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123話 学園にて その3
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「南の大陸……新進気鋭の国家か……」
「みたいだね……どうする、智司? 私がもう少し詳細聞いてこようか?」
「いや……それくらいは自分でするからいいよ」
「そう? ならいいけど……」
智司の役に立てないと分かり、エステラはどこか寂しそうにしていた。トム教官の話しは終わり、Sランクの教室は自由行動になっていた。事実上、授業は行われていない為に、他の生徒も含め、本当に自由に行動できるのだ。エステラの入学についても、形式的な意味合いが強かった。
「エステ、はとりあえず、デルトの相手でもしてやって」
「あいつの?」
あからさまにエステラは嫌そうな顔をしていた。それでも、智司の頼みであれば従うところではあるが……問題の当人は呼ばなくても来たようだ。
「よう、智司。お前……そっちの女と知り合いなのか?」
智司……? この男は自分のことを名前で呼んでいただろうか? 軽く考えた智司だったが、どうでも良いのでスルーしてみる。智司は、デルトの質問に答えることにした。
「いや、彼女は今日転校してきたばかりだし。少し話していただけだよ」
「そうかよ……よし、エステ、だったか。俺と勝負しな、てめぇも智司と同じく、測定不能を叩き出したとか聞いたぞ?」
測定不能……そういえば、入学試験の時にそのような数値を出したことを智司は思い浮かべていた。それほど前の話でもないが、懐かしいとさえ思ってしまう。心配する必要すらないが、エステラがデルト程度に遅れを取るわけがない。
智司はそんなことを歯牙にも掛けてはいなかった。
「いいけど……」
「ほう、なかなか見どころがあるな。では、場所を変えて……」
「面倒くさいし、ここでいいでしょ? 勝負する価値すらないと思うけど」
「はあ? 言ってくれるじゃねぇか……俺がアルノートゥンに入る為に、どれだけ強くなったか……丁度いい、お前で確かめるとするか」
学内ランキング1位だったサラを凌いでの、新たな1位の誕生だ。そういう意味では智司、エステラ共に未知の領域と言えるのかもしれない。
「殺さないようにな」
「了解」
デルト・アインは戦闘態勢に入り、想像以上に強烈な闘気をエステラに浴びせる。エステラとしても嬉しい限りだ。デュラン・ウェンデッタのような強敵と戦えるかもしれないのだから。智司の配下たちは基本的には戦闘狂が多かったりするが、彼女もその内の一人だ。だが、一つだけ誤算があった……。
「デルト……この闘気は……」
「驚いたか? 負けを認めるのなら、今の内だぜ?」
アルノートゥンへ入る為の努力は並大抵のものではなかっただろう。表面上では偉そうに振舞っていても、デルトは陰ながらの努力を行える人物だったのだ。それが現状のランキング1位に繋がっている。
「ああ……期待しすぎだったわね……」
「な、なに……!?」
デルト・アインは、エステラが始末したリキッド・トータスよりもはるかに強くなっていたと言えるだろう。その戦力数値で言えば1万に到達していたかもしれない。伝説の魔獣であるケルベロスですら始末できそうな戦力だ。
通常の人間世界であれば、デルトの強さは恐ろしいものだったのだが……戦力数値10万を軽く越えるエステラにとっては、雑魚以外の何者でもなかった。
欠伸と共に放たれるエステラの攻撃……デルトは一撃の下に倒されたそうな。
------------------------------------------------------
その頃……南の大陸にて。
「相手側の出方はわかっているのかい?」
「はい、ネロ様。国王陛下の交渉は決裂した模様です……!」
「ふーん、そうか……新しい国家、警戒をする為に、僕が来ておいて正解だったね」
アルビオン王国、天網評議会序列2位のネロ……念の為の派遣となっていたが、敵国との交渉は話し合いで済む問題ではなかったようだ。
「既に、敵国の反撃の意志は明らかのようです……国王陛下からも、総攻撃の許可は出ております」
「そうか……そちらの方が楽しめるよ。最近は身体を動かしていなかったからね」
