが信じられないのだ。それぞれが単独で一国を滅ぼせる戦力のはずだが……。


 彼らだけでなく、サラを始め、全ての生徒たちは逆らうこと、逃げ出すことすら諦めた瞬間となっていた。魔神の軍勢に勝てる者など存在しない……そんな意識が強く生まれた瞬間であったが……。



 そんな時、ランシール学園のグラウンドに一人の男が現れた。包帯に身を包んだ身体……しかし、確かな闘気を纏っている人間だ。最強の冒険者の一角、デュラン・ウェンデッタが姿を現していた。



------------------------------



「ふん……あの女よりは劣る者達か。だが……とてつもない闘気が集まってやがる」

「むっ、この気配は……」


 デュラン・ウェンデッタの接近に真っ先に気付いたのはレドンドだった。レドンドの視線の先……人間としては、あまりに強大な闘気を有した者が歩いて来ている。エステラ、ミヤビもその気配に気付いた。

「これが魔神の軍勢か……シルバードラゴンと、よく分からん娘が二人か」


 デュランは即座に目の前に居る、3人の戦力分析に入る。彼はコンバットサーチを持っていない為に、数値化することは出来ないが、長年の冒険者の経験から強さを割り出しているのだ。

「そっちのシルバードラゴン……俺が倒したゴールドドラゴンよりも強いな……」


 デュランは腑に落ちないといった表情を見せていた。ゴールドドラゴンとシルバードラゴンは竜族の双頭であり、本来は互角くらいの強さのはず。しかし、彼が見ているレドンドは明らかにそれよりも上だった。

「魔神により召喚されたからか? まあいい……そっちの2体の娘は、さらに上か……」


 デュランは全身に包帯を巻きながらも、正確に3人の強さを分析していた。あり得ない程に強大な戦力がデイトナに集中している……デュランもそれは敏感に感じ取っている。


「怪我をしているようだが、それでも油断ならん相手だ」

「じゃあ、どうするの? みんなで仕留める?」

「それがいいかもしれませんなぁ……私一人で戦うには、少々厳しい相手かもしれませんし」


 ミヤビから見ても、デュランの力は認めるに値するものだった。満身創痍の様子は見受けられるが、それ以上に強大な闘気が彼の強さを物語っていると言えるだろう。


「シャルムが居らず、さらに万全状態ではないが……いいだろう、来いよ!」


 ハズキとの戦いで彼はさらに強くなった……。デュランはレドンド、エステラ、ミヤビの3体を前にしても、全く怯んでいる様子を見せてはいなかった。


「エステラは、生徒たちを監視しておけ。私とミヤビで仕留めるとしようか……」

「了解。負けないでよ、レドンド? 魔神様に示しがつかないんだし」

「分かっている……」


 レドンドは大きな咆哮と共に、デュランを見据えた。戦闘準備は万全といった状況だ。ミヤビも同じく戦闘態勢に入っている。


「この波動……確実にソウルタワー900階のゴールドドラゴンを超えるな。しかも、そんな連中が3体……ふははははは、これだから人生は面白い……!」


 デュランも二刀流を構え、臨戦態勢へと移行した。弱肉強食の戦いの第一陣と呼べるだろうか……そんな戦闘はランシール学園で繰り広げられることになった。
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