南の大陸に出現した新進気鋭の国家。その名はヴァンハイム王国……その軍勢は既に進軍を開始しているようだ。アルビオン王国との衝突は避けられないものとなっていた……。
「みたいだね……どうする、智司? 私がもう少し詳細聞いてこようか?」
「いや……それくらいは自分でするからいいよ」
「そう? ならいいけど……」
智司の役に立てないと分かり、エステラはどこか寂しそうにしていた。トム教官の話しは終わり、Sランクの教室は自由行動になっていた。事実上、授業は行われていない為に、他の生徒も含め、本当に自由に行動できるのだ。エステラの入学についても、形式的な意味合いが強かった。
「エステ、はとりあえず、デルトの相手でもしてやって」
「あいつの?」
あからさまにエステラは嫌そうな顔をしていた。それでも、智司の頼みであれば従うところではあるが……問題の当人は呼ばなくても来たようだ。
「よう、智司。お前……そっちの女と知り合いなのか?」
智司……? この男は自分のことを名前で呼んでいただろうか? 軽く考えた智司だったが、どうでも良いのでスルーしてみる。智司は、デルトの質問に答えることにした。
「いや、彼女は今日転校してきたばかりだし。少し話していただけだよ」
「そうかよ……よし、エステ、だったか。俺と勝負しな、てめぇも智司と同じく、測定不能を叩き出したとか聞いたぞ?」
測定不能……そういえば、入学試験の時にそのような数値を出したことを智司は思い浮かべていた。それほど前の話でもないが、懐かしいとさえ思ってしまう。心配する必要すらないが、エステラがデルト程度に遅れを取るわけがない。
智司はそんなことを歯牙にも掛けてはいなかった。
「いいけど……」
「ほう、なかなか見どころがあるな。では、場所を変えて……」
「面倒くさいし、ここでいいでしょ? 勝負する価値すらないと思うけど」
「はあ? 言ってくれるじゃねぇか……俺がアルノートゥンに入る為に、どれだけ強くなったか……丁度いい、お前で確かめるとするか」
学内ランキング1位だったサラを凌いでの、新たな1位の誕生だ。そういう意味では智司、エステラ共に未知の領域と言えるのかもしれない。
「殺さないようにな」
「了解」
デルト・アインは戦闘態勢に入り、想像以上に強烈な闘気をエステラに浴びせる。エステラとしても嬉しい限りだ。デュラン・ウェンデッタのような強敵と戦えるかもしれないのだから。智司の配下たちは基本的には戦闘狂が多かったりするが、彼女もその内の一人だ。だが、一つだけ誤算があった……。
「デルト……この闘気は……」
「驚いたか? 負けを認めるのなら、今の内だぜ?」
アルノートゥンへ入る為の努力は並大抵のものではなかっただろう。表面上では偉そうに振舞っていても、デルトは陰ながらの努力を行える人物だったのだ。それが現状のランキング1位に繋がっている。
「ああ……期待しすぎだったわね……」
「な、なに……!?」
デルト・アインは、エステラが始末したリキッド・トータスよりもはるかに強くなっていたと言えるだろう。その戦力数値で言えば1万に到達していたかもしれない。伝説の魔獣であるケルベロスですら始末できそうな戦力だ。
通常の人間世界であれば、デルトの強さは恐ろしいものだったのだが……戦力数値10万を軽く越えるエステラにとっては、雑魚以外の何者でもなかった。
欠伸と共に放たれるエステラの攻撃……デルトは一撃の下に倒されたそうな。
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その頃……南の大陸にて。
「相手側の出方はわかっているのかい?」
「はい、ネロ様。国王陛下の交渉は決裂した模様です……!」
「ふーん、そうか……新しい国家、警戒をする為に、僕が来ておいて正解だったね」
アルビオン王国、天網評議会序列2位のネロ……念の為の派遣となっていたが、敵国との交渉は話し合いで済む問題ではなかったようだ。
「既に、敵国の反撃の意志は明らかのようです……国王陛下からも、総攻撃の許可は出ております」
「そうか……そちらの方が楽しめるよ。最近は身体を動かしていなかったからね」
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